表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/48

携帯は鳴る。

 当日、嶺と莉音は、駅のターミナルで待ち合わせをした。案の定、朝に弱い嶺は、少し、遅れて現れた。車の助手席を開け、莉音は、滑り込むと、頭から、コートを被り、顔を隠した。

「いつまで、そうしてるの?」

サングラスの嶺が、笑いかけた。

「高速乗るまで・・・。」

「どうして?」

「見られたら、困るから・・・。」

「へぇ・・。見られたら、困るんだ!」

「いじわる。覚えといて」

「俺、頭悪いから、覚えてられないかも」

コートの隙間から、莉音は、キッとにらんだ。

「まあ、まあ、怒らない。怒らない」

嶺は、莉音に何かを放り投げた。

「なあに?」

莉音の好きなチョコだった。それもビター。

「わかってるじゃん。」

「だろう」

「それじゃあ。はい」

莉音が、差し出したのは、小さいお弁当箱。

「食べて、ないでしょう?」

「やった!俺、今朝は、ヨーグルトだけなんだ」

莉音は、小さなお弁当に、おかずとおにぎりを用意していた。いつも、莉音は、晩御飯のお裾分けを嶺に用意し、こっそり会社のロッカーにいれといた。室温の高い日等は、保冷剤を入れて、ロッカーに用意していた。

 

2人は、北関東を目指した。初日は、莉音の好きな美術館をめぐる。着いたら、生憎の雨だった。早咲きの桜が、雨に濡れている。

「だーれかさんの行いが悪いから。」

嶺は、おどけた。

静かな美術館を巡りあるってると、突然、お腹がなった。

「ごめん」

莉音のお腹の虫だった。

嶺は、笑った。いつも、すましている莉音には、意外な行動だったから。

「らーめんでも食べるか?」

「うん」

嶺は、車に戻ると、2人でらーめんを食べにむかった。事前に嶺が調べておいたらーめん屋へ。

 その後、名物のじゃが揚げを食べ、ショッピングセンターで、莉音の買い物に付き合い、山間に温泉宿に向かった。濁り湯の、こじんまりとした上品な旅館だった。

「ここに泊まるの?」

「そうだよ」

嶺が、フロントで受付をすませた。小さな旅館。2階の奥の部屋に着くと、嶺は、ガイドを莉音に放り投げて来た。

「俺、温泉に行ってくるから。明日、どこまわるか、調べておいて」

持ってきた荷物を広げると、嶺は、タオルを片手に温泉に向かっていった。

「はいはい。そうしますよ。」

莉音が、嶺の出て行った後、ガイドを広げようとすると、携帯がなっていた。

「?」

みると、嶺の携帯である。開こうか・・・。莉音は、迷った。どうしようか・・・。迷いながら、莉音は、嶺の携帯を手にとっていた。・・・が、開かなかった。ロックされていたのだ。

「なんだろう」

ロックしておかなければ、ならないなんて・・・。すっきりしないまま、時間だけが過ぎていき、しばらくすると、嶺が戻ってきた。

「あー。気持ちよかった。莉音も行ってくれば?」

「うん。」

莉音は、嶺の携帯をとった。

「携帯鳴っていたみたいだけど」

「そう?」

嶺は、莉音から、携帯を受け取ると、画面をみた。

「大丈夫なの?」

嶺の表情が、硬かったのを見逃さず、莉音は、言ったが。

「うん」

と、言ったまま、嶺は、携帯を閉じた。

「じゃあ、あたし。行ってくるね。」

自分が、温泉につかっている間に電話するのかも。そう思いながら、莉音は、部屋を出た。女の勘だった。

・・・なんか、嫌な予感がする。・・・

莉音は、何かを感じていた。


部屋に戻ってくると、いつもの嶺になっていた。

「どうだった?」

「露天風呂もあったね?」

「恋愛成就の露天風呂だって」

「お帰り」

嶺は、莉音を抱き寄せた。

「いい匂い。」

「シャンプーかな。」

莉音が、顔を上げようとすると、また、携帯がなった。

「いいよ。出てよ」

「ううん。こっちが大事」

「気になるから、出て!」

促されて、嶺は、しぶしぶ携帯にでた。

「はい。どうしたの。」

嶺は、ちらっと、莉音の様子をみると

「ごめん」

と、いって、部屋から、出て行ってしまった。

・・・気になる・・・

この、古い温泉宿は、音が、よく響きわたる。莉音は、テレビの音をひくくして、思わず、聞き耳をたててしまった。嶺の声が聞こえてくる。

「今・・・。ちょっと。そう。ごめん。」

要所は、うまく聞こえない。そのうち、嶺は、部屋に戻ってきた。

「うん。大学の友達」

聞いていないのに、嶺は、言い訳をした。

「聞いてないけど」

莉音は、不機嫌に応えた。

しばらく、沈黙が続き、食事の時間になった。なんとなく、気まずい雰囲気のまま、移動して、2人は、食事をし、再び、部屋に戻る頃には、莉音は、気を取り戻していた。

「親父からのなんだ」

嶺が、とりだしたのは、高級そうなワイン。今日は、時間を気にしないで、飲もうとばかり、嶺は、莉音のグラスにワインをついだ。

「だめだよ。飲みすぎちゃうよ」

「まあ。」

嶺は、莉音にグラスを渡した。そして、時間は、すぎ、嶺は、莉音を腕に抱き眠りについていた。一度、眠ると、なかなか、起きない。気持ちよさそうに、深い寝息をたて、横に眠る嶺をみていた。おもいだしたように、頭を掻き、口をならす。面白いクセがあるものだ。トイレに立とうとして、ふと、嶺の携帯が、目にはいった。

「誰からだったんだろう・・。」

なんとなく、莉音は、わかっていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ