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燦々  作者: 狐猫
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21.世界料理と弱気の女の子

 警察である敦は何で極道と繋がっていたのか。

 何を知って何を指示したのか。

 明かされる日はくるのだろうか。

 それら全てが明るみに出たとき俺は生きているのだろうか。

 答えを知る時シェリーから聞かされるのか、はたまた天国で本人から聞かされるのか。

 不安を胸に帰路に着いた。


 それから1週間特に音沙汰なく平凡な日常を送っている。

 殺されるかもしれない身とは思えない。

 川崎のことを調べろと言われても何もしようがない。俺は正真正銘表の人間なのだから。


(プルルルルル)


 電話がなった。

 非通知設定だった。普段であればそんな電話に出る訳ないのだが、発信主が大方想像出来たので仕方なく電話に出た。


「はい。もしもし」

「西達志」


 俺の事をフルネームで呼ぶ女性の声。

 シェリーであろう。


「あ、シェリーさんこんにちは」

「おい貴様。何もしないではないか」


 やはりその事であったか。この際何をすればよいか聞いてみるのも悪くないかもしれない。


「俺はねシェリーさん。何をすればいいのか分からないんです」

「ほぅ。私に反抗してくるとはいい度胸だな」

「そんな喧嘩腰なんかじゃないですよ」

「なるほど…川崎を調査する方法が分からないということか」


 シェリーに問うたもののどんな無茶振りが帰ってくるから分からない。

 冷や汗をかいている。


「えぇそういうことです」

「中谷という奴がいたはずよ」

「中谷…」


 俺は一瞬分からなかった。

 中谷という割と普通の名字に何もピンと来なかったものの、次の一言で判明した。


「夜回り先生」

「あ!」


 中谷彰

 そう、華舞伎町で非行少年の面倒を見ている人。敦と一緒に川崎のことを調べてる時に1度お会いしている。


「分かったようだな」

「はい」

「では、これ以上のことを言うまでもない。会ってみろ。西達志期待しているぞ」

「え、ちょ、あ…」


 一方的に電話は切られてしまった。

 やることが決まれば即行動しないといけない。

 ちゃんと監視されていることも理解したし、このまま何もしなければ再び催促の電話がかかってくることは分かりきっている。

 プライベートが完全に筒抜けであることを恥ずかしいと思うべきか、命の安全が保証されていることを安堵するべきか。

 悩むところだ。


「敦…お前は何を考えていたんだ」


 俺は天井を見つめた。

 そこにはもちろん何も無い。


「さて、夜になったら…行くか」


 夜になればあの危険な街へと繰り出す。

 楽しくはない。


 夜

「寂しいものだ…」


 シェリーの半ば強引な命令によって俺は華舞伎町へと舞い降りた。

 燦々と光るネオンはこの街に夜を教えないとはまさにこのこと。よく敦が言っていた。

 今まではそれを楽しいとまで思ってたのに、今この場では恐ろしい。光が痛い。


「クソッ」


 俺は捨て台詞を吐きながら中心部へと歩みを進めた。

 寄ってくる客引きは鬱陶しい。

 俺は何度も現れる客引きから逃れに逃れる。

 だが、一風変わった客引きに耳を疑った。


「お兄さん世界料理どう?」

「は?」


 客引きとは普通「居酒屋」「キャバクラ」「その他大人の店」が一般的である。

 なのに、彼はそのどれにも当てはまらない。なんならあまり聞いたことがない言葉で客引きをしてきた。


「世界料理?」

「えぇ!そうですとも!うちでは世界中の料理が1店で味わえます」

「そういうことか」

「最近のここら辺は激戦区ですからね!」


 観光地化が進んだのか彼の発言通りここら辺の飲食店は増えた。

 この男の店も最近増えた内の1つだろうか。

 興味はあるが飯を食べてる暇なんてない。残念ながら退散させていただく。


「ちょっと忙しいんでまた今度でお願いしますね」

「えぇ〜お安くしま」

「すみませんね」


 俺は会話を強制遮断してゲーセン横の広場へと向かった。

 前回来た時と景色は変わらないはず。

 コンクリートの景色が早々変わるとは考えられない。この場所はここまで荒れていただろうか。


「なんでだこれは」


 前回は敦がいた。

 この要素1つでここまで感じ方が変わるのだろうか。


「中谷さんは…」


 この景色をもって中谷さんがいるとは導き出せる人なんていないし、いくら頭が良くない俺でもそんな安直な答えなんて出せない。


「クソっ」


 ここでしっぽを巻いてこの場から脱出したって不自然でもなんでもない。ただ、川崎について調べに来たという意味では不自然なのだ。

 何もせず逃げ帰るなんて敦は望まない。

 重荷を俺に押し付けてきたことはずっと文句言いたいが、天国からあいつが監視してるとなれば逃げることなど不可。

 俺の事を誰よりも知ってるから、変に弱気にもなれない。


「あの野郎…会えたら覚えとけよ」


 俺は禍々しいテリトリーに身をねじ込んだ。

 色々な子供達がいる。

 楽しそうだ。

 誰も嫌な顔を見せない。見る限りは屈託のない笑顔。

 それが真の笑顔なのかは俺にわかったことじゃないけど。


「さて、誰に声をかけようかな」


 俺の脳は足の震えを感知している。

 足を叩き怖さや緊張をごまかす。

 ここで声をかけたらもう戻れない。

 奴らに目をかけられるレールに乗る。


 深呼吸をして辺りをしっかりと見渡した。

 俺は声をかける人に視点を定め、イノシシのごとく一直線に目的へ足を動かす。


「なぁ。君」

「え?私?」


 俺が声をかけたのは少々気の弱そうな女の子。

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