3話 英語があるんですか? 日本語も???
「Before I formed you in the belly, I knew you. Before you came forth out of the womb, I sanctified you. I have appointed you a prophet to the nations."」
英語のメモだった!
ようやく、この世界で自分と関係のあるものを見つけて涙が出そうである。
メモをそっと手に取り、よく読む。しかし、意味がわかるが何が言いたいのかさっぱりわからない。
prophetやsanctifiedという単語は日常生活の単語でも頻出でも無い。prophetは神の言葉を預かる預言者、sanctifiedは聖別されたとか清められたという意味だ。
もしかしたら宗教関係?
このメモは聖書の言葉ではないか?
聖書は日本語で読んだ事はないが、英語学習の為に使ったことがある。ロマンス小説のヒロインがクリスチャンで聖書を引用した台詞がよくあったからだが。お陰でsacrificeやredemptionやarkなどの難解な単語も楽々暗記できた記憶がある。
英語があり聖書がある世界だとしたら、そこまでファンシーな世界でも無いかもしれない。
私は少しホッとし、お守りのように聖書の言葉が書かれたこのメモを丁寧にたたんで、ポケットにしまった。
気持ちは不安に傾きかけたが、この事で少し希望が出てきた。とりあえず、ここにいても仕方ない。誰かを探すのが良いだろう。
牧場の周りをずっと歩いていたら、家や商店の施設が遠くに見えた。レンガでできた重厚な雰囲気な建物が多く、やっぱり日本ではないようである。その遠くの方には山が見える。谷間にある集落だろう。
ずっと歩き続けて、足が痛かったが仕方ない。家や商店施設のあるところまで頑張って歩いた。
商店の看板はどれも英語で書かれていてホッとした。パン屋、書店、雑貨店のようだ。どうやら営業していないようで誰も人がいない。
静かな集落のようだ。石畳みの道は歩きやすい。さっきまでの畦道より数倍歩きやすく感じる。
異世界といっても英語を使っているようであるので、私の心はさほど暗くなっていない。動機は不純ではあったが、やっぱり英語を習得しておいて良かったと思う。人がいないのは、不安ではあるが。
「は? 日本語?」