プロローグ
初心者です。大きな心で読んで頂ければと思います。
――――辺りは闇に覆われ月の明かりだけが静かに煌めく時。
「聖女召喚の儀を決行する!異論は認めん」
老年の男は、静かにしかし強く告げる。
緊張感に包まれる、魔石ランプが壁に付いてはいるが薄暗い室内、テーブルを囲み話し合っていた数人の男たちは皆、顏を強張らせ視線を上座に向ける。
「もう、猶予はない。優秀な魔法師を集め準備が整い次第、地下の儀式の間で行う」
「―――!!っし、しかしそれは!」
「っ今は禁止されたものです」
「異議は認めんと言ったはずだ!各々速やかに取り掛かれ」
其々が困惑の表情を浮かべ、しかし己の職務に戻るべく礼を取り足早に部屋を去って行った。
皆が去った後、残った老年の男はテーブルに肘を付き、組んだ手が隠していた口元は端を怪しく弧を描いていた。
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朝霧美桜20歳。
今日は妹、百合華の卒業式だ。よく晴れた青空に桜の薄桃色が綺麗に彩っている。
「お姉、置いてくよー」
「待って。今行く!」
春の爽やかな風に髪を靡かせ、空と桜を眺めていたら1年前に亡くなった母とそれからの忙しかった日々を思い出し、立ち止まってしまっていた様だ。
「ついに百合華も卒業か・・・。お母さんもきっと喜んでるね」
「・・・・・お母さんは生きていても仕事できっとお姉に任せて来ないよ」
少し先に行っていた百合華に追いかけながら話すと、顏を背け拗ねた様に答える百合華に相変わらず素直じゃないなぁと、微笑する。
「お母さん亡くなってるのに、そんな憎まれ口言っちゃう所は変わらないのね。百合華の高校卒業はお母さんの目標の一つだったんだから、何が何でも行くに決まってるじゃない。分かってるくせに。」
「っうるさいなぁ。もう、早く行くよ!」
「はいはい」
くすくすと笑う私を横目に百合華は頬を膨らませながら、ずんずんと先に進んでいく。
百合華の少し後ろを歩きながら、私の妹はやっぱり可愛いなぁと口元が緩んでしまうのが止められない。
百合華が振り向いて呆れてジト目を向けられる。どうやら、見られていたらしい。
「お姉、その顏きもちわるい」
「えぇぇー、言い方!傷つくよ!!」
「その割にまだにやけてるけど」
「えへへ」
「きもちわる」
「・・・妹が冷たい・・・」
母が亡くなった事は辛く悲しかったけど、受け止められてきた・・・。戻って来た穏やかな日常に幸せを感じていた・・・。
妹の足元が急に光り出し、その光に包まれそうになるその時までは・・・。
読んで頂きありがとうございました。