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思いをこめて。

 仕掛けたのは、美沙だ。

どうしても、嶺と飲みたいと無理やり飲み会をセッティングした。

「どうして、あたしまで・・・」

莉音は、ぼやいた。今日は、旦那が出張でいない。それをいい事に、実家でのんびり親に甘えるつもりでいたのに、美沙の策略の餌食のなり、今、こうして、美沙の隣、嶺の隣の隣に、ちょこんと座らされている。2人の間におかれて、橋渡しでもしろと、いうのか?すごーく、莉音は、不機嫌になっていた。確かに、美沙は、可愛いと思う。周りのアホな男共は、美沙に夢中という子が多い。いつも、ミニをはいているし、リボングッズは、当たり前、ゆるくまいた巻き髪は、背中まであり、足は細く、胸は、大きかった。何よりも、若い。

「別に、あたしなんか、いなくたって」

莉音は、いつも、美沙が羨ましいと思っていた。黙っていたって、美沙は、誰かが、気にかけてくれる。それに比べて、自分は、オーダーさえ、声をかけないと、寄ってこない。

「ちょっと、先輩。ピッチ早すぎますよ!」

美沙が、あわてて声をかけてきた。残業が続いたあとのビールである。そおいえば、冷酒も飲んだような・・・。

「大丈夫!大丈夫!ちょっと、トイレ」

莉音は、立とうとしたが、上手く立てなかった。そんなに、飲んだつもりは、ないのだが、どうも、冷酒とカクテルを、混ぜたのが、いけなかった。あわてて、美沙に抱えられて、トイレに行く事は、出来たが、とても、このまま、続行して、飲む訳には、行かなかった。

「ごめん。あたし、無理みたい。タクシー呼んでくれる?」

莉音は、自分の体が自分の物でない感じがした。すぐ、タクシーをよんでもらい、乗り込もうとした瞬間、嶺が、助手席にすべりこんできた。

「ちょっと、七藤君!」

美沙が叫んだ。

「送ったら、すぐ、戻るから」

嶺は、笑った。美沙は、嶺の腕をとり、2次会の算段をしていたのだが、まんまと、嶺に逃げられてしまった。

「車出してください」

嶺は、言った。車は、街を離れ、一路、莉音の実家を目指していた。・・・が、莉音が、少し、落ち着いてくるのを、見ると嶺は、言った。

「もう、少し、飲みなおす?」

下心が、あった訳でなく、嶺は、莉音と少し飲んでみたいと思っただけだと思う。落ち着いた莉音と一緒に、嶺は、街に戻り、別なバーに入っていった。

「大丈夫?」

嶺は、覗き込んだ。

「大分、落ち着いたかな?いつもは、こんな事ないんだけど・・・」

莉音が、微笑んだ瞬間、嶺の顔が、そこにあった。どこかで、小さな悲鳴があがった。ひやかす声も・・。

嶺に唇が、莉音の唇と重なっていた。ほんの、軽いキスだった。

「ごめん。出ようか。」

嶺は、謝った。何で、謝るの?莉音は、そんな事を思っていた。逃げる様に、店を出ると、駅に向かって2人は、歩き出した。時計は、2時を示していた。

「タクシーないか・・・」

嶺がつぶやいた。

「歩こうか?」

莉音は、言った。駅から、莉音の実家までは、決して、歩けない距離では、ないが、かなりある。それでも、2人は、ふざけあいながら、歩き出した。会社では、決して、出来ない2人だけの、時間。

莉音は、自分が、結婚している事。つまり、人妻である事を忘れていた。キスは、拒むべきでは、なかったのか・・・。どうして、不意をつかれたとは、いえ自分は、嶺とキスをして、しまったのだろう。

自分は、夫を思っている筈。莉音は、嶺と歩いていると、楽しかった。嶺が、いろんな事を話しかけてくる。自分が、笑うと、嶺が嬉しそうな顔をする。それを、自分は、見つめ返し、また、嶺が微笑む。

・・・どうして、嶺と一緒にいると、楽しいんだろう・・・

そんな答えは、決まっている。それでも、莉音は、認めなかった。美沙と嶺の、仲立ちをしている間に、自分が、嶺に魅かれていたことを。そして、嶺も、莉音に魅かれている事を・・・。ここで、やめれば、誰も、傷つかない。でも、ここで、引き返すな。と、嶺の思いがあったのか、再び、嶺は、莉音の、体を抱きしめていた。今度は、軽いキスでは、なかった。もう、夜明けが、近づいていた。

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