メアドは、君から・・・。
・・・莉音の笑顔が好きなの・・・
嶺は、よく莉音にメールを送った。
新婚旅行から、帰った莉音に、後輩の美沙が泣きついてた。
「七藤君が好きなの。お願い先輩、仕事でよく話しますよね?協力してくださーい」
人なつっこい顔で、莉音に、ねだった。そのままの、顔でせまれば、十分いけるのに。莉音は、面倒臭かった。あまり、人の面倒を見るのは、好きではない。取りあえず、職場の女子で、唯一、結婚してるまだ、若い?女性という事で相談されたらしい。まあ、嶺は、なかなか、もてるようなので、1番安心できる所で選ばれたという処か。
「ふぇー。面倒なんですけど・・」
莉音は、本音を出した。今は、落ち着いた穏やかな、旦那とのんびり生活したいのだ。人の恋愛に巻き込まれたくないし、もう、散々である。莉音は、派手な顔立ちのせいで、よく遊んでいると、勘違いされやすかった。ちょっと、男性と話しているものなら、おばさん達の格好な話のネタにされていた。ようやく、知り合えた穏やかな人。この人となら、一緒にくらしていける。31歳になって、ようやく掴んだ穏やかな生活。莉音は、嶺と関わる事で、穏やかな生活が、崩れてしまうような嫌な予感がした。
「そんな事言わないで下さいよー。先輩は、自分ばかり、幸せでいいんですか?」
「はー?」
美沙は、暴挙にでた。
「飲み会を設けるとかー。なんなら、仕事。ほら、報告書とか言って、メアド聞くとか?」
「はー?ますます、まずくない?あたし、人妻なんですけど?」
「まあ、まあ!先輩なら、大丈夫。」
てな、訳で、莉音は、嶺のメアドを聞くはめになった。
「ちぇ!」
莉音は、小さく舌打ちした。確かに、嶺と2人で、検査報告書を出すため、実験室にこもる時がある。だからと、いって、突然、メアドを聞いたら、嶺になんて、思われるか・・。莉音は、納得いかない様子で、データー入力を続けた。
莉音の職場は、広く、そこには、最新のコピー機が置いてあった。そこを、嶺は、よく利用している。コピー機から、真っ直ぐ、突き当たりに、莉音の席がある。嶺は、コピーをしながら、いつの間にか、莉音を、見るのがクセになっていた。
「今日は、いるのかな?」
後ろに、下がって、莉音を探す。10時と3時は、休憩に行っているので、コピーの時間は、ずらす。まるで、ストーカーだな。嶺は、笑った。特別、莉音に感情がある訳では、ない。仕事を一緒にしている内に面白い奴くらいにしか、思ってない。しっかり、しているようで、意外と、ボーッとし、嶺に、指摘だれる事が、よくあった。字もあまり上手では、ない。
「いいの。パソコンの時代なんだから」
嶺にからかわれると、真っ赤になって、怒った。面白い。最近、すっかり冷めてしまった彼女といるより、莉音をかまっているほうが楽しい。あまりにも、莉音の背中を見ているものだから、急にふりかえった。
「ちょっと!そこの人」
莉音が、つかつかと歩いてきた。
「メアド教えなさいよ!ぜんぜん、報告書なってない」
「?」
「だーかーらー。メアドってんの」
嶺は、驚いた。周りに、コピー待ちの人が、並んでいるのだ。やましい事は、ないのか?本当に仕事の用件だけなのか?
「何、赤くなってるのよ。メアド何に、使うか、わかるでしょ?」
「早くしろよ!七藤。お前、何考えているんだよー」
コピー待ちの、同僚が冷やかした。あまりにも、どうどうと聞くものだから、圧倒されて、嶺は、携帯を出し、赤外線をしてしまった。
「いただき!」
莉音は、にっこり微笑んだ。嶺の好きな顔だった。