表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移先が殺人事件だらけの小さな村だった〜田舎パンとマリトッツォ殺人事件〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/48

41話 新たな王子様

 ロブは、私の首をつかんだ、老人とはいえ、すごい力だ。でもこんなヤツに殺されるわけにはいかない。


 私はめちゃくちゃに暴れて、ロブに腕や手を思いっきり噛みついた。女が噛み付いただけでもロブはダメージを受けて怯む。


「このクソ女!」


 その隙にどうにか彼の腕から逃げる。

 しかし再び彼に捕まり、あっという間に木にロープで縛り付けられてしまう。身動きは全く出来ず、狼のような顔のロブに見下ろされる。


「あなた、日本やアメリカの小説をパクって荒稼ぎしていたでしょ?」


 絶対絶命ではあるが、自分の推理があっているかどうかは知りたかった。


「知ってたのかよ! ますます生かしてはおけねぇな」


 ロブは吐き捨てるようの言った。


「なんでこんな事をしていたの?」


 まあ、予想はつくが一応聞いた。身体中が痛いわけだが、最後に自分の推理が間違ってなかった事かは気になる。


 ロブはグズグズと愚痴のようにこうなった経緯を話し始めた。


 もともと作家だったという彼は、芽が出ず書店を営むようになる。しかしこの小さな村での経営も行き詰まり、小説をパクる事を思い立つ。それもこの世界の小説ではなく、別の世界からパクる事を思いつく。


 商店街町の共同のゴミ捨て場で杏奈先生のカフェのゴミをみると、そこには日本という国から仕入れたパンやお菓子を売っていた事を知り、自分も似たような事をやってもバレないだろうと考えた。幸い田舎であるこの村。王都で人気があるような小説の情報なども入っていないだろうという計算も働く。


「でもどうやってあっちの世界に行ったのよ?」

「それはあの占い師に頼んだのさ。あの女は魔術師の血筋だった事を思い出し、何か覚えていないか聞いたわけだ」


 ロブは全く罪悪感を抱いていないようだ。こんな事がバレてもちょっとドヤ顔である。


「まあ、あのバアアの術は不安定でな。お陰でアンナも行き来していたし、お前のようなろくでも女もくる!」

「そんな事言われたって…」


 逆ギレされたが、自分のせいだとはどうしても思えない。


「術って何? 動物を使って変な儀式をしてるの?」

「ああ。でももうこの村には霊性の高いマリエは全部殺してしまったよ」

「酷い…」

「酷いもんか! むしろアイツらがみなくなって儀式が出来ないとあの占い師が泣きついてきやがった!」


 それで魔老婆とロブは揉めたのか。最初は印税を二人で仲良く山分けしていたが、段々と魔老婆の要求が激しくなったと叫ぶように言っていた。杏奈先生もパクりをしていた事を知られ、印税をいくらかをよこせと脅して来たという。


「本当なの?」

「ああ」


 それについては推理していなかった。てっきり杏奈先生とロブは共謀して揉めたのとばかり思い込んでいた。まさかこんなパクリ行為をしている男を脅すなんて。改めて杏奈の悪どさにため息が出ると同時に、彼女に抱いていた微かな同情心も消えてしまった。


「本当に酷いわね…。火事も嫌がらせもあなたね?」

「ああ、転移者なんて全員俺の商売を邪魔するものだ! 消すしかないだろ」


 犯人も杏奈先生も本当に酷いとしか言いようがない。


 私も日本からこに世界にい来たわけだが、小説をパクって売ろうとは思いつかない。杏奈先生のカフェの料理は彼女の料理スキルのおかげで楽しめた所もある。一応、試行錯誤のあとが彼女の手帳から手帳から読み取れる部分もある。


 しかし、ロブについては完全なパクリである。それにこうした異世界転移のライトノベルの主人公達は、誰もそんな事はしていなかったと思う。意外とライトノベルの主人公は品行方正なのか、ロブが極悪過ぎるのかはわからないが。


「なんとで言えよ! さあ、今度はお前の番だ! 死んでもらおう」


 ロブは近づき、再び私に首を絞めようしてきた。


「うっ…」


 さっきみたいに噛み付けば良いが、身体は縛りつけられて動かないない。頭がクラクラとし、あらゆる感覚が鈍くなる。私はもう死ぬかもしれない。この村に来てからのあらゆる光景が頭に走馬灯の様に浮かぶ。


 何故かあの硬くて酸味の強い黒いパンの事ばかり思い出す。もう一度トロトロに解けた濃いチーズやローストビーフを乗せて食べたい。青菜を挟んでもいいし、ベリー類のジュースペーストを塗っても美味しい。


 不味いと思っていたのに、いつのまにか私の血や肉になっていてくれたのかもしれない。それにあのパンは腹持ちがいいし、この村の来てから便秘や吹き出物もできていない。健康に良いというのは本当だったのかもしれない。食事をした時のみんなの笑顔も浮かぶ。みんなとの食事は楽しかった。そんな下らない事ばかり思い出すが、意識はもう薄れかけている。


 もう意識が抜ける。ダメだ。そう思いかけた瞬間だった。


「マスミから離れろ!」


 夢かと思った。いつものように黒い服を着た牧師さんがロブを捕まえて一発殴っていた。突然首が楽になり、呼吸ができる。


「現行犯で逮捕するぞ!」


 いつのまにか保安官のアランも現れ、ロブを手錠にかけた。敗北を悟ったロブは大声で泣き叫んで崩れれ落ちる。


「マスミ、大丈夫かい」

「うぅ…。クラクラするけど、大丈夫…」


 牧師さんは、私のの身体の縄を解く。まだあとこちら身体は痛いし、頭もぼんやりとするが、どうやら助かった事がわかる。他にもリリーやジャスミン、クラリッサまでが心配して駆けつけて来た。一時はどうなる事かと思ったが、助かったようだ。


「私、助かった…?」

「ええ、よく頑張った!」


 その牧師さんの笑顔があまりにも眩しくて、私の心はキュンキュンと音を立てて踊っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ