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転生五日目ーーー事件

「どうしたんですか?」


俺は開口一番質問した。


夜中に学校へと呼び出された俺と美波は生徒会室へと向かった。そこにいたのはいつもの生徒会の役員たちのはず、だったのだが。


「あれ、詩音さんは?」


と一人欠けている二年生書紀のことを尋ねると、会長は苦し気に視線を落とす。


「---これを聞いてほしい」


彼女は携帯端末ーーまあ、スマートホンだなーーを取り出すと、机の上に置き、録音アプリを呼び出す。再生スイッチを押すとたどたどしい機械音声が流れてくる。


「紫原詩音ハ預カッタ。彼女ノ身ノ安全ヲ保障シタクバ柳楽壮太ヲ退学処分トセヨ。モシサレナクバ彼女ノ安全ハ保障シナイ。ワレ犯罪者二アラズ」


一方的な宣告に美波が怒りを露にする。


「何なんですか、これ!?」


彼女の怒りは全員に共通していた。しかし、それ以上に気がかりなことがある。


「返答期限は?」


と聞くと、会長は首を横に振る。まだわからないらしい。


「犯人について、心当たりはどうかしらぁ?」


千里さんがいつもの調子、よりはやや切羽詰まった様子で俺に聞く。


心当たりは、ないわけではない。だからと言って、それが当たっているとも確証はない。


「---多分、犯人は上位官位者がらみだと思う」


真奈美さんが表情を曇らせながら言う。


「当校の、ましてや生徒会役員を狙うなんて外部の人間じゃ考え難いと思うの」


「リスク以上のメリットが考えにくいと?」


「ええ、そうよ。


紫原先輩を誘拐しても、外部の人間からしたら普通の高校生だし」


「当校の生徒がらみとは?」


そう聞くと、彼女の顔にさらに影が滲む。


「たぶん、当校の関係者に違いないわ。


ただ、単なる関係者だととっくに警察沙汰になっているでしょうし、事件発生後すぐに解決に向かうわ」


「が、現時点で解決されていないどころか、事態は悪化している」


「となれば、当校に通う上位官位者絡みの犯行とみて間違いないでしょうね…」


そこまで言うと、真奈美さんは思わず天を仰いだ。


「学校への報告は?」


一応確認のために会長に聞くと、


「一応したんだけどぉ、お前たちの心配することじゃない。警察に任せておけばいいって言ってきかないのよ~」


口調はともかく、千里さんも焦っているのがわかる。


「彼女のご両親は?」


「ご両親は警察に行ったみたいだけど、どうせいたずらだろう、すぐに帰ってくる。一応、家出扱いにするけどって言われたらしくて…」


まともに対応する気なしか。


「真奈美さんのところには何か情報は?」


上位官位者の一門である真奈美さんにも聞いてみるが彼女は首を横に振り、


「私のところにも全然…。父に言っても大したことじゃないっていうし、関係者にも今当たってるんだけど…」


彼女の様子からして今のところは進展なしのようである。


しばし辺りを包む沈黙。


俺がふと席を立つと、


「どこ行くの?」


と会長が聞いてくる。


「ちょっとトイレに」


と言うと、彼女は、そう、とだけ反応する。


「あら~、長くならないでね~」


と、千里さんの見送り。


はいはい、と軽く言うが、無論トイレがようであるわけではない。


俺が二階の踊り場で待っていると、


「お待たせしました」


美波がやってくる。


「で、首尾は?」


はい、と校内の彼女ではなく、仕事の時の口調で彼女は答える。


「確かに、真奈美さんの言われる通り、犯行は上位官位者の生徒関係かと」


俺は、そうか、と答え、


「首謀者は?」


「八十八家の者かと」


「八十八家?」


俺は記憶の引き出しを巡らせる。そういえばいたな。転生初日に絡んできたあいつか。


「どうやら彼の手の者が動いている様子です」


ふむ、それなら警察や学校関係者では身動きできないだろう。八十八家の直系が動いているとなれば、いくらでも口裏を合わせてくるだろうし。


「で、彼女の位置はわかっているのか?」


「はい、ここに?」


彼女が取り出したスマホの地図に示された位置は、ここから少しばかり離れた倉庫群の中の一つ。


「裏は?」


「”狗”からのものなので間違いないかと」


「あらぁ~、そうなのぉ~?」


うひゃああっ!!


思わず声が出てしまった。


そこにはいつの間にか俺たちの背後に立っている千里さん。


「お、脅かさないでくださいよぅ!!」


と抗議の美波。あ、素で驚いている。


「あらぁ、そう~?」


と小首をかしげている千里さん。意外と底知れないな、この人も。


「それじゃ、頑張ってきてねぇ~」


と手を振りながら生徒会室へと帰っていく彼女。


「…何者なんでしょうか、千里さんって」


「さあな、それより今は詩音さんのほうが先だな」


俺たちは気を取り直して、改めて詩音さん救出のために動き出した。


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