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男が希少な異世界の未開地に転移したら都市伝説になった  作者: パンダプリン


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第95話 血に染まる泉

「み、みないでよ」


 エセルさんに抱きかかえられている小さな女の子。

 それは、アリシアと同じくらい幼くなったリティアだった。


「やっぱり、そっちもそうなってたか」


「ええ、本日のお祈りの後に急に」


 アリシアとは対照的に恥ずかしそうに、俺から顔を隠すリティア。

 そんなリティアを見て、アリシアもさすがに恥じらいを……


「アキトさま。わたしもリティアみたいに、だきかかえられたいです」


 覚えるはずがなかった。

 まあ、それで大人しくなるならいいか。


「わ~い。アキトさまだいすきです」


 しかし困った。

 すでにリティアのほうが解決していて、その方法を教えてくれるというのが、一番理想的だったのだけど。

 これは、思った以上に長期戦になってしまうのだろうか?


「えっと……その」


 もじもじとした様子で、俺になにかを伝えようとするリティア。

 なんかいつもと違うな。

 もしかして、こっちは精神まで幼くなっているんだろうか?

 一度アリシアを降ろしてから、リティアに目線を合わせてあげる。


「どうしたの? なにか言いたいことでもあるの?」


 なるべく怯えられないように、やさしく声をかけてあげると、リティアは顔を背けてしまった。

 この年齢のときのリティアは、人見知りをする子だったんだろうか。


「こ、こどもあつかいしないでよ……ちゃんとはなすから」


「そっか、いい子だね」


 頭をなでてあげると、リティアはゆっくりと口を開いた。


「せいれいのときみたいに、わたしたちのからだからまりょくをおいだせない?」


 なるほど……

 女神様の加護っていうから、信仰の力かと思ってたけど、魔力が悪さをしているのか。

 それなら、俺の唯一の得意分野だ。


 エセルさんが、リティアを俺に渡してきたので、つい抱きしめた。


「ありがとう。もしかしたら、リティアのおかげで解決するかもしれない」


「わ、わかったから! その、はずかしいから……」


「ずるいです! リティアばっかり!」


「お主は、邪念がありすぎるせいじゃと思うぞ」


 アリシアが抗議の声をあげるも、シルビアが俺の言いたいことを代弁してくれた。

 本当に助かる。シルビアの存在がありがたい。


「とにかく、試してみよう。リティア、俺に女神様の魔力を流してくれる?」


「えっと……てをつないでいいの?」


 ああ、そこからか。

 そういえば、リティアの前では魔力暴走の治療って、一度しかしてないもんな。

 俺は、ためらうようなリティアの手を握った。


「えい」


 すると、アリシアの手によって、つないで手を離された。


「アリシア?」


 なんだ。いたずらか? 本当に精神が幼くなってきているのか?


「だって、いまもとのからだになったら、アキトさまはいっしょにおんせんに入ってくれないじゃないですか!」


 どれだけ好きなんだ、温泉。

 だけど、このままじゃアリシアは納得してくれないようだ。

 しかたない。さっさと一緒に入ってしまって、元に戻そう。

 見た目的には、精霊よりも年下っぽいし、一緒に入っても大丈夫だろう。


「そういうわけだから、悪いけどちょっと温泉行ってくるね」


「ええっ!? わ、わたしも?」


「さすがアキトさま。だいすきです!」


 何に対してのさすがなのかは知らないけど、満足そうだからそっとしておこう。


「無理しないでいいよ。とりあえず、アリシアと一緒に入ってくるから、ちょっと待っててくれる?」


「む、むりなんてしてないわよ! わたしだって、おんせんくらいいっしょに入れるし!」


 なんか、変な風に意地をはってしまった。

 だが、面倒なので、俺はアリシアとリティアを連れて温泉に入ることにした。


    ◇


「はわわわ……」


「うう……」


 あれだけ騒がしかったのに、いざ湯に浸かると二人とも黙ってしまった。

 だけど、これはこれでいい。

 静かに入浴を楽しめるし、ここでも騒がれたらどうしようかと思っていたのだ。


「こ、これが……おとこのひとの……あっ」


「すごい……はじめてみた……あっ」


「ちょっと二人とも! 鼻血入ってる!」


 二人の鼻からドバドバと血が出てきた。

 やばい。体が小さくなったせいで、のぼせやすくなったのか。

 とにかく、一度あがって体を冷やさないとまずい。


「まってください! いまあがられると、はなぢのりょうがふえます!」


「そんなこと言われても、どのみちこのままだと血が足りなくなるでしょ、きみら。」


 なぜか必死にアリシアに止められて、湯に入りなおすけど、なんかもう赤く染まってきている。


「だ、だいじょうぶです。せいじょですよ。このていどのはなぢなんて……」


 アリシアが回復魔法を使うも、鼻血はいまだに温泉を赤く染め続けている。

 なにこれ、殺人現場?

 いや、それよりもアリシアの回復魔法が、効果を発揮していない。


「もしかして、その体だと魔法や身体能力も衰えてる?」


「そうみたいです……」


「だから、はやくもどしてもらいましょうって……」


 とにかく、こんなところで失血死なんてされたら、たまったものではない。

 すぐに回復魔法が使える状態に戻ってもらわないと。


「ほら、アリシア。温泉はもう楽しんだでしょ。女神様の魔力を俺に流して」


「えっ、でも……」


 まだ、満足していないのか?

 だけど、さすがにこれ以上は放っておくわけにもいかない。


「悪いけど、これ以上はだめだから。早く元に戻って」


「は、はい……」


 アリシアから流れてきたのは、これまでよりも大きな違和感。

 体の中を通っていく、明らかに巨大な異物だった。

 女神様だけあって、魔力も他の人たちと違うんだな。

 だけど、不思議と気持ち悪さとかは感じない。

 神様の魔力だからなのか、俺が慣れてきたからなのかはわからなかった。


「あ、あの……さすがに恥ずかしいです……」


 目の前には、一糸まとわぬ全裸の美女がいた。

 あ……やばい。


「ご、ごめん!!」


 アリシアが自身とリティアに魔法をかけたのか、二人の鼻血はようやく止まった。

 いや、回復魔法を継続してかけているから、鼻血が出るたびに治療しているみたいだ。


 しかし、気まずい空気には耐えきれず、結局俺は逃げるように温泉から出て行った。

 リティアは、あとで治そう……それで解決だ。


    ◇


「あんた、へんたいのくせに、いざはだかを見られるとなったら、はずかしがるのね」


「うう……へたれですみません。もう少し私に勇気があれば、あのまま押し倒してもらって……」


「むりよ。あんたへたれだもん」


「り、リティアだって、アキト様の裸を見て、鼻血を出してたじゃないですか!」


「出るにきまってるでしょ! はじめて見たわよ、あんなもの!」


「で、ですが……これでアキト様と、一度は一緒に温泉に入ったことですし、次からも……無理かもしれません」


「また、はなぢ出てるわよ。へたれ」

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