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第十六話先代賢者



「それでは自己紹介からいこうか、今代の勇者と聖騎士よ。私は先代の賢者であるミツナだ」


ミツナさんは顔に紅葉の跡を残しながら厳格さを必死に出そうとしている。


「えーっと……今代の勇者レイナ……です」


「……チッ、今代の聖騎士コトリ」


コトリは先程のことをまだ怒っており大分不機嫌そうだ。

というかまぁ当たり前だ。よくこの男初対面であんなセクハラ発言言ったなオイ。しかもこっちは12歳だから、一歩間違えばロリコンだろ。

しかし、ミツナはコトリの様子に眉を顰めている。


「やれやれ、聖騎士コトリよ。主は戦いの場でもその様に怒りで我を忘れるのか?」


「あ?」


「おっぱいのサイズを聞かれたくらいで怒り、理性を失っていてはこれから先やっていけんと言っておるのだ」


「あ?」


「良いか?わしは主が自分の感情をどれだけコントロール出来るかテストしたのじゃ。決して下心とかあったわけではない。あわよくばその乳揉ませてもらえないかなとかなんぞ微塵も……」


「思ってんだろうがこのエロじじい!!!本当にこんなのが賢者なの!?こんなのから色々教わるの!?ありえない……田舎帰ろ」


「コトリ……僕もそれが良いと思う」


「ちょっと勇者君!?そこは引き止めてよ!」


「大体……本当にテストのつもりなら僕にもするでしょ。正直さっきのはちょっと……かなり引きましたよ」


「うっ……」


「はぁ……そもそもあんたは何を教えてくれるんですか」


「ふむ、わしは主らに魔法を教えてやろう」


「いや、僕勇者なんでどっちかというと肉弾戦の方に重きを置きたいんですけど」


「私に関しては聖騎士だから魔法ひとつも使えないしね」


「ぐぬぬ……それでは肉弾戦の仕方を教えてやろう」


「と言われてもなぁ……ミツナさんって賢者でしょ?魔法以外の方法で戦えるの?」


「やれやれ……主らはもしかして、賢者は魔法だけ、聖騎士は肉弾戦だけ、聖女は回復魔法だけとでも思っておるのか?」


「違うの?」


「まだまだじゃのう……よし、表に出ろ。わしが稽古をつけてやろう」


僕達はミツナさんに道場へ連れられていかれた。道場といっても、ミツナさんが私有する土地らしく、子供や武術を学びたいと思っている人に向けて作った施設で無料開放しているとか。


「へー意外と良い理由じゃない。私はてっきり女の子目当てかと……」


「………」


「ねぇ……何で黙るの?ちょっと?」


「さて……と、ここでよいかの。お主ら、どんな方法でもええ。わしに攻撃を当ててみよ」


「この野郎話を強制的に終わらせやがった」


コトリは納得がいがなさそうだったが、まあ良い。それより今は……


「え……当てるだけで良いんですか?」


「無論じゃ」


それを聞いて僕もコトリも少し申し訳なく思った。いくら賢者とはいえ全盛期だったのはもう100年も前の話。ここで僕達が戦ったら勝つのは目に見えている。

魔法を使われたら流石に分からないが、肉弾戦でお爺ちゃんに負けるとは思えない。

100歳越えのお爺ちゃんに攻撃するいうのは流石に気が引ける。


「ねぇ……私ちょっとやりにくいんだけど。いくらなんでも全力で殴るのは……」


「さっき全力でビンタしてなかった?」


「殴るのは……別に辛くないわね。全力で殺るわ」


さっきの事を思い出したのか、コトリは殺気を出しながらミツナの元まで走っていった。

その勢いを殺さず先程以上の速度とパワーで拳を繰り出す。


「くたばれクソジジイ!」


しかし、残念ながらパンチは空を切り、肝心のミツナさんは殆どその場から動かずに避けてみせた。


「なっ!……まだまだ!」


コトリは何度もパンチを喰らわせようと拳を出すが、そのどれもがギリギリのところでかわされてしまう。


「ちょ!見てないでレイナも手伝ってよ」


「あっ、うん」


あまりに華麗に避けるからつい見とれてしまっていたのだ。

しかし、僕が加勢しても案の定ミツナさんは余裕の笑みで避け続ける。

10分程それを繰り返したところで僕達はデコピンされて終わった。


「イテテ……お、おかしくない?100歳越えた老人の動きじゃないんだけど」


「フォッフォッフォッ、何故負けたか知りたいか?」


「……まぁ、何となくわかるけど」


「ふむ、そっちの勇者君は気づいている様じゃの。聖騎士ちゃんに教えてあげなさい」


「ん?どういう事よ。訳わかんないわよ。何で私達の方が身体能力高いのに負けちゃったの?」


「さっきのを見て思ったけど、僕達の動きには無駄が多いんだ。その上正しい形で攻撃出来てないから折角の威力も活かしきれてない」


「その通りじゃ。お主らは確かに身体能力だけならわしよりも上じゃが、その力を使いきれていない。だから容易に攻撃の先読みが出来るのじゃ」


「なるほど……私達の攻撃が当たらなかったのはそういうわけか」


「たとえ近接戦闘を行わない職業でも相手の攻撃を見切る技術で自衛出来無ければ戦場で生き残ることはできんからな。賢者のわしや聖女もこれくらいは戦えんといかんのじゃ」


「分かったわ。つまり、私達がまずすることは……」


「そう、体の使い方を学ぶ事。その体になってまだあまり時間も経っておらんのじゃろう?見切りや正しいフォームもそうじゃが、まずは自分自身の最高速度に意識が追いつける様にならねばならん」


「たしかに……この間全力で走って転んじゃったしね」


「そうと決まれば特訓よ!爺さん、どうすれば良いの?」


「師匠と呼べい!聖騎士ちゃんよ」


「それなら私達のことも名前で呼びなさいよ」


「む……仕方ないのう。レイナよ、コトリよ、以後はわしの事は師匠と呼ぶのじゃぞ?」


「はい」


「分かったわ」


「よければミツナお兄ちゃんと呼んでくれても……」


「誰が呼ぶか!」


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