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燦々  作者: 狐猫
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37.監視と接触

 作戦を聞いて俺はパープルを後にした。シェリーは恐ろしい作戦を伝えてきたものだ。こんな作戦を一般人にやらせるなんておかしいが、俺たち自身の命がかかっている以上は多少の危ない橋は渡らざるを得ないか。

 

「とりあえず練り歩くか」

 

 この作戦が上手く終われば組織は壊滅的な痛手を負う。おそらくすぐの建て直しは不可能な程矢島組が徹底的に叩くのだろう。考えただけで恐ろしい。極道があそこまでブチギレてるなんてあの組織は何やらかしたんだか。

 

「眩しいな」

 

 燦々と光り輝くネオンはこの街を寝かせない。そのネオンは事件解明までたどり着いた我々を祝福するものなのか、果たしてそれとも嘲笑っているのか。この際どちらでもいい。命を懸けたデスゲームにほぼ勝ったのだから。危うく殺されるところだったのに、逆に相手をこの街から抹消させるところまで来た。どんなフィクションだこの事件は。

 

「今日も賑やかなことで」

 

 観光地化してる華舞伎町は傍から見たら楽しそうである。俺としてはこんな事件に巻き込まれたせいでいいイメージはもはや無い。昼までさえも来たいとはあんまり思わなくなってきてしまった。シェリー含め矢島組と協力するなんて普通の生活では有り得ないことなのだと強く思う。大体極道と手を組むなんて金輪際無いことであるし、極道と話をしたことある人でさえかなりの少数派になるはずだ。「極道と協力して海外のやばい組織を倒しました」なんてネットに書いたら信用されないに決まっている。

 

「これが現実なのが1番怖い」

 

 ため息混じりに俺は吐いた。武勇伝にするには壮大すぎる。話を盛って無くても盛ったようにさえ感じてしまう。お墓までこの話を持ってくというのも味気ない。俺はそんなことを考えながら練り歩く。華舞伎町一丁目から桜ビルの前を通ってメイン通りへ。そこまで歩くと電話が鳴った。

 

「はい。もしもし」

「あなためちゃくちゃ組織の者に見られてるわよ。素晴らしいわ」

「監視カメラに凄く映ってるということで…」

「その通りよ。組織に見つかるようにこの街を引っ掻き回した作戦自体は成功だったようね。このまま各拠点全部見つけれるわ」

 

 そのまま電話は切られた。こちらの話なんて全く聞かずに言うことだけ言って切る。これにはもう慣れた。それにしても周りには沢山組織の者がいるのが恐ろしい。あまり見渡したくない。だが、俺には行かないといけないところがある。この作戦を遂行するために。さっきの電話はそれを伝えるものだろう。仕方なくその場所へと向かった。世界料理屋TRIPへと。

 

「あぁ〜もう恐ろしい」

 

 完全に敵の本拠地となってしまったこの店に来なければならないとは恐ろしい以外何物でもない。しかも、あちらは俺たちがここを組織の拠点だと突き止めたことをまだ知らないはず。店に入れば静か〜に見守られることとなる。そんな状況で美味しく食べれる強者じゃないぞこちらは。

 

「仕方ねぇな」

 

 俺は満を持して閉店間際に入店。店員が一瞬俺を睨んだが、すぐに笑顔に戻って接客をした。その一瞬を見逃さなかった俺は警戒値を最大限に引き上げた。俺はまともに帰ることは出来ないはずだ。店員に案内された席に着いて適当に注文をした。世界料理屋なので各国の料理を少しずつ。こんなところで呑気に食べれないけど、まぁいいだろう。

 

「気まずい…」

 

 料理を待つまでの間はまるで死刑待ちの死刑囚。何をするでもなくただひたすら時間に身を任せる。注文をした回鍋肉は食べて味がするだろうか。毒が入ってないことを願うのが先かもしれないけど。気にしすぎなのか店の奥が多少ざわついている気がする。気の所為であって欲しい。俺に向けられる目線が明らかに殺意を思わせる。

 

「絶対食べない方がいいな」

 

 俺の存在に気がついている組織の奴ら。料理人が組織の要員であることがもう分かってるのだ。料理に何されてもおかしくない。これなら料理を運ばれきた瞬間に先制パンチをしかけてやる。他のお客さんには申し訳ないところではあるが、こちらは殺されるかどうかの狭間だ。悠長なこと言ってられない。閉店間際なこともあり、お客さんはほとんどいないのが幸い。どうせシェリーの事だ。護衛くらいどっかに付けてくれてるだろう。

 

「お待たせしました」

 

 やっと料理が来た。もうここまで来たのだから仕方がない。

「川崎康太…お前らの組織だろ。川崎康太利用した事件企てたの」

 

 店員は1度止まった。

 

「さぁ…何のことでしょう」

 

 とぼけるなら続ける。

 

「川崎康太がここへバイトの応募へ来た。あんたらは川崎の素朴で覚えられにくい顔が欲しかったため、川崎を警察に突き出して身分証を奪った。そのまま自分達の組織が運営する美容整形外科で川崎の顔を複製。違うか?」

 

 店員はじっとこちらを見る。まだ続けても良さそうか。

 

「警察官太田敦がこの事件を解決に動いた。しまいには川崎の複製を殺した。その報復として太田敦を殺害。周りの人間も排除すべく井出晴人への報復を試みたが失敗。他にも関わっている人がいるかどうか探している時この店へ西達志…俺が来た。その時の会話に川崎康太の話があった。そもそも名前は上がってたから、そのまま排除対象の上位に仲間入りってところか」

 

 さすがにここまで話をすると店員は何もしない訳もなく。やっと口を開いた。

 

「よく喋りますね」

 

 冷静な言葉運びは冷徹さを感じさせる。

 

「喋りにきたんだから」

「色々知っているようですね」

「調べてたからね。何しなくてもころされるかもしれなかったから、足掻いてただけ」

「立派なことで…それであなたは答え合わせをしに来たと…あなたアホですね。ここが我々組織の拠点だと分かってるんですか?」

 

 敵陣へ単独乗り込み。あちらもそんなこと想定外だろう。

 

「ここが本拠地なのか?」

「それはお教えできません」

「拠点ではあるんだね」

「そりゃもちろん」

 

 本拠地が他にあるとは考えてない。幾分か沈黙が流れる。回鍋肉の湯気だけが動いていた。そろそろか。これ以上話を進めたら俺は反感を買うだけで、即座に殺されてもおかしくない。先程の電話から時間が経っている。ありがたいことにほとんどお客さんは消えている。俺だけがこの店にいるならいくら暴れても問題ない。

 

「ちょっと電話を失礼」

「この状況で何を一体」

 

 俺は堂々と携帯電話を取り出した。作戦の前に貰った電話番号を押した。

 

「もしもしシェリー?」

「入っていいのね?」

「うん。よろしく」

 

 短い電話の内容で店員は困惑している。困った顔をしている店員など知らない。俺らの反撃開始だ。

 

「失礼するわよ」

 

 入り口のドアが思いっきり空いて、あの女の声が響き渡った。

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