第十四話旅立ち
村から勇者と聖騎士が出たとあって、その日は村中お祭り騒ぎだった。
すぐに役所に報告されて、翌日には馬車が来た。
村の前でその様子を見ていたら、中から偉そうな人が出てくる。
「勇者様と聖騎士様はおられるか?」
「はい、僕が勇者です」
「私が聖騎士です」
そう言うと役人さんは少し驚いた顔をして直ぐに調子を戻した。
「これは失礼しました。念のためステータスの確認を……」
そう言われたので、僕とコトリはそれぞれステータスを提示した。
「間違いありませんね……それではお荷物の方はよろしいですか?宜しければ馬車にお乗りください」
そう言われて僕達が馬車に乗ろうとした時……
「なぁ!おい待てよ!」
沢山の野次馬の中から3人の人間が出てきた。
1人はココア……もう2人は両親だ。
「おい、……お前が居なくなったら俺らどうやって生活してきゃあ良いんだよ!そんなとこ行くなレイナ。戻って俺達と暮らそう。お前も家族と一緒が良いだろ?」
「……あのさ、今だから言うけど何が家族だよ。どれだけの時間僕を裏切ってたと思ってんだよ」
「え…いや、何を言って……」
「良いからそういうの。正直父さんの前で気づかないフリをするの大変だったんだけど」
「やめなさい!人様の前で恥ずかしいことを言うのは……」
「人に聞かれて恥ずかしい事をしたのは父さんでしょ?そんなにあの女の人が好きならさっさとくっつけば?」
それを聞いて母さんはとても悲しそうな顔をして崩れ落ちた。
「あなた……そんな事を」
「う、うるさい!お前はレイナの方を信じるのか?俺がそんな男だと思うのか!?」
「思うわよ!だって……私が知らない香水が……ベッドルームに香って……」
そこからは酷かった。
出るわ出るわの浮気の証拠。
こりゃあ酷い、よく今までバレていないと思っていたな……
暫くすると父さんは場の状況に耐えられなくって逃げ出した。
「ねぇ!母さんとなら一瞬に暮らしてくれるわよね?レイナ?」
「いや、母さん働かないじゃん。それどころか毎日のように家のお金食い潰して……そのお金は誰が稼いでると思ってるの?」
「うっ……分かったわ。レイナが帰ってきたら私も働くから」
「ねぇ、本気でそう思ってるなら僕が居なくても働けるでしょ。そうすりゃいいじゃん。僕はやる事があるからね、さよなら」
「うわァァァ!!!」
母さんと父さんと同じように逃げ出した。今度は泣きながら……
「まったく……良い歳した大人がちょっと口喧嘩に負けたくらいで泣いちゃってみっともない」
そして、最後に残ったのはココアだ。
「……レイナ、コトリ。まさか君ら2人が勇者パーティーを組んじゃうなんて……その、おめでとう」
「うん。ありがとう」
「あの……さ、迷惑かもしれないけど。いつか……いつか俺も」
「大丈夫、心配しないで。いつか迎えに行くから」
「……えっ?」
「君が困っていたら必ず助けに行く。だからココア、君はお姉さんを幸せにしてあげて」
「……うん」
少し悲しそうな顔をしてココアは頷いた。
こうして、僕達は馬車に乗ったのだ。
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………………
……
王都に向かう馬車の途中、コトリが僕に聞いてきた。
「ねぇ、最後にココアが言おうとしてたことって……」
「うん。でもダメだよ。僕はコトリを守ると決めたけど、僕にココアは守れない。もし着いてきたらいつかどこかで死んじゃうよ」
「そう……ね。ココアの『相続者』は戦闘系の職業ではなさそうだものね……」
「それに、ココアは守る相手がいるだろ?」
「お姉さんね。たしかにそうだわ…ココアが私達の旅に着いてきたらお姉さん1人になっちゃうものね」
「そう、だから冷たくしちゃったけど……これで良かったんだよ」
「……でも流石に冷たすぎたんじゃ無い?」
そう言ってコトリがレイナの方を見るとレイナは顔を隠してうずくまっていた。
「ハハハ……変だなぁ。未練なんて無いと思ってたのに……友達と…別れちゃうくらいで泣くなんて……僕もみっともないなぁ」
コトリはレイナをそっと抱きしめた。