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5話 さっそく英語で自己紹介です

「店長、礼拝から戻りました」


 杏奈と話していたとき、メガネをかけた大人しそうな女性がカフェの入ってきた。まだ若い女性のようで、肌も髪も艶々である。太い三つ編みやそばかすの浮いた頬はいかにも田舎娘と言った雰囲気で、堀の深い西洋風の顔つきでも警戒心を抱かせなかった。


「あら、だあれ?」

「この人も私と同じように別の世界から来たのよ」


 田舎娘は私を見て、首を傾ける。私が自己紹介をする前に杏奈先生が英語で事情を話した。すでに杏奈先生という存在が馴染んでいるせいか、田舎娘は特に私を疑わず、すんなり受け入れたようだ。


「この子はアナっっていうの。このカフェのバイト。普段は農業をやってる子だけど、週3回だけ来てくれるのね」

「アナです。あなたはお名前はなんと言うの?」

「藤崎真澄です」


 私は英語で自己紹介をした。「I'm〜」と自己紹介。「my name is〜」は教科書英語的というか、少々堅苦しいので、ここでは使わないでおこう。


「へぇ。マスミって名前なのね」

「そう。っていうか、私も帰れないみたいだし、どうしようって感じです」


 アナの素朴な田舎娘風雰囲気のせいか、ついつい気が抜けて愚痴が漏れる。


「まぁ、とりあえず住居は私とカフェの2階で暮らせばいいわ」

「本当ですか?」


 杏奈先生の提案に私はちょっと涙が出そうである。


一緒に働いていた時は、こんな優しい人だとは知らなかった。


 また明日にでも村役場に行って色々と続きする事になると杏奈が説明。


「手続き? そんなのあるんですか…」


 現実的な話題に私が肩の荷が重い。


「大丈夫よ」

「店長は本屋のロブが引き受け人なんですよね?」

「そうそう。ロブはお爺さんなんだけど、先祖が転移者みたいで、こういう時のために『転移者保護』っていう役所の役割があるの。一応役所からお金は出るみたい。まあ、あとでロブに相談するから大丈夫よ」


 どうもこの世界では転移者が根付いているようで、さほどひどい目に合わないようである。私は安堵し、ホッと一息つく。


「でも、これからどうしよう…」


 そう思うと重い気分しか感じない。元来とても慎重な性格で最悪な事ばかり考えてしまう。


「そんな気を落とさないで。そうだ、この村を案内しましょうか?」

「え?」


 アナの提案に、私は顔をあげる。


「そうね。アナと二人で行ってらっしいよ」

「良いんですか?」


 そう答えたのはアナだった。


「ええ。どうせ今日はお客さん来ないでしょ」

「じゃあ、マスミ、行きましょうか?」


 この状況下で断れず事も出来ず、私は頷く事しかできなかった。

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