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2話 まさか異世界転移ですか?

 しばらく意識を失っていた。


 夢を見ていた。


 夢の中では、私はシンデレラでボロを着ていじめられていたが、魔法使いが現れてドレスアップされる。今までした事のない華やかなオシャレをしてガラスの靴もピッタリだ。城に出かけ、王子様に一目惚れされる。いよいよガラスの靴を落として王子様と「再び会うきっかけを作るぞ!」と鼻息荒くしていたが、突然何者かに王子様が刺し殺されてしまった。王子様のそばにいた時間が長かった私は、容疑者として疑われる。


 嫌な夢である。


 王子様の死体も生々しいし、疑われた時のみんなからの視線も痛々しい。実に嫌な夢で、はっきり言って悪夢であるが、何故かこの殺人事件が気になる。夢の中であるし、架空の事件であるわけだが、「探偵になりたい!」と妙な希望を抱いていた。


 夢が自分が疑われる所で終わってしまったので、余計にそんな感覚に陥ってしまったのかもしれない。


 そんな事を思い浮かべながら、目を覚ます。


「あれ? なんだこれ?」


 目の前は、牧場だった。


 空はとても青く、空気がサラッとしている。日本でない? 


 牧場には何匹かの羊が群れている。限りなく平和で牧歌的な風景だ。


 自分は確か、エレミヤ棟の開かずの扉のような所にいた筈なのだが。


 振り返ってもそんなものは何もない。あった筈の扉も消えていた。


「は? どういう事?」


 混乱していて頭がついていかない。


 夢かとも思った。しかし、いつものように授業のためのスーツ姿であるし、頬をつねっても痛いだけだった。どうやら現実世界らしい。ポケットを探って見たが、スマートフォンなどは持ってきていない。ペンと飴玉一個だけだ。これだけでは非常に頼りない。


 とりあえず、私は牧場に近づいてみた。


 少し土や肥料のような匂いがして、あまり良い気分にはなれなかったが、今はそれどころではない。今いる場所がどこであるかを特定して、早く帰らなければ。午後からも授業があるし、その後は会議もある。小テストの採点やプリントなどの教材作りや生徒たちとの面談などやる事は山ほどあるのだ。


「メェー」


 牧場のそばに行き、羊に近づく。しか彼らは、メェ、メェ鳴くだけでちっとも言葉は通じない。冷静に考えれば通じるわけがないのだが、混乱していた頭ではまともな思考ができなかったのである。


 羊の平和そのもののような顔をみながら、脳裏に嫌な考えが浮かんだ。


 これってまさか異世界転移?


 私はロマンス小説ばかり読んでいるので、よく知らないが、異世界に転移したり転生するような小説や漫画が流行っている事は知っていた。ある日突然、主人公が乙女ゲームの世界に転生したり、魔法世界の異世界に転移したりする。


 自分がまさかそんな状況になるとは思えないが、この現代日本ではありえないような平和な牧場見ながら嫌な予感しかない。死んだ記憶はないので、転生ではないだろう。転生なんてしたら、クリスチャンである両親は顔を真っ青にする事だろう。確か聖書では永遠の命があると言っていた。身体も私のものであるし、転生ではないと思う!


 だとしたら異世界転移?


 そっちの方が今の状況と辻褄があう。魔法使いがいるような異世界だったらどうしよう。私はそんな力もない。


 不安で仕方がないが、今いる状況は異世界転移としか思えない。


「何これ?」


 牧場の柵にメモ帳が引っかかっていた。


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