第十九話ミツナの研究
「いやぁ~、ミツナ殿の訓練は中々にキツいでござるな!拙者倒れるかと思いましたぞ!」
「いやいやいや、初日で倒れなかったんだから寧ろやばいだろ。それ以前に模擬戦負けそうでヒャッとしたんだけど。本当に戦闘経験ないの?」
「ああ、模擬戦の時はなんだか頭に戦い方が思い浮かんで……自分が自分じゃないような感じがしたんでござるよ。そういうのお二人はないでござるか?デュフ、デュフフ」
「いや、僕は特にないよ。コトリは?」
「私も無いわよ。あんたそれ才能あるんじゃないの?」
「そ、そうでござるか?嬉しいですな!デュフフフフフ」
「……その喋り方なんとかならないの?」
「なんともならないでござる!」
こうして、僕達は賢者の塔に戻ってきたのだが、夕飯を食べようというところでコトリが顔を青ざめて言った。
「あっ!……どうしようマズイ」
「何が?」
「今日……お肉の特売日なのよ。えーっと……7時までだから今から行けばギリ間に合うかも」
「あと15分しか無いじゃん。ここから特売スーパーまで結構遠いし諦めたら?」
「舐めたこと言ってんじゃ無いわよ!お肉の安売りなんて滅多に無いじゃない!レイナ、私に身体強化かけて。走って買ってくる」
そこまでしてか……別に良いけど
僕が身体強化をかけたら、コトリは急いでスーパーに行った。
あいつ、財布持ってなくね?
「まぁ良いか。リエ、今日の晩飯何にする?」
「拙者はカレーか肉じゃががいいでござるな!デュフフ」
「OKどっちもそんなに材料変わらないな。肉以外はあるものでいけるだろ。コトリが帰ってくるまで他の食材調理しとくか……」
そう思ってキッチンに向かおうとした時、
師匠が僕たちを呼んだ。
「おーい!2人とも、ちょっとこっちを手伝っておくれ!」
「はいはい、何ですか?」
「この本たちをあの棚に片付けたいんじゃが、ワシじゃ手が届かんくてな。下の段はワシがやるから上は主らに頼む」
見ると、数百冊にも及ぶ本が山積みになっていた。本棚は高く、師匠はどうやら1段目までしか届かないらしい。
「分かりました。リエは魔法で1番上を頼む。僕は2段目をやるから」
「了解でありますぞ!」
そうして片付けること20分ほど……
案外早く片付きおわり、3人でチョコレートを食べていた。
「ふぅ……というかよく考えたら師匠も魔法使えるんだから1人でできたはずじゃ?」
「……」
「この人、初めから手伝わせる為だったんだな」
「なんですと!許せませんなそれは」
「ええい!うるさいワイ!年寄りは敬えぃ!」
「そもそも、この本たちは一体何なんですか?」
「……研究の一環じゃわい」
「そういえば気になってたんですけど、師匠って何の研究してるんです?」
「何でもええじゃろ、子供が見るもんじゃないわい!」
「おいリエ、そこら辺のやつちょっと開いてみろ」
「了解でござる」
「ヤメローーー!!!!!」
すると、本を開いたリエが興味津々にページを巡り始めた。
「おい、一体何があったんだよ」
「これは……凄いでござる。巨乳から貧乳、熟女からロリまで幅広く対応してるでござるよ!」
「何見てんだよこの変態!」
「はぁ〜。バレてしまっては仕方ないのう。……一緒に見るか?」
「嫌すぎるわ!師匠とエロ本読むとか何の罰ゲームだよ。てかリエもいい加減読むのやめろよ」
「ほお?リエはこういうのがわかるようじゃな。お主はどれが好みじゃ?」
「はい、拙者の好みは……」
どうやらえらく気に入ったようで、リエと師匠が2人して読み始めてしまった。
なんだか僕だけ除け者みたいで嫌なんだが……
「……レイナよ。恥ずかしがることはない。こういうのに興味を持つのも修行の一環じゃ」
「んなわけあるか!大体もうすぐコトリも帰ってくるんだし程々にしといて下さい!」
しかし、あまりに嬉しそうに読むので少し気になってしまう。
「まったく……読みたいと顔にでとるぞ?ほれ、これでも読めい」
「ん……」
パッと渡されたエロ本を流れで素直に読み始める。
「へぇ…意外と……ふぅ…ん」
そのまま少しだけ読んでいたら後ろに気配を感じた。
「ねぇ……何読んでるの?レイナ」
「こ、コトリ……帰ってたんだ。お肉は買えた?」
いつの間にやら師匠とリエはいなくなっていた。コトリは全て知っている上で質問をしてきている。だって目が冷たいもん。
「お財布忘れたから買えなかったわ。それより、何読んでたの?」
「えーっと……これは……」
「な、に、読んでたの?」
「エロ本です……」
「レイナ、1週間晩飯抜きね」
「えっ……死んじゃう」
「抜きね」
「……はい」
コトリが部屋から出て行き、暫くして師匠とリエが本棚の裏から出てきた。
「ふぅ……まったくレイナよ。程々にしておけと言ったのに」
「お前らのせいだろうが!」
「そんなことより、お主ら良い加減戻らんか。また怪しまれるぞ?」
「グッ……師匠が正論言ってるの腹立つ……」
仕方なくレイナとリエは自分達の部屋に戻ったのだった。
「……ふぅ、やれやれ行ったか。それにしてもよかったわい。見られたのがエロ本の方で……こっちの研究は……まだあやつらには見せれんからのう……」
ミツナはそう呟くき、物陰でニヤリと笑った。