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異世界転移先が殺人事件だらけの小さな村だった〜田舎パンとマリトッツォ殺人事件〜  作者: 地野千塩


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17話 異世界行ったらコージーミステリのヒロインみたいにカフェやったり事件を解決していましたっていう事?

 次に目が覚めた時は、どこかの応接室のような場所のソファの上だった。


 毛布がかけてあるが、起き上がりソファに座る治す。


「マスミ! 目が覚めた?」


 牧師さんだった。お盆を持っていたが何かいい匂いがする。


「ええ、ここどこ?」

「牧師館の応接室です。マスミが急に倒れたので、ここに連れてきました。これはホットミルクです」


 牧師さんはお盆から、カップをとり私に差し出した。いい匂いの正体はこれだったようである。ほのかに甘い香りもして、暖かいカップを持つだけでも落ち着いてくる。一口飲むと濃厚な甘味が口いっぱい広がる。日本のミルクに比べると数倍濃いようで美味しい。スーパーで買うちょっと高い牛乳よりも濃くて驚く。


「ホットミルク美味しい」

「そうですか。それはよかった」

「でも杏奈先生が…」


 私はその事を思い出して、再び涙が出そうだった。夢だったらどれだけ良かったと思う。それにこの村が殺人事件だらけの村だなんて恐怖しか感じない。牧師さんやミシェルの慣れきった態度も嫌な気分になる。


「この村が殺人事件だらけってどういう事?」


 牧師さんはこの質問には答えにくいようで、ソファに座り直した後にポツポツと話し始めた。ちょっと顔に疲れが見えている。死体に慣れきった様子でがあったが、何も感じていないわけでは無さそうではある。


「実は、2年ぐらい前、ちょうどアンナが来始めた時から、殺人事件が村に多く起きるようになったんです」

「何で?」

「さあ。あの占い師のチェリーは呪いとか言っていましたけど、そんな事はないですね。偶然でしょう」


 チェリーとはあの魔老婆の事か。


「これまでの事件はちゃんと解決しているんですか?まさか、連続殺人?」


 それを想像すると背筋がゾッとする思いだ。


「いや、ちゃんと今までの犯人は全員捕まっていますよ。まあ、そのおかげっで村に居づらくなった人が続出して、空き家が増えたんです。あの空き家もそうですね」

「誰が捕まえたんですか? 保安官? 警察?」


 私はちょっと興奮しながら言う。


 この杏奈先生の事件についても一刻も早く捕まえて欲しいものだ。この村に殺人鬼がいると恐怖しか感じない。濃厚なホットミルクを再び口に含み、冷静さを取り戻したが、恐怖心はさっぱり消えない。


 異世界転移先がこんな殺人事件だらけの小さな村だなんて。ロマンス小説ともほど遠いし、少女漫画にも無いような設定である。もう少しロマンスが有ればよかったのに。


「それが、アンナなんです…」

「え!?」


 私は驚き、日本語で声を上げてしまった。まあ、感嘆詞なので牧師さんに聞き返される事はなかったが。これ以上驚く事は無いと思ったが、本当に予想を超えている。


「杏奈先生がどうして?」

「まあ、もともと保安官はあんまりヤル気もないタイプで。一言で言えば無能ですね。田舎ですしね。それでアンナが事件を調べて、全部解決しています。彼女のことはカフェ探偵という人もいますね」


 これではまるで本当にコージーミステリではないか。「カフェ探偵アン」ももしかして杏奈先生をモデルにしているのだろうか。設定もよく似ている。


「その事を気に食わない村の人もいますね。特に保安官のアランなんてすっかり自信を失っている感じですね」

「まさか、そんな杏奈先生が…」


 本当に言葉が出ない。「異世界行ったらコージーミステリのヒロインみたいにカフェやったり事件を解決していました!」なんてライトノベルのタイトルのような文も浮かぶ。


 私からしたら杏奈先生はいい人ではあるが、探偵の真似事のような事をしていたら、恨まれるのも仕方がないだろう。しかし、あの時に簡単に杏奈先生を送り出してしまった事を後悔した。あの時引き止めていたら杏奈先生は死なずに済んだかもしれない。


「私のせいだわ。杏奈先生を外に行かせてしまったから…」


 少し泣きそうで、目の奥が痛くなってくる。想像以上に胸もズキズキと痛くなり、自分でも戸惑うほどだった。


「そんな自分を責めないでくださいよ。あなたのせいではありません」


 牧師さんに心配そうに見つめられ、ほんの少し心は軽くなった。

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