23.再会と入手
昼と夜ではこうもこの街は違うとなると驚きを超えて呆れる。
夜はあれだけ物騒な街であるのに、昼になると途端観光地かのように穏やかさを垣間見せる。
夜になれば豹変するのだから、この穏やかさなんて偽物の顔みたいなものだ。
「昨日のところか」
2日連続も来れば何も迷わない。
約束の時間少し前に到着したが、彼女は既にその場にいた。
「早いんだね」
「ちゃんと来たんですね」
「というと?」
「ドタキャンするのかと」
「そんな事しないよ!」
「ふ〜ん。まぁいいですよ。行きましょうか」
「あ、う、うん」
素っ気ない態度であしらわれているけども、約束は果たさねばならない。
川崎康太についてできる範囲で伝えた。
彼女は驚いてはいたものの結構冷静であった。
受け止めているという印象かもしれない。話をしている内に夜回り先生の場所へと到着した。
「ここだよ」
俺は色々頭の中を整理しながら目の前の状況を疑った。目の前には扉がある。
ここは病室だ。
俺はこれと似た扉を1週間前くらいに見た気がする。井出晴人という人物と会っている時に。
いや、扉の作りは似ているというより同じと結論付けた方がもはや正しい。
夜回り先生のいる場所は、まさかの井出さんが入院している病院と同じ病院だったのだ。
「うわぁぁ」
「お兄さんどうしたの」
「いや、なんでもないよ」
この病院はシェリー達が護衛に当たっている病院。もちろん俺がこの病院に入ったことくらい監視の目には写ったはず。というよりも、シェリーは確実に夜回り先生がこの病院に入院してくることを知っていたはず。
俺がちゃんと行動したらここに来る。俺がそもそもちゃんと行動しているかの試練を与えられていたと捉えるべきか。
シェリーにはしてやられた。
「先生失礼します」
彼女はノックをした。
「はーい」
聞いたことのある声がそれに応えた。
俺らは入室をした。
「先生こんにちは」
「おぉ〜結衣じゃないか」
「元気そうですね」
「大したことないからね」
夜回り先生と彼女は会話をしている中、俺は居場所に戸惑う。彼女は名を「結衣」というのか。そういえば自己紹介していなかった。
「先生今日は連れの人がいるの」
彼女に手招きを受けて夜回り先生と再会を果たした。
「お久しぶりです。覚えてらっしゃるかは分かりませんが…」
「君は…」
「以前友達と川崎康太について聞きに行きました。西達志と申します」
「川崎康太について…あ!思い出しました!」
夜回り先生は思い出した事が嬉しいのか少々はしゃいでいるようにも見える。
何より覚えてもらっていたのはありがたい。説明が色々省ける。
「あの時の君がね。お連れの友達は?」
そりゃ聞かれるはずだ。
隠す気も無ければ事実なので言い逃れができない。
「亡くなりました」
「な!?」
夜回り先生は天を仰いだ。
「まだ若かったろう」
「あいつは警察官でした」
「そうですか…いやぁ…すまない事を聞いたね」
「いえ、逃れようのないことなので」
沈黙が流れた。
必死に何か話そうとするが話題が浮かばない。
「それはそうとして、私に何か?」
そういえばシェリーに言われるがまま来ただけで、用は決めていなかった。
用もなく来たのはあまりにも不自然過ぎる。焦る俺は頭から捻り出てきた言葉を校閲無く口から吐き出した。
「友達は川崎の事件を調べてて亡くなりました」
「ほぉ」
「川崎はある組織によって良いように使われているんです。あいつはそれをどうにかしようとした。亡くなったあいつの遺言は事件の解決なんです。何か知っていることはありませんか」
文章として拙い部分は多かった。
それでも夜回り先生は全てを聞き取ってくれた。こんな急に来た男になにを話してくれるのだろうか。
俺は続けた。
「敦は…友達は川崎を救いたかったんだと思います」
夜回り先生は深い呼吸をして再び俺を見た。
「川崎の事件について詳しく聞いても?」
「もちろんです」
俺は夜回り先生にも事件について語った。
相槌は打つけども、言葉を挟んだりすること無くじっくりと話を聞いている。
敦の死、川崎が巻き込まれた事件、謎の組織について。それぞれ話をした。
「川崎がそんなことに…」
「敦からの遺言でこの事件を解決してます」
「お1人で?」
シェリーについて口にすることは良くないだろう。
「いえ、あと1人協力してくれてる人がいます」
井出さんと2人でやっていることにすれば穏便に済む。
「なるほど。それで川崎について知っていることでしたよね」
「はい」
「ん〜事件に関わりそうなことは残念ながら何も…」
「そうですか…」
「何か分かったらご連絡しますよ。お電話番号をお渡しします。結衣教えてあげてやってくれ」
彼女が電話番号を教えてくるとはどういう事だ。夜回り先生は自分の電話番号を伝えてくるはずであろう。
「はい。こちらです」
「え、あ、どうも」
疑問に思いながらも番号を受け取った。
「私夜回り先生のところのスタッフなんです」
疑問に思ってることを感じ取られたのか彼女の方から言い出した。
「そうなの!?」
「はい」
これで納得。夜回り先生も笑っていた。
無事連絡先を手にして病室を後にした。次に向かうは別の病室だ。




