許せない。
嶺には、シルバーのチョカーが似合うと思う。莉音は、駅で、莉音にシルバーのチョカーを買った。堂々とお揃いにするのは、恥ずかしいから、こっそり自分にも、同じデザインのチョカーを買った。2人で出掛ける時くらい一緒に、首にかけたい。プレゼント用に、1つは、リボンをかけてもらって、自分のは、そのまま、首にかけてもらった。材料を買い、嶺の部屋で使えるようカップを2つ買った。たぶん、男の1人暮らしなのだから、ケーキ用の皿もないかもしれない。
・・・雰囲気も大切よね・・・
莉音は、100円ショップで、食器も買い揃え、嶺のマンションへ向かった。
嶺のマンションは、街の側にある。ショッピングセンターのすぐ、側。莉音は、そこに車を停めると、嶺のセキュリティーマンションにむかった。部屋番号は、502号室。呼び出しを押すと、ロックは、解除され、エレベーターの下で、嶺が待っていた。
「や!」
嶺は、おどけて見せた。
「おはよう」
莉音も照れくさそうに笑った。
「いろいろ買ったきたの。きゅうり嫌いだたんだっけ?」
「そ!小学校の時、はいたんだ」
「えー!」
莉音は、無意識にサラダっていうと、きゅうりを買ってしまっていた。
「ごめん。つい買っちゃった・・・」
「いいよ。よけて食べるから」
嶺は、莉音の荷物を持つと、エレベーターに入り、5階へと向かっていった。
あの後、美央から、何回も電話があった。嶺は、出なかった。
・・・終わったんだ・・・
嶺は、思っている。自分は、これから、残りの時間を莉音と一緒にいたい。それなのに、美央と一緒にいたら、2人に申し訳ないと思っていた。中途半端に期待を持たせては、いけない。美央に冷たくしなくてはいけない。電話にも、でない。メールも、受けなかった。何度も、何度も、メールは、届いた。着信拒否する事は、出来る。それでも、万が一のため、それは、しないでいた。
・・・あいたい・・・
美央は、嶺を愛している。それは、ずーっと変らないものだと思っていた。この間だって、嶺は、自分を抱いたでは、ないか。いつもと変らなかった。それなのに、急に、好きな人が出来たというのか?好きな人がいるのに、自分を嶺は、抱いたのか?
・・・許せないよ・・・
美央の心の中で、悪意が育っていった。いままで、一緒にいた。突然、自分の納得もしないまま、別れるという嶺が許せない。自分を裏切った嶺が許せない。あの時、自分を好きだと言ってくれたでは、ないか。これは、未練では、ない。まだ、自分達は、終わってない。美央は、そう思っている。
2月13日。莉音を迎え入れる前日。
この日、嶺は、1人で過ごしたかった。正確にいうと実家で、家族とゆっくり過ごすつもりだった。昼過ぎまで、寝て、午後から実家に行く予定でいた。・・・が。インターホンが、朝早くから、来客を知らせた。モニターは、見慣れた姿を映し出した。
「美央!」
嶺は、目をこらした。
「嶺!あけて」
インターホン越しに、美央が叫んでいた。
「早く、あけて」
「どうして?」
嶺は、あっせた。こんな朝早くに、周りに迷惑を掛け兼ねない。
「まって」
下に降りていって、階下で話そうか?思ったが、言い争いになりかねない。嶺はセキュリティを解除した。
「どうしたの?こんな、早くに」
嶺は、ドアを開けると冷静さを装った。美央は、中に誰か居るのかと疑っているらしく、乱暴に部屋に入った来た。
「どういう事?」
ヒステリックに怒鳴った。
「どうしたの?」
嶺は、お茶を用意しながら、背中から声を掛けた。
「別れるって、話」
「うん。座って」
嶺は、美央にお茶を渡した。
「気持ちに嘘はつけない。悪いと思ってる。」
「嶺。どうしてなの?この間まで、一緒に居るって、言ってたじゃない」
「美央」
嶺は、美央を抱き寄せた。
「傷つけたくないんだ。これ以上」
「嫌だよ」
美央はすがりついた。
「こままだと、みんな傷つくんだ。俺が悪い。美央。今まで、本当にありがとう。」
「ちがう!」
美央は、嶺を突き飛ばした。
「傷つくのは、嶺。あなた自身でしょう!新しい女の所へ行きたいんでしょう」
激しい怒りの顔。
「そうだよ」
嶺は、哀しそうに言った。
「側に行きたいんだ。気持ちが、変ってしまった。美央、心のない俺がそばにいても辛くないの?」
「辛くない!」
美央は、両手で、嶺の手を握り締めた。
「側にいて。お願い。いままで、一緒にいたじゃない?急には、無理なの。時間がほしい。もう少し、そばに、いて」
「美央。無理だよ」
「離れない。そうでないと、あたし、何するか、わからない」
美央は、激しく、嶺を睨んだ。
「美央・・・」
「嶺!キスして!」
美央は、嶺の首に手をまわしていった。