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異世界転移先が殺人事件だらけの小さな村だった〜田舎パンとマリトッツォ殺人事件〜  作者: 地野千塩


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36話 失恋みたいです

「腕を動かしたりしましたか?」


 ジェイク様は私の火傷を負った右腕を見て顔を顰める。


「実は牧師館に嫌がらせがあって掃除をしてたんです。重い物持ったのが良くなかったのかな?」

「嫌がらせ?何があったんですか?」


 ジェイク様は、その事について驚き詳細をきいてきた。今朝の嫌がらせの状況を話す。さすがに『トリップ!』の事はジェイク様に話して良いか迷い、口をつむぐ。


「そんな事が。まぁ、私もあの占い師が嫌がらせに関わっていると思いますよ」

「それは何故ですか?」


 私はジェイク様の美しい横顔を眺めながら、つぶやく。今はそれどころでも無いはずなのに、やっぱりジェイク様の顔は美しい。


「私はあの占い師がアンナを尾行しているのを見た事があるんだよ。なんでそんな事をしていたのかはわからないが、怪しい行動をしていたのは事実だ」


 あの子供達の証言はどうやら事実らしい。疑っていたわけでは無いが、子供だからと少し疑っているのも事実だった。


「まあ、アンナは可哀想だ。確かにアンナについては疑問点はあるが、だからって死んで良いわけじゃないよ」


 そう言ってジェイク様は、私の腕の治療に取り掛かる相変わらず免疫のない私はドギマギしてしまう。これで免疫力が増せば良いのだが。


「そういえば事件を調査しているんだってね。村でちょっと噂になってたよ」


 ジェイク様の耳にまでその事が知られていて恥ずかしい。しかし、ちょっと質問しても良いだろうとも思う。


「ジェイクは犯人は誰だと思う?色々と手がかりは掴めてきたけど、さっぱりよ」

「そうだなぁ。意外な人物かも知れないな。私はパン屋のミッキーに1票入れるよ。動機はパンの事で対立したから」


 こうして笑顔で話すジェイクは完全に面白がっている。村で何度も殺人事件があったから慣れてしまっているのだろうが、少し露悪的ではある。


 まあ、中身まで完璧なイケメンはいないのかも知れない


「でもミッキーは殺人なんてしたら、好きなパン作りが出来ない可能性もあるのよ。そんなリスク犯す?」

「それは全くそうだ。じゃあ、リリーだ。動機は男の取り合い」

「男ってあなた?」


 ここでタイミングよく治療が終わる。


「まぁ、アンナが私の事を好きだという事は気づいてたよ」


 鈍そうに見えても杏奈先生の気持ちには気づいていたようだ。


「でも私は医者として一生従事したいし、正直なところ今は女性に興味は無い。恋愛自体に興味がないんだ」


 そのセリフは自分の頭も殴られたような気分にさせた。免疫力も大幅に低下しそうだが、私は薄く微笑み本心を悟らせないようにした。


 医者と冴えない女子のロマンス小説は人気だったが、実際は女性の事を一日中考えている医者は少ないのかもしれない。女の事を考える隙があまり無いようである。というか逆に女や恋愛の事ばかり考えている医者が実際にいたらちょっと気持ち悪いかもしれない。彼はこのままで良いんじゃないかと納得するしかない。


「そう言った色恋のもつれで杏奈先生とトラブルなかった?」

「うん、こう言ったらアンナは渋々納得していたよ」


 確かに杏奈先生の気持ちはわかる。ここで別の女が出てきたら余計にショックだが、「恋愛に興味がない」という理由で振られるのなら仕方ないと渋々諦められる気がする。自分も今そんな心境である。


 ・杏奈先生とジェイク様との間にトラブルなし


 医院から出るとハッキリとわかった事実をメモに書く。


 同時に自分の恋愛も希望が途絶えてしまったわけだが、


 仕方ない。自分は肉食女子ではないし、無理矢理アタックする事もできなだろう。


 失恋が確定してしまったわけだが、気持ちがスッキリとしていた。やはりイケメンは遠くで見ている方が良いのかも知れない。


 何故かかたいしてイケメンでない牧師さんの笑顔が心に浮かんだ。突然の事で私は戸惑う事しか出来なかった。

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