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第八話真相


「……ふざけやがって」


誰にも聞こえないくらいの小さな声で俺は牢の中で呟く。

騎士団はとんでもない無能達だった。

俺を逮捕して、何が楽しいんだ……

しかし、今は誰も俺に話しかけてすらくれないので、このままだと俺が犯人にされる。

なんとか……なんとか裁判で無実を証明せねばならない。


そんなふうに投獄生活を数日していたら、誰かも分からない男が俺を牢屋から連れ出した。そして密室で2人になると低い声で話し始めた。



「貴様には死刑以外あり得ん。裁判もされん。精々あと2日の猶予を楽しむんだな」


それだけ告げると男は部屋から出て行き、俺はまた牢に戻された。


全く意味が分からない。何も話させてもらえず、あと2日で勝手に殺される?冗談じゃない……

何が起きたらそんな事になるんだ?

騎士団はそこまで無能なのか?


……いいや、そんなはずは無い。幾らなんでもそんな事あり得ない。

何かの意思が介在しているんだ。

俺を殺そうとしている誰かの意思が……

魔王軍だろうか?

ともかく、ソイツのことを探りたいが今はどうする事も出来ないので、脱獄の計画を練るしか無い。


何か脱獄に使えそうなものは……

そう思っていると何やら外から声が聞こえてくる。


「あれは……パレード?」


よく分からないが何かのパレードをやっている様だ。

しかし、なんのパレードだ?

少しだけ気になり探ってみる。


「『聴覚強化』、『望遠』、『透視』」


すると、牢獄の中からでもパレードの様子がよく分かるようになった。

どうやら勇者パーティーの結成のお祝いらしい。

神輿の上にいるのは、勇者らしき金髪の男と、賢者らしき丸眼鏡の男と、聖騎士らしき長身の女と、聖女らしきピンクの髪の女……


「どういう……ことだ?何故聖女があそこにいる?そもそも聖女はマヒロじゃ無いのか?」



聴覚強化で周りの人達の声を聞いてみる……



「いやぁ、凄かったなパレード」


「ああ、特に見たかよ聖女様の別嬪っぷりは!」


「綺麗だったよなぁ……でもそれより、まさかヒナタ王女様が聖女様だったなんてな!」


「あれには驚かされたな」


ヒナタ王女が聖女……?

そんな馬鹿な、じゃあマヒロはなんなんだ?


どうしても気になりさらに魔法を発動する。


「『魔法威力上昇』、『射程延長』、『望遠』、『鑑定』」


大聖女の魔法で魔法が使える射程を最大まで伸ばす。

更に、万が一の為魔法威力上昇で相手の抵抗力を上回るようにし、その上で鑑定を使用する。

本来鑑定は鑑定士なんかの職業が向いているのだが、ここまで強化すれば大聖女でもかなりの距離の射程と精度になる。

それで職業が見れるはずだが……

すると、そこに映し出された結果に俺は愕然とした。


「なっ!あいつ聖女じゃ無い……ただの回復士じゃねえか!」


……しかも、たしかヒナタ王女だったよな?

これで何となくだが、状況を理解できた。

先程俺に死刑を宣告してきた男が近づいてきたので問いただす。


「おい、お前」


「罪人の耳に言葉を傾ける気は…」


「聞け」


その一言で相手は一瞬体を震わせて黙った。


「なあ……外では勇者一向のパレードをやっているみたいだな……マヒロを差し置いて」


「……ああそうだ」


何を言いたいのか察した男は黙って聞き始めた。


「あの聖女はヒナタ王女、当然本物の聖女では無い。つまりだ、お前達は聖女マヒロが死んだ事を隠蔽しようとした。騎士団にとっては王都の中に魔物が入り込んでしまったことは都合が悪いもんな?それに早々に聖女が死んだとなれば民衆達は不安を思う。だから代わりに王女を聖女にすることでマヒロが初めから聖女ではなかった事にした。まだ正式に公表はされていないもんな」


男は罪悪感を覚えたのか汗を流し始める。


「………」


「しかしだ、そうなるとマヒロが死んだ事に説明がつかない。マヒロの存在そのものを無かった事にはできないからな。マヒロと関わりがあった人が不審に思う。事故死にしても良いんだろうが、俺が真実を訴えるかもしれない。だから俺を犯人にして処刑し、この事件を闇に葬ろうとしたんだ。口封じのためにな……違うか?」


暫く俯いていた男だが、顔を上げると申し訳なさそうに声を出した。


「………正解だ」


「お前達は自分が何をやっているのか理解しているのか?」


「承知の上だ。全て国の為……多少の犠牲は仕方がない。お前には悪いと思うが死んでもらう」


手錠で繋がれているのであまり近寄れないが、それでも精一杯近くで声を出す。


「………悪いけど、そんな簡単に死ぬ気はない。覚悟しておけよ、この借りは高くつくぞ」


「負け犬の遠吠えだな。やれるものならやってみろ……手錠すら外せないお前がここから出られるとは思えんがな」


同情するような顔でこちらを見ていた男はその場を去っていった。




Q王女が聖女のふりをしている理由は分かったけど、何故王女がやってるの?


A国王が我が子可愛さに……というのが半分。

もう半分は、勇者パーティーが魔王を倒したら全員に爵位を与える事になる。でも、正直貴族が増えるのは国王にとっては面白くないので、元々王族である娘なら、勇者パーティーとして魔王討伐したとしても、爵位を与える事にはならないから実質的に貴族の枠が一つ減る。

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