渡さない!美央の計画。
判っていた。別れの日が近い事を・・・。大学時代から、長いのである。嶺が、今、何を感じ行動しようかとしているかは、美央には、十分わかっていた。
嶺との出会いは、大学の説明会だった。たまたま鳴った携帯を取り出そうとした時、美央は、誤って、水没させてしまった。親とも、連絡もとれず、困っていたのを、声をかけ、助けてくれたのが、七藤嶺だった。美央の好みの男性だった。なかなか、声もかけれずいたのを、周りの友人達の、後押しで付き合うようになったのだ。子供みたいに、無邪気な嶺は、一緒にいて、飽きる事は、なかった。いつも、情熱的に、美央に語りかける。
・・・間違いなく、自分は、愛されている。・・・
美央は、そう感じていた。だから、大学を卒業し、別の地方に行くと聞いた時も、何の不安もなかった。自分達は、繋がっている。そう信じていたのだが、最近の嶺は、メールの返信すら、遅く、なかなか、逢おうとは、してくれなかった。
・・・私達、だめかもしれない・・・
職場の、飲み会で、先輩達に、泣き崩れたことも、あった。でも、このまま、嶺と、別れたくない。美央は、もう、自分には、嶺しかいないと思っていた。自分は、嶺に愛されている。きっと、誰かに、誘惑されたに、違いない。美央は、思い嶺を取り戻すべく、嶺のマンションをたずねたのが、2月13日だった。
・・・嶺に、愛されたい・・・
こうなった時、女は、強いもので、優柔不断で、友人達から、莉音との関係を否定されていた嶺は、美央との、関係を持ってしまった。
・・・離れないで・・・
美央は、そういい残して、帰っていった。自分から、こんな事を言いにきた訳では、ない。嶺に否定してもらいたかったのに、嶺は、自分とずーっと一緒にいたいとは、言ってくれなかった。帰りの終電で、美央は、涙が、とまらなかった。こんな事は、自分からしたくなかった。だけど、嶺を失うのは、もっと、嫌だ。嶺と過ごした時間が、切なかった。自分と、一緒にいると、何度も、メールしてくれた夜が、なつかしかった。もう、嶺は、自分をあいしては、いない。自分に思いがないのに、傍にいるのは、辛いと心が叫んでいた。それでも、嶺に、心が、なくなったのなら、それでもいい。傍にいよう。美央は、終電の中で、周りの目もはばからず、声をあげて、泣き出していた。
それから、1ヶ月半は、過ぎただろうか。美央は、その間、嶺に連絡をしていなかった。そして、ある時期が着てから、嶺に電話した。
「嶺?」
最初は、嶺は、出なかった。何回か、かけても、でない。でなければ、出ないほど、苛ついて来る。諦めかけた時、ようやく、嶺がでた。
「どうしたの?」
落ち着いたいつもの、嶺の優しい声だった。
「話があるの」
「まって。」
嶺は、周りを気にしているようだった。傍に誰かが、居るのか。ドアのしまる音がして、嶺が、はなしかけてきた。
「何か、あったの?」
「あったわ。大事な話なの」
「いま?話したいこと?」
嶺は、誰かに、気をつかっているようだった。
「ゆっくり、話したいの。時間をつくって。」
「わかった。今は、俺も、無理だから」
「誰か、いるの?」
「うん。温泉に来ている。」
嶺は、それだけをいった。美央が、察して、自分を諦めてくれるかと、思ったが、予想以下に美央は、冷静だった。
「じゃ。戻ったら、連絡して」
「わかった」
意外と、冷静な、美央の態度に、驚いたが、部屋の中の、莉音が、気にかかったので、すぐ、携帯を霧、部屋に戻っていった。案の定、莉音は、不機嫌になっていた。