第十話国
勇者パーティーのパレードが終わり、前代未聞の超大型結界が張られてから3日。
国の上層部は議論を交わしていた。
「あの結界を使えるのは伝説にある大聖女のみです!効果範囲から考えて使用されたのはこの王城内で間違いありません!」
「しかし……その時ヒナタ様…おっと失礼、聖女様もこの王城の近くにおられたのですからあの方が使われたのでは?」
「いえ、それはあり得ません。聖女が使える魔法はあくまで特大型結界までです。あの結界の半径は5キロに達します。特大型結果ではまず無理です。魔法で強化した超大型結界でないとあの大きさにはなりません」
「いやいや、そこはヒナタ様が天才だったのであろう?」
「……そもそも本人に確認してきましたが使っていないと言っておりました」
本当は確認などしてないのだが、この役人は王女ヒナタな聖女では無いと知る数少ない人物だったので確認を取るまでもなかったのだ。
「ふむ……では何者であろうな」
「……地下牢より1人男が逃げ出しました。名前はソラです」
「…今は超大型結界の話であろう?」
「その男は狙い澄ましたように騒ぎが起こったタイミングで牢から抜け出し、監視が来るまでの10分の間に逃走を成功させた」
「そんなの偶然だ偶然。何かの拍子にたまたま壊れた手錠をとって牢から抜け出し、偶然結界が張られたタイミングで抜け出しただけだ」
「ですが……」
「うるさい!どうでも良いわ!第一ソイツは男なんだろう?大聖女であるはずが無いわ!今回の騒動は聖女ヒナタ様が誤って結界を使ってしまったのだ!」
その決が出されて会議は終了してしまった。
どうやら殆どの者が聖女がやった事だと本気で思っているようだ。
ごく一部の真実に迫る者達は残念ながら少数派で、不満を残しながらもこれ以上話は続くことはなかった。
しかし、ここで新たな情報が入ってくる。
「失礼します!会議中なのは承知の上ですが、緊急事態です」
「……何だ?何が起きたのだ」
「先代聖騎士の……先代聖騎士のヒナコ様が城内で何者かに殺されました!」
「何だと!?ヒナコ様が!?」
「暗殺か?」
「そのようです。しかし……ヒナコ様は剣を握って亡くなられておりました。つまり、暗殺者と応戦したのだと思われます」
「ちょ、ちょっと待て……全盛期を過ぎたとはいえ、聖騎士であるヒナコ様を正面から殺した者がいるということか!?」
「はい……この者の実力は計り知れませんが……1人疑わしき者がいます」
「誰だ!」
「先程話に出ていたソラです。あの者は話の内容からすると認識阻害の魔法が使えたらしい……そしてその時城内に都合よくいた」
「という事は!」
「ヒナコ様はソラから不意打ちで受けたダメージに苦しみながら応戦しましたが、残念ながら亡くなってしまったのでは無いかと」
「ぐぬぬ……今すぐ罪人ソラを指名手配しろ!多額の懸賞金をかけてな!」
こうしてソラは先代聖騎士を殺した大罪人として本人も知らない内に指名手配されたのだった。