転生初日ーーー教師追放
「えー、まずは入学おめでとう」
教室に入ってきた教師が手軽なあいさつの後にそう生徒たちに言う。
「が、ここに似つかわしくない生徒も一人いる」
が、ここで打って変わってニヤニヤとした口調であたりを見回す。
「それは、そこの予備生のクズだ」
つかつかと俺のそばに寄ったと思ったら、哀れみ10%蔑み10%面白がり200%の口調でクラス中に響き渡らせる。
「こいつみたいな予備がいると、クラス中の士気も下がるしやる気もなくなるっ。俺はこんなゴミを何時までもここに置いておく気もないし、そういうつもりでこのカスには対処する。
つーか、なんでここにいるの?
バカだろ?さっさと下のクラスに行けよクソ野郎」
そういって、フルスイングで俺の後頭部を叩くゴミ人間ーーーのはずだったが、大きく狙いを外してすっころぶ。
「おやおや、大丈夫ですか?クソゴミ低能教師」
その姿を立ち上がって上から目線で見降ろしてやると、そいつは完全に切れた。
「もういいよ!!
さっさと下のクラスに行けよクズ野郎!!このクラスには最初からオメーの居場所なんてねーんだよ!!
分かったらさっさと出て行けよ、ウジ虫が!!」
逆上したそいつは俺の手荷物をひったくると、教室のドアを開け放つや勢い任せに廊下に叩きつける。
「ほら、出て行けよ!
出て行けって言ってんだよ!!」
目を吊り上げ、顔を真っ赤に染めながら命令するその姿に俺はいよいよ笑いをこらえられなくなっていた。
「いい加減になさい」
凛、とした声に、誰もが耳を傾けた。
美波でも、ましてやのどかでもない。俺でもないその声の持ち主は、すっと席から立ちあがり、威厳すら感じさせる声で眼前のゴミクズ野郎に言い放つ。
「それでも栄えある当校の教員ですか、情けない」
彼女は呆れと蔑み、なにより怒りを込めた声で蛆虫以下のクソに言う。
「教員として、生徒たち一人ひとりを愛し、育み、そして平等に取り扱うのが本来のはず。
それが、生徒一人を槍玉に悪態を喚き散らすとは、恥を知りなさい」
あまりの正論に、猿以下の頭でも理解できるかと思いきや、
「なんだお前は!?一生徒が教師に逆らっていいと思ってんのか!!?」
汚らしい泡を吹きながら喚き散らす人類の屑。
それに対し、もはや彼女は反応を示さない。
「たかが、一生徒、ね」
そういうと、彼女は懐から電話を取り出し何処かへかけ始める。
「おい!!何勝手に電話してんだ!!?授業中だぞ!!?」
そこだけ正論を持ち出しても最早、滑稽なだけなのだが。
ゴキブリのタンカスよりも価値のないそれが、彼女につかつかと近寄り手元の電話に手をかけようとするが、それを足をちゃんとかけてあげる。
優しいな、俺って。
「…テメー!!」
怒りでどう表現したらいいかわからない顔になっているが、基本、爆笑物の顔だ。
それが証拠に美波なんか突っ伏して笑い転げてるし。
しかし、それ以外は全くノーリアクション。教員の怒りを買うまいと、ただただ嵐が過ぎ去るのを待っているだけだ。
あれだけ人を見下しておいてどうかと思うがね、その態度は。
彼女が電話をし終えたとき、クソ以下のクソがようやく起き上がる。そして何かを言おうとしたとき、突然、教室に数人の男が踏み込んでくる。
そして、ゴミ以下の異物を両肩を持って取り押さえると、そのまま教室の外へと連行していく。
「よかったわね」
彼女がそれの耳元ですれ違いざまに囁く。
「もし、私に手でもあげようものならお前の命じゃ足りないわよ」
次に浮かべたのは、冷笑。
それは彼女の言葉が嘘ではないという証。
はなせ!と見苦しく足掻きながら連れ去られていくクソに失礼なほどのクソを見送ると、彼女は再び口を開く。
「みなさん、お騒がせして申し訳ありません。
しかし、これだけは覚えておいていてください。
当校の在校生である以上、どの生徒にも平等に教育を受ける権利があると、私は考えております。
皆さんも、あのように偏見に惑わされることなくお互いを尊重しあい、互いに実りのある学生生活を送られるようお願い致します」
そう締めくくり、再び頭を下げる彼女に、クラス中から割れんばかりの拍手が送られた。
やや芝居臭いが、ここは流れに任せておくか。
そのなか彼女が俺に大きめのウインクを送ってきたーーような気がした。
とりあえず、俺も愛想笑いで返しておいた。
これが勘違いならえらい恥だけどな。




