鍵となる命。
窓の外には、限りなく夜景が広がっていた。色とりどりの夜景。暖かく見える筈の夜景も、今の美央には、どうでも、よかった。
「三人で、話したいって。嶺が、言うの・・・。」
立って、いられなくなり、美央は、ソファーに、尻餅をつくように、座り込んだ。
「二人を、みるのが、辛いの。」
辛そうに、拓斗を見た。
「嶺や莉音さん。一人だけで、話をする事は、できるけど。二人並んで、話するのは、嫌なの。あの、二人の間に、私は、入れないと思う。」
拓斗は、美央の隣に、当たり前のように、腰かけ、熱いお茶を、渡した。
「わかっているの。嶺が、誰と居たいかは・・・。」
両手で、顔を覆った。
「でも。どうしたら、いいのか。わからない。嶺を、失ったらと思うと、生きていけなくなりそうで・・・。私のこれからは、嶺と、ずーっと一緒だって、思ってきたから」
嶺の周りを、心配した事もあったけど、信頼していた。仕事も落ち着いたら、きっと、迎えに来てくれると信じ待っていた。
「だけど・・・。初めて、莉音さんを見た時は、不安で・・・。もしかしたら、嶺をとられるんじゃないかと・・・。思って。やっぱり」
こらえきれず、美央は、泣き出した。裸足で、歩いてきた両足が、冷え切っていた。拓斗は、美央の両足を、さすっていたが、たまらず、美央の肩を抱いた。
「だからって、バカな事を・・・。」
拓斗は、美央の髪を撫でた。
「だから・・・。俺と一緒になれば、よかったのに・・・。美央。俺は、君が嶺を、好きだから、諦めたのに・・・。こんな辛い思いを、させるんだったら・・・。」
美央は、顔をあげた。
「ごめん。拓斗。」
「君が、幸せになってないなら・・・。」
拓斗が、たまらず、唇を重ねようとしたが、美央は、ゆっくり、顔を、はずした。
「ごめん。拓斗。今は、そんな気になれないの。ごめん。」
美央は、ちいさく謝った。
「いいよ・・・。俺には、十分な絆が、あるから。」
拓斗が、美央のお腹に、触ろうとするのを、美央は、片手で、押し戻した。
「拓斗。駄目。」
「判ってる。」
拓斗は、ため息をついた。
「とにかく、ここに、ずーと、居る訳にも、いかないだろう?俺も、いるから。話しようか?」
「いてくれるの?」
「嶺。あいつが、許せるんなら。それに、いつかは、話さなきゃ。だよな?」
拓斗は、携帯を、棚から、とりだすと、美央に、軽く、うなずき、かけはじめた。
「嶺?俺だけど。話があるんだ」
窓の外には、とおく夜景が、広がっていた。