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天色の夢  作者: 綾瀬咲祐
3/3

Ⅱ「私のかわいいエレンちゃんがああああああ!」

転生(てんせい, てんしょう)とは、

1 生まれ変わること。輪廻。

2 環境や生活そのものを一変させること。

−Wikipediaより抜粋−


「…これ…現実なの…か…?」

 布団に転がったまま、手を上げて見てみる。信じられない。アニメの世界に、しかもヒロインに転生するなど、聞いたことがない。むしろあったらすごい。けれど、たしかに俺は此処に居る。声は女の子のものだし、布団に広がる銀髪もエレンそのもの。事実、そう言われればそうなのかもしれない。果てることなく続くような道も、鼻孔をつつく美味しそうな香りも、滑らかに感じる料理の味も。物の質感も一つ一つが、全て、夢にしてはリアルすぎたのだ。

 もし、本当に転生してしまったのなら、どうするか。よくある小説だと、異世界に転生する場合はイケメンだ。勇者の立場になる。そして夢のハーレムを作り上げる。しかしこの世界には、既に勇者はいるし、超絶ハーレム作られてるし、なにより自分自身がその一員だ。...そんな小説見たことねえぞおい。するべきことが見当たらない。

「せめて男だったならなぁ...」

別のハーレムも作れたというのに。そういっても自分が美少女であることは変わらない。色々考えているうちに日が明るくなっている。ローマ数字で描かれた時計の針も、朝5時をさした。ここの朝は、アニメ通りなら早い。すでに何人かは起きて準備をしているだろう。

 ふと、思った。そういえば、この作品は少女同士でのスキンシップも盛んだし、仲がいい。主人公の取り合いもするが、基本は主人公とよりも会話をする。きっと製作者が女の子をたくさん喋らせたいと思ったからだろうが。家事をこなしている物静かなロリメイドクランは、エレンの幼なじみだ。お互い大好きで、怖い話を聞いたりするとクランは怖がるため一緒に寝る間柄。大人っぽいお姉様サラは可愛い物好きで小さく可愛いエレンに甘く、男前で格好いいハクは面倒見がいいためエレンを放っとけ無いと思っているようだ。そしてナルシスト男の娘モモもエレンとは最高に仲がいい。ふむ。

 これは、適度にヒロインやりつつ女の子と仲よくすれば、誰も傷つかないね!残念ながら推しキャラであるエレンになってしまったので、仲良くすることはできないが、仕方ない。

 エレンの担当である、近距離重攻撃。きっと小さな女の子が大きなものを振り回すことに萌えるのであろう製作者は、一番小さなエレンを、大きな斧などを振り回す超怪力少女にしてしまったのだ。

 傍らにおいてあり、一際異彩を放つ武器、大斧。手にとって見る。軽く持ち上げる。軽く振り回す。ラクラクだ。どうやら中身が変わってもそれは健在らしい。

「よっ…と。」

試しに大量にあるクッションの一つを割いてみる。破壊力。一発で千切れた。中の綿がぶわっと舞う。少し面白い。もう一発...

「……エレンちゃん?朝から何をやってるのかしら…。」

「はっ…ち、違うんだ!これは!」

「…可愛いエレンちゃんがそんな男口調使うなんて…」

 いつの間にか入っていたサラは、怪訝そうに眉をひそめている…というよりは可愛いエレンが可愛くない喋り方をしていることにショックを受けてないか?俺は動揺のあまり素の口調になってしまっていた。

「違うんだよ!えとね、練習!斧の練習してたの!」

「……悪夢だと信じているわ。何かの間違いよね。エレンちゃんはこんなにも可愛いんだもの!」

 サラは自分に何か言い聞かせながらこれ以上の言い訳を聞かずに走ってどこかへ行ってしまった。果てしなく嫌な予感がした。


「エレン。なにか悩みがあるなら、教えろよ?力になるから。」

ダイニングルームへ行くと、慈愛に満ちた表情のサクヤたち。サラの話だけじゃなく、昨日のクランの話も聞いたのかもしれない。

「あ、あのねサクヤ。特に悩みなんてないの!気にしないで欲しいかな!」

「モモちゃんから見ててもやっぱ様子がおかしいと思うんだよねえ。モモの可愛さに改めて惚れ惚れしちゃったのかなーって納得はしてたんだけどっ!」

「クッション斧で割いたりするのは…確かに、かなり心配だな。」

「エレンちゃんが…私のエレンちゃん…」

「ぁー…ぅー…」

 実は俺、昨日からエレンじゃないんだと言ったら本格的に教会行きだろう。それは避けたい。どうするか、考えろ、考えろ…!

「え、えとね...さっきおっきい虫を見つけてね...クッションの中にはいっちゃったから、パニックになっちゃったの!」

「あら、そうなの!怖かったわねぇ、あんなに錯乱しちゃって…本当にエレンちゃんは可愛いわね!」

「そのくらい俺に言ってくれればいつものように逃がしてやったのになあ。」

「…びっくりしました。…よかった。」

苦し紛れの言葉に納得がいったようで、口々にいうと、朝食の準備を始めだした。

 …………。それ以外の件は解決してないけどね。俺も手伝うとしよう。美味しそうなクランの手料理。今日はみんなで食べる。

「エレン、今日はどうする?クエストいかなくても…」

「ううん、行きたい!」

 むしろ行かせてください。何しろ、アニメでの見どころは1にヒロイン2に女キャラ、3は戦闘と言われるほど面白い。何しろ。


「うわああああああ、ハク!危ない!」

「俺のことは気にしないでいい、早く攻撃を!」

雑魚相手でもボス相手のテンションなのだ。強くはない。絶対勝つけどこれなのだ。最初からクライマックスを保ち続けている。

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