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妹の行方

 

「異世界・・・。本物の王子様・・・?」


 これは夢だ。そう、随分楽しそうな夢だ。たまに自分が寝てて夢を見てると分かる時がある、きっとそれだ。なんでも目の前で真剣な面持ちで話してくれている金髪イケメンのフォルクハルトはこの国シュテルン王国の第二王子なんだそうだ。そして私の妹、百合華は聖女召喚の儀で聖女として召喚されたのだろうと、そこでたまたま密着していた私が何故かは分からないが一緒に転移してしまったのだろう・・・と。最近ネット小説にハマって読み過ぎた弊害だろう、なんともそれらしい夢だ。


「・・・聞いてる?信じられないかも知れないけど、これは事実で受け止めてもらうしかないんだけど・・・ミオウ?」


 思考が飛んだまま聞いていた私は呆けた顏をしていたらしく訝し気に覗き込まれ、視線がぶつかり意識が戻ってきた。そのまま手をゆっくり頬に当て、思いっ切り引っ張た。


「っっった・・・痛い・・・」


 涙目になりながら頬を擦る。痛い・・・何故・・・目が覚める気配もない。寧ろ痛みが現実だと訴えてくる。あり得ない。此処は異世界で百合華は聖女で私は百合華を抱きしめていたからたまたま付いて来れた?もし、離れてたら百合華だけが召喚されて・・・他にも何か色々言ってた気もするけど思考が飛んで覚えてない・・・でも良かった。一緒に来られて良かった。突然目の前から百合華が消えていたら、私はどうなっていたか・・・もうたった一人の家族の百合華が何処に行ってしまったのかも分からず、手掛かりさえもなくなれば・・・。そう思えば今のこの現状は不幸中の幸いとでも言うべきだろうか。でも、まだ実際に此処で百合華に会えた訳ではないし百合華に会うまでは安心できない。事実を受け止め瞳に意思を戻し私の突然の行動に目を見張っていたフォルクハルトに向き合う。


「此処が異世界で百合華が聖女で召喚されて、そこに私が付いて来てしまった事は信じがたいですが事実なのかもしれないとも思います。色々と聞きたいことがあるのですが、百合華に会わせて貰えませんか?百合華が本当にいるのかも、無事かどうかも分からないこの状況ではこれ以上聞いても半信半疑で何も判断が出来ません。お話は百合華と一緒にさせて頂きたいです。お願いします」


 フォルクハルトの優し気な声音が頭を上げてと告げる。下げていた頭を上げれば、ハンカチを差し出すアルベルトが横に立っていた。


「これで冷やすといい、赤くなっている」

「ありがとうございます」


 ハンカチを受け取るとひんやりと濡れていた。いつの間に用意してくれたのだろうか・・・。お礼を伝え頬を当てると冷たくて気持ちが良い。強く引っ張り過ぎてしまったようだ。フォルクハルトもアルベルトも気遣いや雰囲気で何となく信用出来る人なのだと思える。悪意も不信感を抱かれている様にも感じない。


「突然、頬を引っ張った時は驚いたけれど、きちんと話せるようになって安心したよ。さっきは何処か上の空な感じだったからね」

「すみません、聞こえてはいたのですが・・・聞けてない部分もあると思いますが、お話の初めから受け入れがたい内容で飲み込むのに時間が掛かりました」


 フォルクハルトはそうだろうねと苦笑いだ。そしてまた真剣な眼差しで話し出した。


「実は、この国での聖女召喚は300年前に禁止されているんだ」

「どういう事ですか?」


 フォルクハルトは難しい表情で説明してくれた。今の状況から私たち姉妹が聖女召喚によってこの国に入る事は間違いないだろう事。しかし、禁止されている儀式という事で秘密裏に行われていて実際フォルクハルトも私が現れなければ気付かなかったかもしれないらしい。ただ王宮内の動きに何か違和感を感じていて、今日も王族と許可の得た者のみしか入室できない機密書庫で調べていた所へ私が現れ今に至ると。


「何故・・・何のために禁止されている聖女召喚は行われたのですか?召喚されたらどうなるのです!?百合華は何処にいるんですか?」

「何故、聖女召喚が行われたのかは推測はできている。儀式の間は王宮に隣接する王宮神殿の地下にあって本来ならば其処で儀式を行い召喚される、しかし秘密裏に儀式を行ったならば場所は地下にある翡翠の間だろう。妹君は其処にいるはずだ」

「ならすぐに其処へ行きます!」


 勢いよく立ち上がり、扉へ向き飛び出そうとするとバフっと何かにぶつかった。


「何処に行くおつもりですか?」


 ・・・この人、本当にいつの間に移動してるの・・・王子の後ろにいたよね・・・全然動いた気配とかなったけど!?背が高いから至近距離で見下ろされてるのが若干怖いし!!


「っ・・・百合華の所へ行くのでどいてください」


 すごく圧を掛けられてる感じがして、言葉に詰まりそうになったけど負けられない!強めの口調で視線を合わせるため見上げて答えるが、あまりの無表情さに視線は合わせたままだが顔が下がってしまった。


「アル・・・無表情過ぎで怖がってるから。後、近すぎて見下ろしてるのも怖さが増すから」


 呆れたように言いながらフォルクハルトはアルベルトの隣に立ち肩に手を置くとアルベルトは場所を空けフォルクハルトが美桜の正面に来る。フォルクハルトは困った様な笑顔を向け掌を差し出してきた。

 意図が分からず、掌を見てフォルクハルトを見てを数回繰り返し、掌を見たままコテン顏を傾ける。フォルクハルトはその様子が可笑しかったのか、ふふっと笑った。


 !!?・・・何?私何か可笑しなことした?何かすごく恥ずかしいんだけど??


 顏が熱くなって思わず睨んでしまう美桜にフォルクハルトは口元を隠すようにして苦笑した。


「ごめんね、何だか可愛くて。言葉が足りなかったね。もう少し話してから案内しようと思っていたんだけど、余り話も身に入らないみたいだし、案内するよ」


 フォルクハルトは笑顔でまた手を差し出すが美桜は顏を赤くして固まった。


 本気で止めてほしい。可愛いとか行動が可笑しかったのだろうけど馬鹿にするのではなくお世辞に変えるとは・・・分かっていても顔が熱くなる。王子だから呼吸をするのと同じ感覚でこういうセリフも出て来るんだろう。さすが王子様だわ・・・。


 美桜は関心した様に一人でうんうんと納得していたが、また差し出された手を見たまま考える。


 この手はどういう事なんだろう。まさかエスコートの為?ネット小説ではよく出て来る行為だけど・・・ここ現実、王子様のエスコート・・・・いやいやいやいや、ないないない。一国の王子様が一般庶民をエスコートなんてするはずがない。間違えて触れたら不敬罪とかになるのかな?・・・では何の手だろう?


「あはっあははははっっ」


 また掌を凝視したまま困惑している美桜に思わず声を出して笑いだすフォルクハルト。驚いて呆然と見つめる美桜と無表情でフォルクハルトを見ているアルベルト。お腹を抱えだすフォルクハルトに冷静になってきた美桜はジト目を向ける。


「何がそんなに面白かったのでしょうか?」

「あはは、はぁ、ごめんね。本当に可愛いね。エスコート、そちらの世界には無かった?手を乗せてくれればそのまま案内するから、はい」


 また、手を差し出されるが慌てて手と首を振り断る。


「い、いえ、大丈夫です!エスコートは知ってます。されたことも、そういう場面にいたこともありませんでしたが・・・。なので、大丈夫です。後ろを付いて行くので、前を歩いて頂ければそれで・・・」

「ミオウは今とても混乱した情態だ、先程みたいに突然飛び出して行こうとする事があるかもしれないね。しかし、ここは王宮だから、この書庫を出て翡翠の間に行くまでに誰と会うか分からない上にまだ公になっていないとはいえ聖女の姉だ、見たこともない女性が私達と共にいて不審に思われて声を掛けられても面倒だし極力隙を見せられない。私の後ろでも良いけど、隣の方がフォローしやすい。私がエスコートしたいというのもあるけどね!だから手を取って欲しいな」


 な、なんなのこのキラキラした笑顔。なのに何故か圧を感じる気がする。後ろでも良いなら後ろでいいじゃないかと思うけど、これは断ってはいけないと本能が訴えている・・・。

 助けを求めてアルベルトを見ても、無表情のまま目を逸らされた・・・。諦めるしかないと覚悟を決め、口元が引き攣るがどうにか笑顔を張り付かせ、そっと手を取る。


「よ、ろしく、お願い、します」

「はい、では妹君の所へ向かおうか。召喚の儀を行った人物にも聞かなければいけないことがあるしね」


 笑顔が怖いとはこの事だろうと美桜は思った。禁止されている聖女召喚を行った事への憤りなのだろうか、他にも何かあるのか分からないがこの人は怒らせてはいけない人なのではと直感で思った。そして、王子が何処の誰かも分からない女を隣に歩かせることは、それこそ騒ぎになるのではないのかと思いつつ口に出しては言えないなと唇を結んだ。


 王子のエスコートで行くのは、すごく抵抗があるけど今は百合華に会う事が最優先!!考えなきゃいけない事は全部置いといて、まずは翡翠の間って所まで行かなくては!!







読んで頂きありがとうございます。

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