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燦々  作者: 狐猫
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2.取り調べと素性

 とりあえず私達は任意同行をお願いした男と共に1度交番へ戻った。

 この男が何も犯罪に関係していないとはまだ言いきれないので、詳しく話を聞いてみることにした。

 よく見るとこの男は金髪にピアスで身長は170cm後半と言ったところか。鍛えているような体つきなのでホストかキャッチというのが私の見解だ。酔っていたとはいえ、もうここまで来るのに少しは酔いが覚めてもいい時間が経っている。突拍子もないことは言わないはずだ。ここで駄々をこねると1度牢に入って朝出直すことになってしまうからな。

 

「さてと、とりあえず身分証明書出してもらえる?お兄さんまだ帰せないからさ」

 

 私が事情聴取を務めているので、田村さん以外の先輩方は裏に掃けていった。

 

「これだ」

 

 素直に出てきた物をみるとそれは運転免許証。名前は井出晴人 28歳。住所は東京都内となっている。あれ、関西じゃないのか。

 

「君職業は何やってるの」

「言わないとだめっすか?」

「言って貰えると助かるかな」

「えぇどうしよう」

「一応さっきみたいなことあったから、お兄さん疑われてるんだよ。素直に言っておきな」

 

 これは本当の話だ。彼と揉めたということはこの男も同業者と疑われても違和感はないだろう。彼にその認識はなさそうではあるが、舐めた態度だけは勘弁して欲しいものだ。

 

「はぁ…ただの風俗店員すよ。キャッチっすよ風俗の」

 

 予想は当たったわけだが、ここから更に詳しく聞いていかねば

 

「なるほど、お店の名前は?」

「華舞伎町一丁目のパープルってとこ」

 

 よりによって危ない地域の一丁目か。それなら犯罪と関わっていてもおかしくないな。てか、関西弁どこいった。

 

「なんで彼と揉めたんだい」

「さっき言ったとおりで、あちら様が突っかかって来た。それが原因。ただ、今冷静になったら他愛もないことで喧嘩したなぁと反省はしてるんだけどね。結果危ない兄ちゃん達だったわけだからな」

 

 やはり酔いはとれてきているか。まともな情報処理能力はあるようで助かった。

 

「連れといっているが、そこを詳しく」

「男が1人、女も1人。それと彼」

 

 3人か。

 

「ちなみに言っておくが、2人の顔に特徴そんなになかったから覚えてねえぞ。酔ってからなぁ…それも理由かもしれないけどな」

 

 うーん。そこは覚えておいて欲しかったが、署に連れてかれた彼が話してくれるだろう。

 

「てことは、君は彼らとは面識はなかったんだね?」

「もちろん」

 

 これ以上のことを聞くのは難しいか。

 

「にしても、いつの間にか消えていったのは驚いたわ。彼のバッグまで持っててるのを考えると彼はこの先大変だな」

「この先大変になることはわかるんですね」

「この街で生きていくために裏の世界を少し知っとらんとやってられん。実際うちの店のやつが興味本位で裏の世界に首突っ込んだら消えたからな」

 

 この辺は書見の知識の私達より生々しい話が聞かされ、見ているんだろう。私達がいくら探しても出てこない犯罪の証拠が物語っているが、犯罪のスペシャリストが揃っているのは間違いない。治安が悪いだけでなく頭のキレる奴らが裏にいるからタチが悪い。

 私が井出と話してる間に田村さんが前科が無いか調べてみたらシロだった。つまり、前科は無い。指紋なども無いことから一切警察にお世話になったことも名前が出されたことも無いようだ。信頼はできるのかもしれない。

 

「そもそも君は何故その仕事を」

 

 余計なことかもしれないが、少しは気になる。一度も警察のお世話にならずに渡り歩いているし、話していて悪い人に見えないのだから。

 

「俺みたいなやつがまともに働けるほどこの世の中甘くない」

「父親が女作って消えてな、母親が1人で育ててたんだけど急に帰って来なくなったから、おかしいなって思ったら母も男作って消えていったよ。急に金必要になって何の勉強もしてこなかった俺ができる仕事で羽振りのいい職種なんてこんなもんだ」

 

 同情はしてはいけないのだが、可哀想だと思ってしまった。華舞伎町で働くやつらはろくな奴がいない。そんな世論も聞くが全てが全てそうでは無いというのは彼の話でわかる。来るべくして来たもの、来たくなかったが仕方の無いもの、何も考えず来たもの、多種多様だが彼は来たくなかったが仕方の無い人間だったのかもしれない。生きていくためにはこの世界に足を踏み入れるしか選択がなかった。そして恐らく彼もわかっているだろうが抜け出すのは至難の業。

 もし、人事部で風俗のキャッチをやっていた男が面接に来たらどう思う。「やばそう」と思うだろうし、採用する気にはならないはずだ。来るもの拒まず、去るもの出てけず。この言葉通りだろうこの街は。

 

「お兄さん関西弁じゃないんだね」

「これも生きていく術。キレるときは関西弁使うと怖く見えやすいっていうことだよ。若いヤツらにはよく使える。そうじゃないやつには舐められて終わるから使い道は難しいけどな」

 

 つまり、この人から見て彼は若くてこの街で長く住んでいるようには見えなかったという事だな。少年っぽかったから本当だろう。

 

「傷害罪も検討はしてたけど喧嘩でお互いに殴り合いどちらも訴える気もないし、あなたが麻薬持っている訳でもない。私達に抑えられた時もそこまで抵抗してないから公務執行妨害でもない。なので、あなたには帰っていただいて問題は無いですよ。なんかあった時のために必要書類には書いてもらいますけどね」

「了解っす」

 

 そういうと彼は素直に書き出した。これでこのいざこざは終わる…といいが。

 

 井出は黙々と記入しているのでもはや慣れているのではないか。

 

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