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パーティーをクビになったんですが

「ショウ、お前はクビだ」


 無事ダンジョンを突破して、A級パーティへと昇格した日の祝賀会で、僕はそう宣言された。


「……え? な、なんで急に……いままで5年間、ずっと一緒にやってきたじゃないか」

「お前が足手まといだからだ」


 厳しい口調で僕にクビを宣言する男の名前はブレイ・キーン・アームストロング。

 僕が所属している(今まさにクビを宣告されてしまったのだけど)パーティー、『黎明の聖女』のタンク役だ。


「我々『黎明の聖女』は3人の力によって回ってきた。高い身体能力を持つブレイ、豊富な知識と魔法で遠距離を担当してきた私ガフ・フォンスキー、そしてリーダー兼聖女として回復を担当してきたアーネット・ヤン・ツェーレ。……しかし君はなにをした?」

「そ、それは……」

「掃除、片付け、買い付け、料理。なるほど確かに重要な任務だ。……しかしこのパーティーにはいらない」


 ガフはあざけるように笑った。


「君のやっていることなど誰にでもできる。『スキル』も持たない、ステータスも村人と変わらない君よりも、ずっと有能な者だっている」


 いいかい、君はこのパーティーに不要なんだ。

 ガフはそう言って、僕の肩に手を置いた。

 僕はなにも言い返せなかった。

 だって彼の言葉は、ほんとうにその通りだったから。


 この世には『スキル』というすごい力を持った人がときどき産まれる。

 その確率は高くないけど、低いというわけでもない。大体半々の確率だ。

 『スキル』の中には強力な力を持つものがあって、そういった人たちは冒険者になったりする。

 彼らは『持っている』人たちで、僕は『持っていない』人間だった。

 それだけじゃない。

 僕はよく少年と呼ばれてしまうような幼く見える外見をしていた。

 体格もそれに合わせた小さなもので、身体能力も同い年と比べるとずっと低かったのだ。

 ……それでもと、なんとか努力を続けてきたのだけれど。


「……この話は、アーネットにもしてるの……?」


 今、昇格についての手続きで酒場にいないアーネットならなんとかしてくれるのではないかと思って、なんとかこの言葉をひねり出した。

 正直なことをいうと、前からこのふたりにはよく思われていないことはわかっていた。

 なんとなく、だけど。

 けどアーネットは違った。僕にやさしくしてくれて、いつも心配してくれていた。

 だから、もしかしたら彼女なら、とすがりつくような思いだったのだけど――


「……彼女も賛成していたよ」


 ――その思いは、あっけなく打ち砕かれた。


「……そうだったん、だね。ごめん、時間をかけちゃって」

「まったくだ。……そこに荷物をまとめてある。最後の餞別だ、それを持ってとっとと出ていけ」


 ブレイが汚いものを指さすように、目の前にある小さなトランクを指さした。

 ……これが、僕の荷物。

 小柄な僕でも背中に背負えるくらいの、これっぽっちが。


「……今までありがとう」


 襲い掛かる悲しみを出さないようにしながら、僕は酒場のドアを開けた。


「アーネットにも伝えておいて。……今まで、ありがとうって」


 バタン、と扉の閉まる音が、やけに大きく聞こえた。

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