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異世界転移先が殺人事件だらけの小さな村だった〜田舎パンとマリトッツォ殺人事件〜  作者: 地野千塩


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34話 再び嫌がらせ!

 翌日、ざわざわとした雑音で目が覚めた。下の方が騒がしい。


 カーテンを開けると外では牧師さんやミシェルが何か慌てている様だった。


 昨日は本を読んだせいで夜更かし気味で眠いが、手早く着替え、下の洗面所で顔を洗って髪をとかして外に出た。アビーとジーンはまだ眠っているようだった。


「どうしたの?何かあったの?」

「これ見てよ!」


 ミシェルがこの牧師館の壁を指さす。そこには赤いインクで「この村から出て行け。警告だ!」と書かれていた。


「ぎゃっ!」


 日本語で私は変な声が漏れる。


 壁のイタズラ書きだけではない。食糧庫のそばには紙屑などのゴミが散乱していた。卵のからや小さな虫の死骸もあるようで生ゴミもあるようで、嫌な匂いも漂っている。


「これは迫害ですかね。クリスチャンだから嫌がらせを受けたのなら、むしろ喜ばないといけないんですが」


 牧師さんは呑気にゴミや壁の落書きを眺めていた。


「ちょっと呑気すぎませんか? 牧師さん。これは明らかに嫌がらせですよ」

「そうだよ。それに教会なんてもともとずっと昔からあるだろ。ここにきて突然嫌がらせをするなんて、別の理由に決まってるだろ」


 少々天然ボケが入ってる牧師さんに私とミシェルは激しく突っ込む。


「何か心当たりがない?」


 私は慌てて叫ぶように言う。カフェでも似たような嫌がらせをされた。火もつけられて死ぬところだった。


「もしかして私は狙われている?」


 その可能性に気づき、私は膝から崩れ落ちそうである。


「そんな事ないだろ…」


 ミシェルはそう言っていたが、自信の無い小さな声である。その声を聞いているとますます不安に襲われる。心なしか火傷を負った右手がジンジン痛くなるような思いだ。


「ねえ、みんな何騒いでるの?」

「何、何?」


 そこにアビーとジーンもやってきた。二人とも寝癖で金色の髪の毛があちこちに跳ねている。眠そうまぶたも半分閉まっている。そんな子供達を見ているとちょっとだけ微笑ましいが、不安は別に解消されない。


「これは、お前たちのイタズラか?」


 ミシェルは牧師館の惨状を指差して子供達にとう。


「ひどーい! 私はこんなイタズラはしないもん!」

「僕だったらゲジゲジ虫をミシェルの枕元に置く!」


 疑われた二人は必死に否定。しかしゲジゲジ虫を枕元に入れられるのはかなり嫌である。いつもこんなイタズラをしている様である。ミシェルが子供達を疑ってしまうのもちょっと無理は無いかもしれない。


「ま、子供達がこんな手の込んだイタズラはしないでしょう。ゴミもうちのものじゃない。ここ1週間ぐらいうちは卵の料理は作ってませんから、わざわざ生ゴミを集めた事になる」


 おっとり天然そうな牧師さんではあるが、その指摘は当たっている。牧師さんは意外と冷静であった。


「という事は、わざわざこんな事する為にゴミを集めたって事か? 嫌なやつだ」


 ミシェルはイライラとして下唇を噛んでいた。


「でも一体誰が…」


 私も下唇をかみ、つぶやく。恐怖ももちろん感じたが、こんな嫌がらせをする犯人を放っておく事など出来ない。


「マスミ、考えても仕方ないですよ。とりあえずゴミを片付けましょうか。何か犯人につながるヒントがあるかもしれない」


 牧師さんに言われて私も少し冷静になってくる。確かにここで怒っても仕方ない事である。


 結局子供達を含めてこの惨状をみんなで掃除する事になった。


 今日は朝ごはんは無いらしい。もともと1日1食か2食の食習慣のこの土地では、朝ご飯を食べるのは病人か怪我人ぐらいらしい。腹は減るが仕方ない。郷に入っては郷に従えということわざ通りである。


 私は撒かれたゴミをよく観察しては見たが、卵のカラや野菜クズ、肉の切れはしばかり。どこの家庭にもありそうなものである。小麦粉やイースト菌などがあれば、パン屋のミッキーを疑う事もできるが、そう言ったものはなさそうである。それにもし犯人だとしても、身元が簡単に特定出来そうなものは撒いたりはしないだろう。


 今日は昨日よりもさらに暑く、みな額に汗を流しながらゴミを片付け、落書きを消す。


 子供達は途中で飽きはじめ、「犯人は絶対占いババア!」とはしゃぎ始めた。


「なんで占い師が犯人だって思うの?」


 子供の推理など思い込みだろう。根拠など当てにできないが、一応聞いてみた。


「だってパパとママも似たような事やられた事があるもん!」


 アビーが子供らしくキャッキッとはしゃぎながら言う。


 その言葉に牧師さんもミシェルもハッとしたような顔をしていた。


「そういえば、アビー達の両親とチェリーは揉めた事あったな…」


 牧師さんは目をぐるりと回しながら、何かを思い出していた。


「そう、確かあの事件のとき、あの占いババアが証拠掴んで脅してたんだよな。その脅しに屈しなかったようで、嫌がらせされてたんだ」

「ちょっと待って。だとしたらあの占い師だって犯罪者じゃない。逮捕されなかったの?」

「まあ、あの通り高齢ですし、頭がおかしいな人ですから厳重注意で終わったはず」


 牧師さんの話を聞き、私は気が抜けるような思いがする。この土地の司法や警察は色々ゆるいようである。殺人事件についてはわからないが、嫌がらせについてはあの占い師の魔老婆の可能性がだいぶ高くなってしまった。


「やっぱりこの嫌がらせは占い師が犯人?」


 ミシェルや牧師さんにも意見を聞いてみる。


「でも動機がわからないんだよな。いくら頭がおかしいからって、こんな事するか?」


 ミシェルは首を傾げる。


「そうね。何を目的にやってるのかしらねぇ…」


 魔老婆が犯人だとしたらこの嫌がらせの動機はよくわからない。アビーやジーンも含めてみんなで考えて見たが、結局わからないままだった。


 この惨状の後片付けが終わると牧師さんが、ジュースペーストでジュースを振舞ってくれた。ちょっといい運動した後の甘い飲み物は嬉しかったが、火傷をした右手が痛み始め、ジェイクの医院に行く事になった。予約の日よりはだいぶ早く行くことになったが、「これは別にジェイク目的でがない!」と自分に言いきかせた。

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