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燦々  作者: 狐猫
11/40

11.躍起で呆然

 

 到着すると隠れているように指示された。お店に入るとバレるので外でもちろん待機なのだが、待機中に疑問を投げかけてみた。

 

「田村さん、なんでこの店がマトリに協力を」

「1度指導されているからだろうな。私達は協力的であり悪いことはしませんと印象付けるのも理由の1つだな。詳しいことは知らない。」

「ほぅ。なるほど」

 

 彼ら経営陣としても警察官の目に止まったことは好ましいものでは無いのだろうか。

 あちらにはあちらの事情があるのだろう。そう結論付けとく。

 

 なかなか連絡が来ない。

 

 15分は待っている。

 

 20分待っている。

 

 25分は待っている。

 

 30分は待っている。

 

 35分、連絡が入った。

「突入するぞ」

 

 田村さんの一言で隠れていた警察官は一斉に突入していった。

 受付を通るとわかっていたのであろう従業員が

 

「5番室です」

 

 と震える声を発して教えている。

 ちなみに私も緊張している。

 5番室に着くとそこには先に入っていた警察官によってドアは空かれて中は見える状態となっていた。ここで少し冷静になった。ここは何の店か思い出したからだ。

 5番室。つまり、部屋である。何をするための。それは性的サービスを受けるために客と女2人で居るための部屋である。

 わかるであろうか。取り引きとはいえ相手は麻薬密売人としてバレてはいけないので一応それなりの格好をして店に勘づかれないように足掻いているのである。つまり。ほぼ裸、それはこのマトリにも言えることだ。仕事でないとこんな所に来ることはないので驚きは隠せない。

 マトリは現状説明をし始めた。

 

「これが出てきた」

 

 袋に入っている白い粉。典型的であり1番多い包装の仕方。麻薬検査キッドにかけて色が変われば麻薬確定。今回はコカインの疑いがあるらしく検査キッドの綿棒先が青に変わればこの女は逮捕される。

 

「騙したのね…」

 

 私の到着以降無言を貫き通していた女が口を開いたと思ったら現状を理解していて、ほとんど放心状態であったためほとんど息のようなか細い声で泣きながら一言漏らした。これは確信犯だろうな。

 それはそうなのだが、いくら何でも見た目が落ち込み過ぎではある。

 暴れる。しらばっくれる。黙認。肩を落とす。諦める。大体このパターンに当てはまることが多く、彼女はかなりマイノリティな態度を取っている。

 単純に特殊なパターンで私の思い込みが激しいだけなのかもしれない。だけれども、私の脳はその状態をやけに気にしていて、視覚をコントロールし視覚情報を大量に仕入れようとしている。脳に入る情報の内目から入る情報が1番多い。その目を操っているのだから、私も気にせざるを得ない。

 

「出ました、青です。コカインです」

「よし、車両へ連れていけ」

 

 女は婦警達に抱えられて車両へと連れていかれる。大号泣しているため手こずっているが、どうにか連行していく。

 ドアから出ていく。彼女はこの廊下が長ければいいのになと思っているだろう。社会的終わりへと向かう一方通行道路なのだから。

 去り際に何か聞こえた。

 

「…ちゃ…ん」

 

 聞き取ることは出来なかった。

 

 その場で他に証拠がないか調べるため、お店の許可を取らなければならない。私は受付のものに確認しに行こうとすると、見た事ある姿が登場してきた。井出晴人だ。やはりこの男には会うことになるのか、前回会った時は驚かされたからな。できればもう一度会って話は聞きたかった。好都合だ。仕事で来ているがタイミングを見て話をしたい。

 

「よう、警察の兄ちゃん。その部屋適当に調べていいぞ」

 

 わかっていたようだ。落ち着き過ぎていてこちらが焦る。

 

「井出さん。どうもありがとうございます。では、調べさせていただきます。」

 

 私は部屋に向かって

 

「捜索許可取れました」

 

 と言うと働きアリの如くテキパキと各々の職務に取り掛かった。すると、井出は私に手招きをしてきた。なんだろう。

 

「警察の兄ちゃん。やっぱり来たんだな。来ると思っていたけどね」

「そりゃ近い交番にいますからね」

「川崎康太有罪だったね」

 

 やはりこれのことか。流石に裁判の結果は公開される規則があるので、知っていて不思議では無い。

 

「そうですね。分かっていましたが」

「どうだ、あれから何か他にわかったか」

「いや、こちらとしては特に。井出さんは」

「取られた身分証明書は保険証と運転免許証。これくらいだ」

 

 それはまぁ驚きがない。期待していただけに腰が抜けるような解答でガッカリした。

 

「ガッカリしているようだが、これでも大事なことだろう」

「ま、まぁ」

 

 そういえばこちらとしても聞きたいことはある。

 

「なぜ、ここにマトリが」

「あぁこっちからな、お店の従業員が麻薬密売しているかもしれないって連絡入れたんだよ」

「お店から!?」

「そうだ。この店は1度警察に目を付けられてしまっているからな。そこに加えて麻薬関係しているとなると、お客さんからの信用が落ちてしまっているかもしれない。払拭するためには麻薬取締に協力するしかないのよ」

「信用ですか」

 

 華舞伎町でもそれは必要なのか。そうするとどうやらこの言葉は地雷であったらしい。

 

「なんだ、華舞伎町の風俗が信用という言葉を使ったことに疑問を抱いていそうだな」

「いや、そんなことは」

「いいか、俺たちみたいな世間のド底辺みたいな所で真っ当な仕事をしていないかもしれないけどな、需用があるから成り立っているわけよ。あんた達には必要ないかもしれんが、こんな店でも必要とする人はいるんだってこと。ここだって社会形成されてんだから当たり前だ。俺たちのお陰でもしかしたら性犯罪防いでるかもしれんのよ。偏見はやめといた方がいいぜ」

 

 性犯罪を防いでいるかの確証はないが、色々説得されてしまったな。

 

「すまない」

「別に説教するわけじゃないよ。華舞伎町担当するならそれくらい覚えていてほしいんだ」

「はい、覚えておきます」

 

 こういう店は基本的に偏見の眼差しが多いのだろう。それは私だけでなく世間的に。

 

「あの、彼女が麻薬売っているってなぜわかったのですか」

「彼女が担当する客の常連が日に日におかしくなれば気づくもんだよ。常習者は顔もおかしくなるし頻度も増える。彼女自身がこの店なら犯罪をしても問題ないと舐めてきていたのかな。それはこっちとしても許さない。どんな理由があろうとも」

 

 怖い…としか言えない。

 これ以上は話してる暇はなさそうだ。私は戻ることにした。

 戻ると騒がしく調査をしていた。騒がしい理由は新たにコカインが見つかったからであり、それ以上は何も見つからんだろう。この部屋を完全に売り場として活動している。言い逃れのできない証拠が見つかったので、彼女も有罪確定。川崎が今日有罪となったが、ここにも有罪の確定したものがいるということになるのだ。私の気持ちは複雑に絡み始めており、ここまで自分の周りに有罪判決を受けるものが現れるのは警察官として当たりなのかハズレなのか、どちらだとしても死神だろう。

 

「コカイン発見です」

「おぉ!部屋に隠しているとは気を抜いていたな。これで俺らの手柄はでかいぞ!」

 

 宝物を引いた少年のようにこの警察官は喜んでいる。気持ちは分からんでもない。

 

「よし、ほかも探せ!」

 

 躍起になり探していくが、更なる宝物は見つかることはなかった。1つでも見つかれば終わりでいいじゃないかと心の中で吐露した。

 この部屋にいっぱい人がいても邪魔そうなので警察車両に連れていかれた女の方へと向かった。

 それに井出が帯同してきた。

 

「彼女の元に行くんだろ」

「そうですよ」

「なんで彼女が麻薬売買をしたか聞いてるか」

「え、聞いてないですよ」

「恐らくだけど、彼女には病気の母がいるからそのお金の工面だろう」

 

 そんな家庭環境があるのか

 

「なんで知ってるんですか」

「ここに入る理由がそれだった。ここの歩合制では足りなくなったからそれで法を犯してまでも母親を助けたかった。さしずめそんなとこだろ」

 

 あぁ、さっき彼女が言っていたことは「母ちゃん」だったのか。聞きたくなっかた言葉。彼女は母親を助けたくてこの仕事を選択して更に踏み込んだ仕事をしてしまった。母親のためには仕方がなかった。私達に見つからなければ彼女は母親を助けたかもしれない。

 

「知ってて通報したんですか」

 

「…俺も最初は反対しようとした。だけどな、これよりも彼女が闇の世界に入っていけば、母親を助けれても会うことは出来ないかもしれない。真っ当な稼ぎ方で努力して欲しかった。そのためにも…」

「口で言えばよかったじゃないですか」

「言ったさ、3回もな。言った状態でやめてくれればこっちも目をつぶったよ。さっきも言った通りこれよりは俺達の店全体が汚されてしまう。それはタブーだ。1人を守ろうとしてお店自体の信用が崩れて従業員全員を路頭に迷わせると本末転倒だからな。そこからはオーナーの判断さ」

 

 井出達もやることはやって尚通報した。じゃあ彼女は逮捕されて正解か。そうなのか本当に。もっと逮捕されるべき人間はいるだろう。彼女がこの店を使わなかったら逮捕はされなかったかもしれない。井出が言っていたようにこれよりも深く組織などに突っ込めば戻れないかもしれない。ただ、それも全て仮定の話…なのか…

 なぜ逮捕されて不幸になる人間が私の周りに来るのだ。

 

「兄ちゃん考えすぎるな。あんたがやったことは社会的に正解なんだよ」

「わかっていますこれが仕事ですから」

 

 頭ではわかっているが頭では考えてしまうし、感情が邪魔をする。

 

「とりあえず彼女のとこへ行きましょう」

 行くと彼女は大号泣していた。そして何回も叫んでいた。「母ちゃんごめん」「母ちゃんごめん」

 

 と。やめてくれ、それ以上俺にこの言葉を刺さないでくれ。井出がそんな私をみて言葉をかけた

 

「兄ちゃん、あんたがやったことは合っている。彼女にこれ以上近づかない方がいい。自尊心が壊れてしまう。ちょっとあっち行こう」

 

 私は着いて言った。少し路地に入った。

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