33話 もしかしてパクリ?
風呂に入った後、ミシェルから王都の人気小説『トリップ!』を借りて、自室に持っていく。これから読もうと思う。
やはりスマートフォンやパソコン、テレビのない世界は退屈で、本という娯楽で時間を潰すのが良いだろう。事件と関係なくてもその目的に本は読んでみたいと思う。
『トリップ!』は、ミシェルの言う通りの冒険小説である。あるヨーロッパ風世界に住む少年が、魔法が蔓延る異世界にトリップして、数々の魔物を祓って戦うファンタジー。これも異世界転移ファンタジーと言えるだろう。
「確かの日本の小説みたいね…」
独り言が漏れる。
『トリップ!』は主人公がちょっとヲタクよりでゲームが好きという設定だ。それだけでなく展開や文章も日本のライトノベルと似ている。この土地の小説ではどんなものが一般的かはわからないが、少なくとも『トリップ!』は日本のライトノベルのような印象を受ける。もっとも私はロマンス小説ヲタクなのでライトノベルは全く読まないのでわからない。ただ、似たような小説が生徒達の間で話題になっていた事は覚えている。
ちなみに英語でパクリは「rip-off」「copycat」「plagiarize」などと表現される。「rip-off」は「ぼったくり」という意味も有りよく出てくる。
こんな時のスマートフォンやパソコンがあればインターネットで類似作品が無いか調べられるわけだが、この世界にはそんなものは無い。改めて不便だと思うが仕方ない。この小説については、ミシェルや本屋のロブ、司書のジャスミンの聞いても良いかもしれない。
『トリップ!』の本には作者のプロフィールは全くのっていない。作者名もAというアルファべット一文字。ますます怪しいが、事件と関係あるのかはまだわからない。
ただこの本は王都でかなり人気があるのは確かなようで、本に挟まっていたチラシには『30万部突破!』、『舞台化決定!』などと華やかな宣伝文句が踊っている。確かにストーリーやキャラクターには引き込まれるので、人気がある理由もわかる気がする。
『トリップ!』の本を閉じると、私は事件についてメモしているノートを広げる。推理とも言えない憶測ではあるがメモをする。
・転移者が著作権のある小説や音楽をパクって販売する事は可能
・『トリップ!』は日本のライトノベルとよく似ている。転移者がパクって売っていた可能性アリ?
・そんな事をやっていたのは杏奈先生?誰?
・杏奈先生は王都の本屋でパクリ小説を見て驚いた?
ノートに書いてはみたものの、答えは出ない。ロマンス小説ばかり読んでいた事をちょっぴり後悔する。ライトノベルも好き嫌いせずに読んでいたら、この謎も解けていたかもしれないのに。
・とりあえず本屋のロブや司書のジャスミンに話を聞く。
・『カフェ探偵アン』の作者も不明でこちらも気になる。
推理とも言えない憶測だが、少しは進んだ気もする。魔老婆が杏奈先生をストーキングしていた情報も得たし、嫌がらせや火事も殺人犯とは関係ない可能性もある。
まだ何もわからないが、引き続き捜査を続けなければ。決意を新たにし、私はベッドに潜り眠りについた。




