表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/63

13「武のヴァンブレイス公爵家」

 ヴァンブレイス公爵家は、ルナクリスタロ王国の初代国王の弟が興した家だ。王弟は武力を以て兄王の国造りの補佐をしていたため、ヴァンブレイス公爵家の当主となる嫡男は代々必ず剣術を修めている。そのため“武のヴァンブレイス公爵家”と呼ばれている。



「俺は強くならないといけないんだ。父上たちのためにも……」



 白くなるほどに握り締められたこぶしが、彼の強い意志を表しているようだ。

 アシュレーの父はこの国の将軍のひとりだ。そのため領地は弟のグレンディールに任せている。弟にはアシュレーより年が上の息子と娘が一人ずつ居て、兄夫婦になかなか子供ができなかったことから、弟の息子が公爵家を継ぐのではと目されていた。アシュレーが生まれるまでは。


 当主に男子ができれば、よほどのことがない限りは生まれた子が跡を継ぐ。グレンディールは兄を慕っており兄に後継ができたことを心から喜んでいたが、その息子ジェレミィはそうではなかった。自分が公爵家を継ぐのだと思って武芸に励み、父の手伝いと称して領地経営も学んできたのに、今更それがなくなるなんて、と。グレンディールはジェレミィが跡取りになるなど言ったことがないし、手伝いもあくまで将来の当主の補佐のために学ばせているという考えだった。逆恨みも甚だしいのだが、アシュレーが紫暗の瞳を持っていたことでその逆恨みは更に加速した。


 アシュレーと初めて対面した時、“忌み子”が跡継ぎなど由緒あるヴァンブレイス公爵家の汚点だ、と大人の居ない所で(なじ)られた。お前のような子を持った伯父上がかわいそうだ、とも。

 妹のイライザも兄と同じくアシュレーのことを嫌っている。二人に会う機会は多くはないが、親戚である以上全く関わらないことは不可能だ。なのでアシュレーは決めた。誰もが認めざるを得ない完璧な後継者になろう、と。



「アッシュはとても頑張り屋さんなのね」

「ただの負けず嫌いだよ」

「あら、負けず嫌いだけで続けられるほど、剣のお稽古は簡単なものではないでしょう? エリィ兄さまは剣のお稽古はとても大変だった、っておっしゃっていたわ」



 エリファスは魔導士だが、幼い頃からマティアスと共に剣術を習っていた。そのため魔導学校でも魔法剣の授業を採っていたのだが、学校の授業より家でしていた稽古の方がキツかったと手紙に(したた)めたことがあったのだ。



「たしか二番目の兄君のことだったな。その方は魔導士だと言ってなかったか?」

「えぇ。でも、マティアスお兄さまが剣を習っているのを見て、自分も剣を扱えるようになりたいとおっしゃって習わせて頂いたそうなの」



 マティアスは火の魔導適性者だが、魔力階級(クラス)はBと低いため、騎士になりたいと剣の稽古を始めた。エリファスは風属性のAクラスで魔導士を目指していたのだが、兄が剣を習っているのを見て、男の子らしく剣に対する憧れから剣術を習い始めたのだ。現在は、銀百合宮廷魔導士団の中で唯一帯剣する変わり者の魔導士として有名である。



「へぇ……!!」



 相づちを打っていたアシュレーが突然天を仰ぎ、椅子を倒しながら立ち上がったかと思うと、エルフィーネを何かから庇うようにその背に隠した。



「カー!!」

魔ガラス(メイジクロウ)がどうしてこんな街中に……」



 アシュレーがエルフィーネを庇った“何か”はアズラエルだった。しかし、アズラエルのことを知らないアシュレーには彼のことはただの魔獣(ビースト)にしか見えなかった。

 アシュレーの呟きを耳にしたエルフィーネは、すぐにふたりの間に割って入った。



「この子はわたくしの使い魔よ。危険はないわ」



 アズラエルを己の背に庇い、アシュレーに告げる。



(この年で使い魔が居るなんて、きっと気持ち悪いと思うわ……あの人のように)



 それでも、大切な友であるアズラエルのことを彼に教えないという選択肢はエルフィーネには無かった。自分の保身のためだけのそれは、アズラエルとの友情を否定することと同じだからだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ