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異世界転移先が殺人事件だらけの小さな村だった〜田舎パンとマリトッツォ殺人事件〜  作者: 地野千塩


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35話 証拠を探さないと

 昼過ぎ、私は教会からジェイクの医院に向かった。牧師さんは明日教会でチャリティバザーのイベントをする為、その準備で忙しいのだと言う。ミシェルはアビーとジーンに勉強を教えなければならないと言う事で一人で行くことになった。


 医院の待合室には、すでに先客がいた。クラリッサだった。ハチの刺された患者がいるようでしばらく待たされるという話だった。


「今朝急に心臓がドキドキし始めてね。大丈夫かしら?」


 そうは言ってもクラリッサの顔色は悪くは見えなかった。昨日のパンケーキのせいで、美味しいスイーツの欲については収まったらしい。今はプラムと一緒にジュースペーストの改良を楽しんでいるという話をニコニコしながら語っていた。


「そういえばマスミ、事件については何かわかった?」

「それが全くわからないの」


 今日の嫌がらせの様子や『トリップ!』の憶測なども話す。特に『トリップ!』については、かなり驚いてしばらく呆然としていた。


「『カフェ探偵アン』も作者がわからないし、一体何が何だがですよ」

「まぁ…」


 クラリッサはしばらく黙っていたが、意を決したように話し始めた。


「実は『カフェ探偵アン』の作者は私なの…」

「え!? 嘘でしょ」


 ここが医院の待合室だと忘れて大きな声が出てしまう。まあ、私とクラリッサ以外はいないわけだから良いわけだが。


「ええ。ミステリの公募が王都の出版社であったから、アンナをモデルに書いたらデビューが決まって」

「そうだったんですね。クラリッサは多彩ですね」

「でもこの歳で目立つのも嫌だし、作者のプロフィールは伏せて出版してるの。編集者とのやりとりは、間のジャスミンが入っているの。最初は相場より印税を低く抑えられたりしたから、ジャスミンに交渉して貰って助かったわ」


 どうやら日本と比べると出版社も色々とゆるいところがあるようだった。


「しかし『トリップ!』はパクっている可能性もあるのね? ひどいわね。本一冊書くのにそれだけの力がかかるのかわかっていないようね」


 温厚そうなタイプに見えたクラリッサだったが、この話題には明らかにイライラとしていた。


「まあ、本を書くのは大変だけどおかげで老後の楽しみもできたわ。アンナのカフェに通っていたのは取材の為もあったの」

「そうだったんですか。アンナ先生はこの事知らないの?」

「知らないはずよ。ジャスミン、プラム、それと王都の編集者しか知らないと思う」

「『トリップ!』の作者については何か知りませんかね?」

「さあ…。あぁ、でもロブは若い頃作家をしてたらしい」

「嘘…」


 そんな風には見えなかった。私の中でロブは気のいい本屋という印象しかない。


「まあ、堅苦しい歴史小説でデビューしたそうだから、あんまり人気無かった見たいだけど、彼が出版社にパクった作品を持ち込む事は可能ね」


 そう思うとロブの印象はかなり悪くなる。といってもそういう事が可能というだけで証拠はない。それにパクるにしても日本に行かないと難しい。


 ・ロブは何らかの方法で日本に行き来していた?

 ・あるいは杏奈先生と一緒にパクって本を売っていた?


 ノートにそうメモするが、いまいち納得できない。証拠もないし、杏奈先生はともかくロブがそんな事をしていたとは思えない。ただ、そうと仮定するとロブと杏奈先生がトラブルになり、彼女が殺された可能性も十分考えられた。


 私のこの推理をクラリッサに話すが、クラリッサも納得できないようだった。


「あのロブがそんな事をするかしらね? 私が聞いた話では、作家時代のロブはかなりプライド高く作品作りをしていたらしいわよ。パクリはさすがにねぇ…」


 今すぐ日本に戻り、『トリップ!』のネタ元の小説を探したかった。そうすればこの問題ははっきりするが、そんな事は不可能っで自分で考えても意味ない問題であった。つくづく、ロマンス小説しか読まなかった自分の読書生活が嘆かわしい。


「ところで、教会の生活はどう? アビーとジーンはやんちゃだったでしょ」

「ええ。あ、あの子達杏奈先生に事をかなり嫌っていましたけど、村人で杏奈先生の事を嫌っている人がいないか気になりますね」


 今のところ一番怪しいのは、嫌がらせに前科のある魔老婆ではあるし、急遽こんな風に容疑者として浮上したロブも怪しい。しかし、子供達の様子を見ていると、杏奈先生を逆恨みしている第三者の村人がいてもおかしくはない。


「そうねぇ。アンナが解決した事件の関係者はほとんど引っ越してしまったしねぇ…」

「そっか…」

「まあ、ジャスミンもアンナに対していい感情は持っていないでしょう。でもこうして『カフェ探偵アン』も出来上がった事はアンナのお陰だって喜んでいたのよね」

「そうね。彼女にはアリバイもありますからね」


 ちょうどそこで先に治療を受けていた患者が出てくる。役所の職員のようで見た顔であるが、すぐ医院から出て行ってしまう。入れ替わりのようにクラリッサが診療室に入ってきて、待合室には私だけが残される。



 ・やっぱり今のところ怪しいには魔老婆とロブ。

 ・どっちが犯人?



 しかし二人とも犯人だと決めつけられるような証拠はない。証拠もないのに「あなたは犯人ですか?」と問い詰めたところで論破されてしまうだろう。



 ・犯人である証拠は?



 自供させる事は難しいだろう。やはり証拠を見つけなくては。

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