流れる・・・。
美央は、待っていた。嶺が、自分に逢いに来てくれるのを・・・。2人よく行った駅ビルの、最上階。街並みが、よくみえるラウンジで、嶺が来るのを、待っていた。
最初は、少し遅れるとメールがあった。1時間くらい?と思っていたが、時間は、段々遅れ、午後になっていた。雨が降り出し、少し、温度が下がってきた。妊娠している美央に、同じ姿勢で、待ち続けるなは、辛かった。
・・・でも・・・。
もう、答えを出そう。莉音の件で、遅れてしまったが、ここまで、きた以上、嶺と一緒になるのが、一番いいのだろう。莉音には、あんなに素敵な夫が、いる。それは、嶺もわかっただろう。そして、莉音と別れる気はない。もう、嶺は、魂を抜かれた状態で、もしかしたら、もう、自分の事を、振り向いてくれないかもしれない。それでも、美央には、嶺に傍にいて欲しかった。
・・・もう、少しだけ、待とう・・・
バッグには、婚姻届を入れてきた。自分のサインは、してある。嶺と、そのまま、届けに向かうのだ。携帯がなった。
「はい」
嶺から、だった。
「遅くなって、ごめん。今、下に着いたから。」
「良かった。待ってるから。いつもの所だか・・・」
言いかけた。エスカレーターを、振り返り、嶺が、上ってくるのを、確認しようと、振り返りうとした。・・・その時。
「あっ!」
美央が、叫んだ。柱から、幼稚園児くらいの子供が、2人競い合いながら、飛び出し、美央の、お腹にあたり、いきなり、転倒した。子供は、跳ね返り、臀部から、落ちたのだ。
「だ・・?大丈夫?」
美央は、駆け寄り、子供を抱き起こそうとした。
「っ・・・!」
激痛が、下腹部を襲った。
・・・え?・・・
恐る恐る美央が、自分の、下腹部を見下ろすと、何かが、流れていく感触が、あった。暖かいもの。
それは・・。
「大丈夫ですか!」
子供の、母親と思しき女が、叫びながら、美央に駆け寄った。美央の、脚の間から、赤いものが、流れ落ちていた。
・・・痛い!・・・
美央は、思わずしゃがみ込んだ。
「誰か!救急車!」
叫ぶ人達の中に、嶺の姿をようやく、みつけた。