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燦々  作者: 狐猫
37/40

36.断定と反撃

 井出さんはすぐに出た。

 

「達志君ちょうどよかった。今から会えないか?」

「奇遇ですね。私も話しておきたいことがあるんです。井出さんのお店に行ってもいいですか」

「あぁいいけど、確か達志君家から外出しちゃいけないんだよね。車出すからそれ乗って来てくれるかな」

「わかりました。住所をお伝えします」

 

 住所を伝えるととてつもない早さで迎えの車が来た。

 それに乗り込んで無事に井出さんのお店「パープル」へと到着した。

 前回同様事務所に井出さんはいた。

 

「やぁ達志君。来てくれてありがとう」

「井出さんも何かがわかったんですね」

「そういうこと。さて、お互いに座って情報を共有しようか」

 

 井出さんが何の情報を手に入れたのかわからない。

 互いに向き合って座ることで緊張感が伝わる。

 

「井出さん。じゃぁ俺からいいですか」

「お願い」

 

 順序だって説明をする。

 

「まず、タバコの事件についてですがやつらロシア人は最初の事件の組織と関わっています。タバコの事件解決以降俺へのヘイトが高まっています。シェリーもそう言っていました」

「それはなんとなく理解してるよ」

「次に奴らロシア人が組織の人間だとして、彼らは何者なのかについてです。奴らは昼間に仕事をしています」

「仕事??なんでそう言い切れる」

 

 俺は事件解決直後の電話の件を伝えていない。

 あの電話で得た情報をそのまま伝えた。

 

「夜回り先生も知っている存在なんだねその人」

「はい。表からは夜回り先生。裏からはあの男が子供たちを支えているんです」

「その男が昼間にロシア人は働いていると言ってきたのか。信ぴょう性はあるな」

 

 単に非通知の電話からの情報であれば井出さんも信用しなかっただろうが、夜回り先生が認知しているというだけで一気に信頼できる情報となった。

 

「それで、彼らの仕事ですが多分です。多分ですけど料理人です」

「料理人ね。理由を聞いても?」

「俺がビルでリンチされている時、奴ら一度も手を使ってないんです。そして、タバコを配っているにも関わらず奴ら誰もタバコを吸ってなかったんです」

「でも、それだけじゃ料理人って確定できないよね」

 

 そう。これだけでは料理人と結論付けるにはあまりにも浅はかである。

 手を怪我すると料理が出来なくなり、タバコを吸うと味がわからなくなる危険性がある。これだけ見ればそれっぽいが、断定するにはまだ足りない。

 そこで俺が気が付いた点が活かされる。

 

「井出さんの言う通りです。これだけでは証拠不足です」

「不足している部分を補える何かがあると」

「はい。俺は組織から何かされそうな時にシェリーから電話がかかってくることになってるんです。俺はそのタイミングを思い返しました。初めてシェリーから電話があった時に俺が何をしていたのか改めて遡りました」

「初めて組織に目をつけられたタイミングで行っていたことが、組織に繋がっていた何かだったということだね」

 

 井出さんは勘が良い。

 俺が言いたかったのはまさしくそういうことだ。

 あの時何をしていたか。

 

「あの時俺は井出さんに電話していました」

「川崎の求人先で俺がイライラしてた時だね」

「えぇその前に俺は結衣ちゃんととある場所に行っています」

「それはどこ?」

「世界料理屋のTRIPです」

 

 井出さんは何も言わない。

 構わず俺は話を続けた。

 

「世界料理屋という世界中の料理を扱う飲食店があるんです。俺はそこで結衣ちゃんと食事をしていました。そこで結衣ちゃんが川崎の話をしています。この食事前で組織に目をつけられるような派手なことは何もしてません」

「ロシア人と組織は繋がっている。ロシア人は昼間仕事をしておりその場所は世界料理屋TRIPだと。確かにつながるね」

「でも、もっと確定付ける何かがあればいいんですけども」

 

 かなり理にかなっている気はする。TRIPに関してはあくまでも仮説なのだ。

 これが思い込みだった場合は再びスタートに戻ってしまう。

 

「達志君。じゃぁ俺からも情報を共有しよう」

「え、あ、はい」

「川崎が行った求人の場所が判明した。やっぱり全然大人の店じゃなかったんだよ」

「等々見つけたんですね!」

「達志君にばかり頑張ってもらってたからね。これくらいは調べないと」

「じゃあどこだったんですか」

「世界料理屋TRIPだ」

「え?」

 

 聞き間違いだろうか。井出さんは絶対に言った「世界料理屋TRIP」と。

 俺と井出さんは全く別の観点から調査をしたのに同じ結論にたどり着いた。

 こんな偶然はあるはずがない。川崎は組織の経営しているTRIPへ求人を見て行った。そのまま奴らに目を付けられて一連の事件へと発展している。

 

「井出さん。TRIPが組織の拠点だとなると1つ確定することがあります」

「なんだい?」

「ロシア人だけだと思ってた組織は検討違いです。組織は多国籍であると思われます」

「そういうことになるのか。とんでもねえ奴を相手にしてたもんだ」

 

 正体が見えなくて怖かったが、まさか多国籍な組織だったとは。

 普段組織の奴らはあの店で働いている。普通に働いているならば日本で生活をするのも用意であるわけだ。

 2人で出した結論が同じなのだから、間違いはないと思う。だけど、念のためシェリーには連絡をしたい。

 したいのはやまやまだが、生憎電話番号を伝えられていない。

 

「75点よあなた達」

 

 ドアが開いたと思ったら聞いたことのある女性の声がした。

 高圧的な声と話を唐突に始める人には心当たりしかない。

 シェリーである。

 

「シェリーさんお久しぶりです」

「どうも西達志。そして、井出晴人」

「やぁシェリー。こんにちは」

 

 このタイミングでシェリーが来たのは願ったり叶ったりだ。

 普段全く姿を見せないシェリーが現れたということはシェリーも何か進展があったということだ。

 そうでもなければここに来ない。

 

「西達志。あなたのおかげで奴らの根城は特定出来たわよ」

「それってTRIPですよね?」

「TRIPもその1つよ。だが、奴らは根城を複数持っているわ。だからあなた達75点なの」

 

 TRIPは根城であるとシェリーも認めた。3人とも同じ場所を指している。

 

「他にはどういう」

「海外飲食店がほとんどね。他にもタバコ屋や美容整形外科なんてのもあったわ」

「それは全部外国人がスタッフとしているお店なんですか」

「その通りよ」

 

 奴らが料理人で昼働いているということは間違いではなかった。但し、全員が全員料理人ではなかった。整形外科やタバコ屋など各それぞれが上手く適性活かして雲隠れをしていやがったのか。そりゃ簡単に見つかるわけもない。

 

「で、なんで俺のおかげで場所が特定を…特段シェリーさん達に協力した記憶ないんですけど」

 

 シェリーから言われたことはこなしてきたが、根城の特定まで手伝った記憶は無い。

 

「あら、ずっと言っているじゃない。組織の目につくようにしなさいって」

「言われましたけど…それが何か」

「あなたの華舞伎町での行動は全て見ていたのよ」

 

 そんなことは分かっている。護衛までつけて監視していたのだから、それくらいでは何も驚かない。

 

「そりゃ護衛とかいたから何となくわかってましたが」

「違うわよ西達志」

「え?」

 

 違う?何がだろう。

 

「あなたが燦々広場の投稿でやった方法と似ているわ」

 

 燦々広場のハッシュタグ投稿はみんなに写真を投稿してもらって、俺や結衣ちゃんがそれを見ていた。似ているということであれば俺は写真で撮られていたということだろう。なんのカメラで…あ…俺は上を向いた瞬間になんのカメラなのか分かってしまった。

 

「防犯カメラ…だ」

「その通りよ西達志。我々はこの街に設置している防犯カメラ全て見ることが出来る。それで貴様の行動を全て監視してた」

 

 大体のことを察した。こいつら俺を最大限利用しやがった。

 

「俺が奴らの目につくと組織の人が俺を尾行したりする。その組織の人をあなた達が更に監視カメラで尾行してたんですね」

「その通りよ。犯人組織なんてそもそも分かってたのよ。やつらの拠点だけが分からなかった。その為にこんなことしたのよ。観光客と組織の奴らの区別がつかないからね」

 

 あんだけ散々組織の目につけと言われたのも納得。当初は俺に事件解決をさせるためのものだと思ったが、本当はシェリー達が根城を突き止めるための作戦だった。恐ろしいことをさせるものだ。こちらは一歩間違えたら死ぬような行動なのに、それをさも仕方がないかと言うように指示していた訳か。

 

「怖いことをさせますね」

「仕方ないのよ。今生きてるんだからいいでしょ」

 

 言われると思った。

 

「それにしても井出晴人。よく求人先を突き止めたわね」

「ああいう子供たちは自ずと風俗みたいな店に行くという先入観があったんだよ」

「それは貴様自身のことか?」

「そうだ。俺がそうだったから川崎も同じだと思った。警察の兄ちゃんには話をしたが、川崎と俺は似ていた」

 

 敦は井出さんの過去を聞いていた。事情聴取やその後の話し合いの中で聞いていたのだろう。自らを重ねたから求人先を大人の店に絞ってしまったということか。

 

「シェリー。あんたが組織の存在は分かってたのはなんでだ」

「簡単な話よ。太田敦がこの話を持ってきたの」

「警察の兄ちゃんは組織を特定したのかよ」

「正確に言うと違うわ。外国人の組織だということは予想していた。でも、組織の詳細や拠点までは分からなかった」

「なるほどね」

「これ以上の話は全て解決してからお話でもしましょう。反撃に出るわよあなた達の命がある内にね」

 

 敦は真相に辿りつけなかった。その真相を俺たちに託して亡くなった。その真相に俺は他の人の力を借りながらも辿り着いた。これは敦に自慢できる。とてつもないくらい嬉しい気持ちになった。

 

「シェリーさん反撃って何を」

「あなた達自信の命を守るために組織を潰すのよ」

「俺たちが!?」

「安心しなさい直接潰すのは我々矢島組よ。我々の島で好き勝手やってくれた恨みを全て晴らすの」

「怖っ…」

 

 日本の極道を敵に回した海外組織はここまで恨みを買われるとは思わなかっただろう。多分完全に組織は破壊される。

 

「作戦をやっと伝えられるわね。これが終わり次第太田敦について全てを話すわ。何しろこの作戦は太田敦が考えたものよ」

「敦…」

「では、作戦を伝える!」

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