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脱出開始なんですが

 突然同行を申し出たジョシュアくんに案内されて、僕たちは地下牢から地上へと出る階段を昇っていた。

 地下牢は複雑な形をしていたのだけど、ジョシュアくんのおかげで、迷うこともなく外へと出られたのだ。

 なぜそんなことができたのかというと、彼が精霊と話す力を持っていたから。

 彼が精霊からうまく話を引き出してくれたおかげで、僕たちは最短ルートで脱出することができたのだった。

 ――ちなみにジョシュアくん、実は男だったらしい。

 彼の住んでいた里では小さい子どもは性別問わず女の子の格好をするものらしくて、彼もそれにならって女装をしていただけなのだとか。

 ……まあ、そんな予感はちょっとしていた。

 自分のスキルといい、ミシェの服といい、最近はなぜか女装と縁があったから。


「……よし、着いたみたいだな」


 ジョシュアくんの言葉を受けて前を向くと、そこには古びた扉があった。

 金具で補強されているからかバラバラにはなっていないものの木材は限界みたいで、あちらこちらに開いた隙間から光が漏れ出ている。

 長いこと薄暗い場所にいたからか、漏れた光でさえもまぶしい。


「ちょっと待ってから行こうか」


 同感だ、とふたりがうなずく。

 そして僕たちは、その場でしばらく周囲を見回し続けていた。


 ようやく目が慣れてきて、ドアの向こうに広がる景色が見えるようになった。

 外はどこかの廊下と繋がっているみたいで、金銀財宝で彩られた豪華な壁の姿が見えた。

 警備の人も数人ほどいるみたいで、廊下に点々とある扉の前で侵入者がいないか見張っている。


「ここは……?」

「……え、お前知らなかったのか? ここはキョウ枢機卿の屋敷だよ。あいつが買った奴隷があそこに放り込まれてんの」


 もちろん俺もだ、とジョシュアくんはさらっと話した。


「……え、そ、それ本当……!?」

「そうだぞ。ま、それ以外にもどっかで捕まえた奴も放り込んでるみたいだけどな」


 ジョシュアくんの言葉を聞いて、ミシェがなにかに気づいたような顔をする。


「ってことは、もしかして……」

「証拠がないから断言はできないけど、ほぼ確実にそうだろうね」


 つまり、あの賊と猊下はグルだったわけだ。

 それも複数回、僕たちにしたみたいなことを行っている。

 じゃなきゃ、あの場所に猊下の足跡がつくなんてことはないはずだ。

 ――これはさすがに放っておけない。


「……ジョシュアくん。他にあそこで捉えられている人ってどれくらいいるの?」

「確実な人数はいえないが……30は軽く超えてるだろうな。俺は大丈夫だったが、何人かは上に連れていかれてて、その先どうなったのかさっぱりわからん」


 ジョシュアくんはそう言って肩をすくめた。


「ま、あんまり気にすんな。あいつらは運が悪かっただけ――」

「――助けないと」

「……え?」


 ジョシュアくんが驚いた目でこちらを見つめる。


「だって色んな人がひどい目に会ってるんでしょ? 放っておけないよ」

「おいおい、いくらなんでも無謀――」


 無謀だと言おうとして、ジョシュアくんは口を閉ざした。


「……本気か?」

「本気さ。こんなに大変な目に会ってるなら、なんとかして助けないと。ミシェもそう思うでしょ?」


 とミシェに質問してみると、彼は力強くうなずいてくれた。


「……無謀だ。相手は天下の枢機卿だぞ? お前なんて――」

「大丈夫。こういう潜入みたいなことはやったことあるしね」

「……マジか?」

「うん。……それにさ」


 といったん言葉を区切って、僕はふたりを安心させるため、自信満々に聞こえる声でこう言った。


「困った人は放っておけないでしょ?」

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