第十二話聖騎士誕生
ようやく一通りの仕事が終わり一息つく。
切り株に座って優雅にコーヒーを淹れる……
すると背後から気配を感じた。
「わっ!」
「うわぁ!!!」
「アハハハ、びっくりした?レイナ」
「びっくりしたわ!やめろよ。ちょっとコーヒーが溢れちゃったじゃ無いか。せっかく優雅に飲もうとしてたのに……」
「それ全然優雅じゃ無いよ。椅子に座れよ」
この男の名前はココア。僕とコトリの幼馴染で悪戯が好きな奴だ。でも悪い奴でもない。家が貧乏で病気の姉と二人暮らしだが、仲良くやっているらしい。
「まあ良いけどさ。それよりどうだった?職業は」
「俺?まだだよ。明日分かるからな。今日はコトリの日だ。そう言うお前こそどうだったんだよ。昨日だろ?」
「うん。よくぞ聞いてくれました。なんとね……ユニーク職業だった!」
「へぇ〜。なんて職業?」
「『相続者』だってさ」
「……どういう職業?」
「分かんない」
「おい!自分の職業が分かんないとか大丈夫なのかよー」
「まぁまぁ、良いじゃ無いか、俺は姉さんと暮らせたらそれ以外は何も要らないもん」
「ふーん……まぁ良いけど。お前の姉さんって確か……」
「うん、剣士だよ。剣がめちゃくちゃ上手いんだぁ。本当は俺も姉さんと同じがよかったんだけどね」
「お前ってちょっとシスコンだよな」
「どこらへんが!?」
そんな会話をしているとコトリが泣きながらこちらにやってきた。
「お、おいおいどうしたんだよ」
「……私聖騎士だった」
「はぁ?お前が聖騎士?」
そういうと彼女は自分のステータスから職業の欄を見せてきた。
するとそこには本当に聖騎士と書いてあった。
「……本当だ」
「ねぇ!私どうしたら良いの!?怖いよ……聖騎士って戦わなくちゃいけないんでしょ……勇者のパーティーに入れられて、魔王討伐しなくちゃならないんでしょ!」
「……………」
「ねぇ!なんとか言ってよ!」
「ごめん」
「馬鹿!」
そう言うとコトリは俺の頬を思いっきり引っ叩いた。いつもなら頬が少し赤くなるくらいだが、聖騎士になった彼女の力は凄まじく、僕は遥か遠くまで飛ばされた。
「あっ……」
コトリは一瞬申し訳なそうな顔をして、直ぐに涙ぐみ何処かへ走って行った。
「……俺はどうすれば良いの?」
1人残されたココアが非常に気まずそうだった。
………………………………
………………
……
日にちが変わり、僕は布団に包まると昼のことを思い出した。
コトリは僕に職業を教えてくれた。
それも泣きながらだ。
きっと聖騎士なんたコトリはなりたくなかったんだろう。それでも教えてくれたのは僕に助けを求めていたからだ。
なのに僕は何も言ってあげられなかった。
どうして、僕はあの時助けになることを言ってあげられなかったのだろう。
後悔の念が今更押し寄せてきて罪悪感すら感じられた。
「職業……ハッ!そういや僕もう職業を手に入れたはずだよな?どうなったんだ……」
そう思ってステータスを開く。
するとそこに書かれていた文字は……
「ゆ、勇者?」