夫を受け入れられない。
家の前にいた。
・・・只今、到着しました。・・・
帰宅したよ。メールを嶺にいれた。あれから、懇親会は、嶺だけが、出席した。莉音は、ぼーっとしながら、ベットの上で横たわっていた。
・・・自分達は、これから、何処へ向かって行くのだろう・・・
その時には、感じていなかった。不倫の重圧感が、今のしかかっている。嶺と一緒の時は、夢中で嶺を求め、嶺の事しか考えてなかった。自分は、二重人格者じゃないかと思える程、全てを忘れ、嶺だけのものになっていた。・・・が。今、帰宅し、家の前にたっている。小さなマンションの玄関口。このドアの向こうには、何も、知らない夫が、待っている。莉音は、嶺へのメールを終えると、携帯のメール着信音を消去して、バッグに放り込んだ。
「帰ったよ」
ドアを開けると、いつもの通り、中で待っている夫に声をかけた。
「お帰り」
何も、知らない夫が、優しい笑顔で、莉音を迎えた。
「ご飯、作っていたけど。シチュウーでよかった?」
莉音の、カバンを、夫は、いつものとおり運ぼうとしたが、莉音は、拒んでしまった。瞬間、嶺からのメールが入った携帯を見られるかも・・・。と、思ったのだ。
「あっ・・・。大丈夫だから」
あわてる莉音に、夫は、何も、疑いしなかった。
・・・でもね。・・・
莉音には、不安があった。
・・・嶺に抱かれてしまって。・・・
自分は、夫を欺く事が、出来るのだろうか?このまま、夫に抱かれれば、嶺を裏切る気持ちになっていた。そう思う事自体が、もう、嶺と関係を持ってしまった莉音は、夫より、嶺を思っている事になってしまうのだが・・・。
やはり、夫を受け付けられない。
莉音は、夫を拒んでしまった。気持ちも体も嶺を受け入れたがっていた。