忘れない時。
ずーっと、思っていた。嶺を見る時。隣にいる時、嶺の腕や肩を・・・。そして、自分は、嶺の背中から、腰や嶺の後ろ姿を、いつも追いかけたいた。
・・・こうなりたかったんだと思う・・・。
莉音は、嶺の背中を撫でていた。両肩の間から、背中のくぼみから、すーっと腰まで、優しく、莉音の指が滑っていく。
・・・嶺が好き・・・
夫は、優しい。穏やかで、莉音を暖かく、包んでくれる。友達の紹介で知り合い、喧嘩する訳でなく、なんとなく、結婚まで、いってしまった。穏やかな日々。全身を焦がすような恋等、自分には、無縁だとおもっていた莉音だった。
・・・でも・・・
嶺との恋は、莉音を、跡形残らず、焦がす恋になるかもしれない。自分は、恐ろしい恋のイバラ道うぃ1歩き出してしまった。莉音は、感じ始めていた。嶺を、愛する事は、これから、苦しみを味わう事になるという事を・・・。
不倫。これは、不倫だー。倫理に非ず。それとも、1時の過ちでおわるのか・・・。
・・・たぶん。過ちでは、ない・・・
嶺も莉音も、わかっていた。2人共、引き返せない道を歩き始めてしまった事を・・・。
・・・引き返せない・・・
嶺も、ボンヤリ考えていた。こう、なれたらいい。思った事は、あった。莉音と、そうなりたい。考えた事が、あったが、とにかく、莉音は、人妻である。こんな風になれるなんて、思っていなかった。せめて、キスだけでもしたい。ささやかな嶺の願いだった。でも、莉音を抱く事が、出来たなんて・・・。はずみに、まかせて、莉音を抱いた。一瞬、拒んだが、嶺は、半ば強制的だった。自分は、後悔していない。
・・・莉音と一緒にいたい・・・
それだけで、満足だ。最初は、誰でも、ささやかな、願いから始まる、それは、1つの目標を達成すると、次へと向かっていく。
最初は、莉音の側にいたかった。その次は、唇をもとめ、そして、今は。
「莉音」
嶺は、莉音の唇を再び求めていた。