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もう1つの別れ。

 もうすぐ、バレンタインがせまってた。

2月13日は、嶺の誕生日。できれば、誕生日を一緒に祝いたい莉音だったが、嶺の都合で、2月14日を、一緒に過ごす事になった。

・・・本当は、誕生日は、あの人と一緒なんでしょう?・・・

莉音は、言いたかったが、責める権利は、ないので、我慢した。本当は、独占したい。自分の物だと言いたい。それが、言えないのが、不倫なのか・・・。お互い信じあう。それだけしか、結びつきを確認する方法はない。

・・・自分だって、言えないでは、ないか・・・

莉音は、自分の立場を考えたくなかった。冷静に考えれば、自分の罪がわかる。心の淵を見ないように、嶺には、無邪気に聞いた。心の闇を見透かされない様に。

「バレンタインは、ケーキでも焼く?」

「え・・?できるの?」

美央は、できない。

「失礼しちゃうわねーー」

莉音は、お菓子作りに自身があった。

「材用買って行くから。キッチン借りるね!」

プレゼントは、何にしよう。莉音の頭は、嶺と過ごす1日で一杯になっていた。

「わかった!楽しみにしてる。」

嶺は、笑った。会社のコピー機の側で、会話をすると、2人は、すぐ、離れた。自販機で、コピー機の側で、よく言葉を交わしたが、嶺が女性と一緒の会話をしている姿は、珍しい事では、なかったので、特別噂には、ならなかった。莉音は、嬉しそうだった。嶺は、じっと、莉音の後ろ姿を見送った。

「別れろ」

・・・判ってる・・・

嶺は、呟いた。莉音の側に居たいと心から願っている。でも、それは、何も知らない人を不幸に陥れる事。だったら、せめて、この日だけは、普通に過ごしてから、別れを言おう。自分から、不倫に手を染めていて、何て、買ってな言い草だろう。嶺は、失笑した。莉音が、望んできた訳でない。自分から、莉音に手を伸ばしたのだ。

・・・高値の花なのか・・・

嶺は、再び笑った。


「どうしてなの?」

美央は、激怒して、携帯の向こうで、怒鳴った。

「あえない?って、どういう事?」

美央が、イラついていた。

「無理だったんだと思う」

嶺は、莉音と、別れるつもりでいた。・・・が、その前に美央とも、別れようと思っていた。こんな気持ちでは、いられない。

「毎年、嶺の誕生日は、一緒に過ごす予定だたでしょ?」

「ごめん。一緒に居られなくなった。」

美央に嘘は、つけない。

「好きな人が、できた」

「!」

美央が、絶句した。

「その人と、出来るだけ、一緒にいたいんだ。だから・・」

「ちょっと」

美央にさえぎられた。

「この間、あったよね?あったばかりなのに・・・。どうして?」

強気の美央が、泣いていた。

「無理だよ。別れられない。」

「ごめん」

「だめだよ」

嶺は、首を振った。

「今から、そちらに、行く」

「だめだ。逢わない。」

「どうしてなの」

「ごめん」

「ずるいよ・・・」

泣きながら、引き止めようとする美央の携帯を嶺は、きった。誰かへの思いを貫こうとする時、人は、何て、残酷になれるんだろう。美央だって、気持ちがあって、付き合った筈だ、それが、今、別れようとしている。莉音ともいつか、別れなければならない。美央との事も上手く、やれば、別れなくても、済むかもしれない。だが、嶺には、上手くできなかった。いつか、別れてしまうかもしれない莉音に、今の気持ちを全て捧げたい。嶺の今の気持ちだった。

2月13日は、1人で過ごす。それは、美央とでもなく、莉音とでもなく、自分1人の誕生日。



 


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