繋がる思い。
嶺は、何もしなかった訳では、ない。携帯も、通じない中、とにかく、莉音を探した。莉音の、実家を、会社の書類で、調べ上げ、直接、尋ねてみたが、両親は、とうに、亡くなっているとかで、家は、荒れたままに、なっていた。思い切って、莉音の、夫を、尋ねようかと、思ったが、それは、案の定、難しく、人つてに、莉音が、離婚したと、聞いただけだった。莉音が、離婚したと聞いた時、心が、震えた。もしかしたら・・・。と、いう思いもあったが、美央の、お腹だけは、待ってくれなかった。月が、満ちてきてる。ようやく、自分達は、一緒になれるかもしれない。と、いう思いとは、裏腹に、嶺は、美央と、結婚する日が、近づいていた。
・・・もう、これ以上、待たせる訳には、いくまい・・・
莉音は、もう、自分の力では、探し出せなくなっている。
・・・美央の子を引き受けよう・・・
嶺は、美央の、思いを、受け止める事にした。莉音への、思いを、心の奥に沈めよう。いつか、古い傷のように、疼くかもしれない。あんなに、恋焦がれた人だもの、忘れられる訳が、ない。
自分は、莉音を、生涯忘れる事あh、ないだろう。いや、まだ、諦めた訳では、ない。逢えば、時間は、逆戻り、莉音を求め、一緒にいたいと思うだろう。逢えなくとも、心の、奥底に、莉音への、熱い思いが、染み付いていた。きっと、生まれてくる子供を、愛する事は、出来るだろう。でも、莉音より、深く、美央の事を、愛する事は、生涯できない。
「子供を、幸せにしような。」
嶺は、美央に、笑いかけた。
夏が、そこに、迫っていた。家を出、一人暮らししようと、する莉音を、妹の来夏は、自分の子供の子守を、理由に引き止めていた。日に日に、姉の、莉音は、痩せていき、憔悴しきっているのが、わかっていた。理由も、何かは、わかっていた。それを、余計な、お節介とばかり、手出していいのか、わからなかった。近くの、雑貨屋に、働きに、行くようになって、少しは、表情も、戻ってきたが、相変わらず、通院は、続いていた。
「今日も、仕事なの?」
元気のない姉を、誘って、近くの公園で、開催されているフリマに行こうとしていた来夏は、不満の声を上げた。
「ごめん。休みの予定だったんだけど。急に、出てくれって、言われて・・・。」
「なんだ。仕方がないなー」
来夏は、お弁当を、莉音に渡した。
「しかり、食べてね。お姉ちゃん。そんなに、痩せて、見た目、悪いよ」
「そお?じゃ。時間だから」
莉音は、お弁当を受け取ると、あわてて、外へ、飛び出していった。
「あっ!おねえちゃん」
携帯忘れてるよ!言おうとしたが、はっと、思い当たり、追いかけるのを、やめた。携帯を、手にとって見た。何度も、着信が入っていても、出なかった。莉音の携帯。着信拒否でもなく、番号を変えるわけでもなく、鳴るままに、させておく、携帯。来夏は、携帯を、開いた。オートロックされている訳でも、なく、すぐ、画面が、見えた、着信履歴を、見ると、同じ名前での、着信が、ずーっと、続いていた。
・・・嶺・・・
最近は、何日かに、1度の割合のようだが、何日も、前は、日に何度も、かかってきていた。
・・・あぁ・・・この人だ。・・・
来夏は、嶺の、番号を、自分の携帯に、控えると、発信した。後で、履歴は、消すつもりで。