14話 嫌がらせ?
すっかり夕方になった。
私はカフェの料理が美味しいと感動し、杏奈の仕事を手伝いたいと申し出たが断られた。今はそれよりもこの世界について勉強したり、部屋の掃除や庭の手入れを手伝って欲しいとの事だった。
すっかり杏奈の料理に胃袋を掴まれた私は杏奈の指示通り、庭やカフェの2階の自室やキッチンを掃除し、図書館で借りた本を読む。特に「カフェ探偵アン」は、小さな村の生活が今いる村を連想させ、意外と楽しかった。ちょうどヒロインの村娘がカフェを開店して、村人から応援される所まで読み進めた。軽快なリズムの文で読みやすかった。
そんな事をしているうちに夕方になり、杏奈先生もカフェを閉めて戻ってきた。
「今日も疲れたわ」
「おつかれ様です! あぁ、今日のマリトッツオもおにぎりランチセットもとても美味しかったですよ!」
「あなた、またその話。よっぽどおいしかったのね」
杏奈先生は呆れながらも私の意見を聞いていた。カフェで新しいメニューを作りたいそうで、どんなものが良いか聞いてきた。
「日本食がいいですね。牛丼とかはムリですか?」
「牛丼ねぇ。ちょっと男っぽすぎない? うちの客は100%女よ」
「そうなんですか?」
「ええ。この村の男達は私のカフェが嫌いみたい。男尊女卑国家でも無いのにね」
そう言って杏奈先生は、苦笑する。
「牧師さんも?」
「別にあの人は優しいけど、お祈りの為にしょっちゅう断食しているからあんまり私の料理興味ないみたいね。まあ、そんなことはどうでもいいじゃない。何か夕飯を作りましょう」
私と杏奈先生はキッチンに行き、夕飯作りに取り掛かる。
今日は、スープとサラダ、牛肉の炒め物というメニューにしたいそう。私も手伝うと言っても料理下手の私は野菜を洗って切ったり、食器を洗ったりという簡単な作業だけだったか。
ちょうどスープが煮詰まり、コンソメのいい香りがただよう時だった。
下の方で何か大きな物音がした。ガラスが割れるような大きな音である。思わず私と杏奈先生は顔を見合わせる。
「何!?」
「とりあえず行ってみましょうか」
驚いている私と違って杏奈先生は落ち着き払っていた。
もう窓の外は夜で少し肌寒くなってきた。
「大丈夫よ。ネズミかなんかでしょ」
「そうですかね〜」
杏奈先生は若干イライラしながら下に降り、私もそれに続く。
静まりかえったカフェの中は特に異変はない。電気をつけて確認したが、ネズミ一匹もいない。
「ちょっと杏奈先生!」
しかし私は厨房に入ると大きな声をあげてしまった。
厨房の窓は割れ、破片が床に散らばっている。どうやら大きな石で窓が割られたようだ。石も床に落ちていた。
風が厨房の中に入り少し肌寒い。外から嘲笑うかのように鳥か何かの生き物の鳴き声もして不気味だった。
「何これ!」
しかもチラシのような物が投げ込まれている。
単なるチラシではない。「今すぐカフェの営業をやめろ!」とある。
真っ赤なインクで書かれている。英語ではあったが、文字から悪意、憎悪、イラつきなどのマイナスな感情が伝わってきて、とても気持ちが悪い。
「何これ、嫌がらせじゃないですか」
私は恐怖やイライラ感などを感じていたが、杏奈先生は平然としていた。怖がるどころか、ニタニタと笑っていて少し杏奈先生の方が怖いぐらいである。
「まあ、放っておきましょう」
「なぜですか?」
「この村には警察とか居ないのよね。別に隣町かえあ呼んでもいいけど、面倒臭いわね」
「でも窓も割られてますよ! 危ないですって!」
私が慌てれば慌てるほど、杏奈先生は冷静になって居るようだった。
「まあ、いいじゃない。どうせ犯人は目星がついてる」
杏奈先生はチラシをぐしゃぐしゃに丸めて、ゴミ箱に放り込んだ。冷静ではあるが、この態度を見て居るとイライラしている様だが、杏奈先生の態度は限りなく冷静である。まるでこんな嫌がらせは日常茶飯事であると言いたげである。
「犯人って誰ですか?」
「まあ、ちょっと出てくるわ」
「ちょっと待って…」
杏奈先生は私の言うことなど聞かず、急いで外に出てしまった。
「どうしよう…?」
とはいってもどうするべきかわからない。




