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転生初日ーーー休み時間

「そーたく~ん」


すりすりすりすりすり。


彼女は絶賛、甘え中であった。


俺の体にすりすりすり。椅子に座った俺の体をすりすりすり。お姫様抱っこの姿勢ですりすりすりすり。


「だあああああああ!!離れてください真奈美さん!!」


美波が強引に引きはがそうとするも、彼女は俺の首に手を回して抵抗し、


「やーだもん。久々に会えたんだもん。もっと甘えたいもん」


子供みたいな理屈と口調で反論する。


これが、先ほどあれほど凛とした姿を見せた彼女と同一人物とは思えない。


うう~、と唸りながら顔を赤くする美波。


あの騒動の後、オリエンテーリングは他の講師が臨時で行い何とか終了。その後の休み時間、人気のない屋上のベンチで腰かけていたところ、彼女の奇襲を食らい、今に至る。


「あ、あの、二人はどのようなご関係で…」


そのやり取りを見ていたのどかが少し控えめに聞いてくる。


それを見た真奈美はニコッと笑い、


「私とそーたくんはね、婚約者なの!」


ぶふっ!


美波が盛大に吹いた。


「こ、婚約者なんですか!?」


驚きと、悲しみの半分半分の顔で聞いてくるのどかに、


「いや、違うよ」


やんわりとした口調で否定しておく。


「え~、なんでよー」


身長のわりに、豊満な胸を俺に押し付けながら不服そうに耳元でささやいてくる。


「何でもじゃないですよ。大体、俺は官位すら持ってないんですよ?」


「そんなのいいじゃない~。私はそーた君が一番なんだもん」


そう言ってますます甘えてくる真奈美。


「あの、じゃあ婚約者っていう訳じゃ…」


「違うよ。少なくとも公式には認められていない」


彼女、九条真奈美はこの世界のこの国でも、指折りの能力者の家系の一門だ。


能力者は高い社会的ステータスを持っており、その上流階級ともなればこの国の政治すら動かすともいわれる。


その能力者は上部階級から「官位」というものを預かり、その階級を誇示しあう。


それはただの虚栄ではなく、実際の能力などを指し示す重要な指針となる。


それら官位を管理する一門に所属する九条家。その直系の血を引くのが真奈美と言う訳だ。


当然、彼女の婚約はその一念で決められるものではなく、会議において決められる。


彼女の婚約者となれば、数段階の階層に分かれるくらいに選別される。


その有資格者になるにはそれ相応の身分と能力が求められるが、俺はそれには該当していない。


「じゃ、じゃあ、あたしにもチャンスが…」


そこまで言って、のどかは思わず顔を紅潮させる。


思わぬことを口走って、後悔するが、もうすでに遅しである。


こうなったら、と彼女は俺の隣に座り、


「えいっ」


可愛らしい声と共に、俺の腕に体ごと腕を絡み合わせてくる。


「な、なにやってんの、のどかちゃん!?」


突然の彼女の行動に驚く美波だが、彼女も肚を決めて、


「…えいっ!」


のどかの反対側から俺の開いていた腕に、腕を組ませてくる。


のどか、真奈美、美波。


この並びの順に組み付かれて身動きが取れない。


何やら三人で言い争いを始めたが、仕方ない。


この休み時間が終わるまではこうしておくか。


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