表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

閑話 従者のひとりごと

従者視点の番外編となります。

2話の後の話です。

「蓮、一緒にお茶しましょう?」

珍しい、お嬢様が就寝前にお茶を飲みたがるなんて。

ただ今22時。学校から帰ってきたお嬢様はいつもより上機嫌だった。

「いいですけど…、どうしました?冷えましたか?」

「明日からのことを考えたら目が冴えちゃって…」

「まるで遠足に行く前日の小学生みたいですね。それならお茶よりもホットミルクにしましょうか。」

思わず笑ってしまった。今日は特別にはちみつも入れよう。

「ちょっと、なに笑っているのよ!あ、はちみつ入りだ!」

「今日は特別ですよ。春とはいえ夜はまだ冷えますからね、あまり夜更かししてはいけませんよ。」

「わかってる、夜更かしはお肌にも悪いしね。このホットミルクを飲み終わったら寝るわ。」

ホットミルクを一口飲んでからはちみつ最高!とお嬢様が叫んでいる。まだテンションは高めらしい。

「お嬢様、あまり騒いでは余計に眠れなくなりますよ。何より近所迷惑です。」

「ここら辺には他に家なんてないわ。…まぁけどそうね、両親がきたら面倒くさいことになるわね。」

「わかっていただけて何よりです。」

「気を付けるわ。蓮、1日お疲れ様。あなたもリラックスしていいのよ。一緒にホットミルク飲みましょう?」

「ではお言葉に甘えて、いただきます。」

みやびの口から「お疲れ様」という言葉が出たので、従者の蓮から家族の蓮になる。

「みやび、眠れそうか?」

「体がポカポカしてきていい感じだわ。・・・ねぇ、蓮。」

「ん?」

「…みやびポンコツ化計画、サポートしてくれるよね?」

不安そうに瞳が揺れている。まさか俺が協力しないとでも思っているのだろうか。

「そんなぶっ飛んだことを言い始めるみやびのサポートなんて、俺にしかできないからな。」

「もう!そんな言い方しなくてもいいじゃない!…蓮ありがとう。」

よかった、笑ってくれた。みやびはやっぱり笑顔がよく似合う。

「さぁ、そろそろ寝る時間だ。歯磨いてから寝るんだぞ。」

「蓮もちゃんと歯磨きするのよ。明日寝坊しちゃだめだからね。」

「それはこっちのセリフだ。」

本当にそろそろ部屋から出ないといけない。こんな時間にみやびの部屋に居るのがバレたらお互いにまずい。

「温かくして寝るんだぞ。」

「うん。蓮、おやすみなさい。」

「おやすみなさい、みやび。良い夢を。」


みやびの部屋を出る。俺も自分の部屋に戻ろう。

無駄に広い屋敷を歩きながら今日の出来事を振り返る。みやびが弁当を忘れて怒っていたことやカフェテリアでケーキを美味しそうに食べていたこと、さっき嬉しそうに飲んでいたホットミルク。

けど一番は…

「乙女ゲームねぇ…」

前世の記憶があるというのは別に驚きはしなかった。みやびは幼い頃から人の感情に機敏で相手を受け流すことに長けていた。いくら社交場に出ることが多くとも幼い子どもが出来る行動ではない。前世の記憶があると聞いてむしろ納得したくらいだ。

ただ、この世界が乙女ゲームだというのはさすがに信じがたい。みやびは嘘をつかない子だから本気で言っているのだろうけど。

「俺達はキャラクターじゃないよ、みやび。」

俺達は自分の意思で動いている。だからみやびもポンコツじゃないんだよ。この事実にあの子はいつ気が付くだろうか。

ポンコツ化計画を楽しそうに話していたし、この調子だと気が付くまでだいぶかかりそうだ。

「まぁ、久々に楽しそうな姿が見られたしいいか。」

学校でみやびが楽しそうにするなんて滅多にないのだから。しばらく一緒に付き合おう。どんなポンコツになる気なのか些か不安なところもあるが、まぁみやびなら大丈夫だろう。少なくとも九条の評判を下げるようなことはしないはずだ。

やっと自分の部屋に着いたことだし、俺もそろそろ寝よう。ホットミルクの効果なのか、色々あって疲れていたからなのかわからないがさっきから眠たくてしょうがない。ベッドに入ったら瞼が落ちてきた。

あぁ、ひとつみやびに伝え忘れたな…

「俺が傍にいるからな…」

俺のひとりごとは夢の中に消えていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ