別れのアドバイス。
嶺には、大学からの友人と、定期的に飲みに行く事が、しばしばあった。何人か、こちらから、大学に行ってて、向こうで知り合った友人だ。結構、集まって、気のあった同士、悪ふざけをしたり、今の若者らしく、真剣に恋の話等するのだ。結局、集まって、散々、飲んだ後には、互いの恋人の話になり、最後には、嶺の話になった。大学時代から、美央との事は、皆知っている。
「結局、どうなってるの?」
一番親友の慶介が、聞いてきた。
「誰の事?」
思わず嶺の口からでた。
「誰?って?美央の他に、誰かいるの?」
その場にいた4人が、顔を見合わせたが、すぐ、にやけた表情になった。
「だから、俺がよく言っていただろう?」
慶介は、それ見たことかと言わんばかりに、嶺の背中を叩いた。
「お前には、いろいろ経験してほしいんだよ」
「いや。それが・・・。」
嶺は、ためらった。莉音との事を話すか否か。
「言えない事かよ。まさか、不倫とか?」
慶介がひやかした。兎に角、学生時代から、人目をひく嶺は、女難が多く、よく、冷やかして、飲むのが、慶介の恒例となっていたのだ。
「・・・」
困った顔の嶺。
「あーーー。そうか」
慶介は、察し、他の2人は、身を乗り出した。
「話にくいんだけど」
嶺は、ポツリと言った。この何日か、莉音の事で悩んだ事。そもそも、2人の間に、起こった事、自分を抑えられなかった事。そして、莉音への気持ちを、このざわめいた居酒屋で語りだした。
慶介は、嶺の理解者である。2人で、よく遠くまで、旅行しては、おふざけ写真を撮っていた。たぶん、嶺が、不倫に手を染めたとしても、彼は、理解しようとしてくれた。・・・が、1人、妻帯者がいた。彼の意見こそが、世間の一般意見だろう。
「嶺お前さ、」
拓斗が、真剣な顔で、嶺に向かった。
「相手の家をグチャグチャにしてまで、一緒に居たい相手な訳?」
そう、拓斗は、美央の事が、昔、好きだった。いまは、家庭を持ち、子供にも、恵まれている。
「親を泣かし、兄弟を泣かし、周りを不幸にしてまで、一緒にいたい相手なのか?」
興奮していた。嶺は、そこまで、考えた事は、無かった。莉音への思いで一杯で、ようやく、手に入れた喜びと、莉音の夫への申し訳ない思いでは、いた。
「仕事だって、お前・・・。どうなるか・・・。ようやく、馴れてきた所だって、言ってたろう?」
真剣に拓斗は、嶺の事を心配していたが、もしかすると、妻を寝取られた夫の気持ちになっているのかもしれない。
「・・・・」
嶺は、何も応えられなかった。拓斗のいうとおりだと思った。
「別れろ!って、いうか、もう、逢うな!連絡も。そうメールも辞めろ!」
熱弁だった。
嶺は、黙って、うなだれていた。
「まあまあ、な!」
慶介が、嶺の肩を叩いた。
「いいから、お前ら、行き着く所まで、いっちゃえよ!」
嶺の迷いを打ち消すかの様に、慶介は、言った。嶺が、莉音への思いが深い事を誰よりも、理解しているつもりだった。