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56「近くにありて、はるかに遠く」

 夕食を終えたエルフィーネは、母と姉とパーラーで食後のお茶を飲んでいた。



「お母さま、テアさまから来週の風の日にお茶会に誘って頂いたんです。行っても、よろしいですか?」

「レジーナ公爵家のご令嬢ね? お茶会に誘われるほど仲良くなれてよかったわね。もちろん行っていいわよ。楽しんでちょうだい」

「ありがとうございます。それと、テアさまへのお返事を書くのに便せんが欲しくて、明日の午後お出かけしたいのですが……」

「いいわよ。マーガレット以外にも、誰か男性の使用人を一人連れて行ってね」

「はい」



 二人の会話を聞いていたオリヴィエが、そういえば、と口を開いた。



「今日は王妃殿下とお茶をご一緒したのだが、今度エルを連れて来てほしいと言われたんだ」



 姉の言葉に、エルフィーネの表情が曇った。



「それは、お城に行って王妃殿下にお会いする、ということですか?」



 先日の園遊会(ガーデンパーティー)は、アシュレーが居たから乗り越えられたようなものだ。オリヴィエが居るとはいえ、ほんのひと言挨拶を交わしただけの大人、それも王妃である相手と同席するなど、人見知りのきらいのあるエルフィーネには少し荷の勝ちすぎる案件である。



「うん。エルと話をしてみたいとおっしゃっていたんだ。エルが不安な気持ちもわかるけど、お断りできる話じゃないことはわかってくれるね?」

「はい。お姉さまにご迷惑をおかけするわけにはいきませんもの。喜んでお城に参りますわ」



 どこか他人行儀な妹の返答に、仕方のないことだとはわかっているものの、オリヴィエはそっと息を吐いた。

 エルフィーネが王都へ戻って来て約三ヶ月。未だにエリファス以外の家族と、無意識だろうが距離を置いている妹に、姉は一抹の寂しさを覚えたが、すぐにその感傷を振り払う。自分がそんな風に感じることは許されないから、と。

 幼い妹が独りで遠く離れた地に向かったことは知っていた。エルフィーネがどう過ごしているか気にかけてはいたが、毎日の予定に忙殺されて、次第に妹を思い出すことは少なくなっていった。それは、弟以外の家族みなそうであった。だから、妹が四年ぶりに家族の前に姿を現した時、自分たちが彼女の家族であると説明されていたにもかかわらず、そうと認識されていなかったのは仕方のないことなのだ。



 両親が挨拶をすれば、



「エリィ兄さまのお父さまとお母さまですか?」



 と問われ。双子が挨拶すれば、やはり、



「エリィ兄さまのお兄さまとお姉さまですね?」



 と言われた。

 後で知ったことだが、エルフィーネは自分には父親はおらず、母は家庭教師のホーランド夫人だと思っていたらしい。勘違いに気付いた夫人本人がその過ちを正したため、母ではないと理解したようだが、今度は自分には両親が居ないのだと思いこんだらしい。

 共に暮らして三ヶ月。少しは家族らしくはなってきたものの、エリファス以外の家族はやはりエルフィーネにとってはまだ“近しい他人”に近いものであった。



「……ありがとう、エル。王妃殿下は私的な場では割と気さくに接してくださる方だから、そう気負わなくてもいいよ」



 すまない、という言葉は呑みこんだ。それを言えば、妹はきっと困ったような顔をしながらも心配をかけまいと笑うだろうから。



「オリヴィエの言う通りよ。それに、王妃殿下は所作がとても美しくていらっしゃるから、きっとエルちゃんのお手本になるわ。あまり深く考えずに、最高の教師にマナーを学びに行くのだと思ったらいいわ」

「はい」



 母の言葉に、強張っていたエルフィーネの表情筋がようやくゆるんだ。

 しかし、その後姉から告げられた言葉に、エルフィーネの表情は再び曇ってしまうのだった。


タイトルが思いつかなかったので、某荒野のRPGよりお借りしました。

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