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転生四日目ーーー仲直り

「…ウッウッ」


再戦の結果から申しますと、


「…ウッウッウッ」


勝ちました。


「…ウッウッウッウッ」


んで、さっきから泣いているのが三山先輩です。


「あの、先輩?」


俺が部屋の隅っこで体育座りで泣いている先輩に声をかけても、ぷいっとして顔を上げてくれない。


やれやれと、頭をかいていると、この結果に対し驚きを隠せないのどかや詩音さんが得意げな美波たちと論議を交わしている。


「---ということは、壮太さんはアーティファクトが扱えないってことじゃなんですか?」


興奮した口調で聞くのどかに、美波は少し胸をはり、


「うん、壮太さんはアーティファクトが扱えない訳じゃないの。でも、出力が大きすぎてアーティファクトの方が耐えられないのよ」


と、講義する。


「つまり、彼の出力が強すぎて通常のものでは耐えきれない、ということですか?」


怪訝そうな顔で推論する詩音さんに、


「その通り」


と、会長が相槌を打つ。


そこに加わる真奈美さんの解説。


「そーたくんはね、通常のアーティファクトを使うときにはすごく出力を抑えようとするの。アーティファクトを壊さないようにね。でも、それは彼にとっては針に糸を通す様な作業になってるわけ」


「なるほど、だから咄嗟の早打ちでは分が悪い、と」


彼女の説明に合点したように頷く詩音。


「で、でも、それじゃさっきの勝負は?」


当然の疑問を口にするのどか。


「さっきの勝負の時、彼は何と言っていた?」


と返す水理。


「えっと、壊しても構わないかって…」


その言葉を呟き、のどかの頭に答えが閃く。


「そう、彼はアーティファクトが壊れても構わない、いや壊れきるまでに能力を発動しきれる程度の出力をあらかじめ設定して使ったのよ」


「そして、その威力はあのカスの能力をも打ち消して三発当てた」


その二人の解説に声を上げて納得するのどかと詩音。


そう、俺は先ほどの勝負はあらかじめアーティファクトを壊しても構わないという前提で能力を発動した。それでもかなりぎこちなかったが。


出力を絞り切ってはいるが、そのままだと壊れてしまう。だから、壊れきるまでに発動できるスピードで使ったのだ。


その結果、三山先輩より早く、彼の能力を打ち消しながら先に三点入れることが出来たのだが、


「…~ううぅ」


すっかり落ちこんだ先輩が全然こっちを見てくれない。


終わったときは、やれ反則だなインチキだのイカサマだの喚いていたが、それをことごとく女子の辛辣な言葉で論破されると、部屋の隅っこで固まってうごかない。


まるで幼稚園児のような拗ね方である。


どうしたものかと考えながらとりあえず、


「あー、先輩。とりあえず顔をあげましょう?ね?」


幼児をあやすように言ってみる。でも反応は、ぷいっと顔を横にするだけだ。うーむ、手ごわい。


「そ、そーだ。なんか喉乾きません?なんか買いに行ってきましょうか?」


と、飲み物で釣ってみると、


「…ソーダ」


「へ?」


「メロンソーダ!!」


「ああ、はいはいメロンソーダね。今すぐ買ってきますから」


とりあえずこれで機嫌を直してくれるといいが。



数分後、美波にも手伝ってもらって人数分の飲み物を買って帰ってくると、やはり先輩は拗ねたままだった。


「はい、先輩」


俺が買ってきたメロンソーダを出すと、彼はひったくて取り、くぴくぴと飲みだす。


ちょっとだけ機嫌が直ったのを見て、


「あの、あともう一戦やります?」


と持ち掛けると。


「やだ」


とあっさり拒絶。


「だって、負けるもん…」


しょげた様子でソーダの入った缶を手でもてあそびながらいう。まだ立ち直りきってはないらしい。


「あー・・・」


俺が次の言葉に悩んでいると、


「…その、ごめん」


意外な言葉が彼の口から洩れた。


「え、いや」


その言葉におもわず俺が慌てると、


「だから、ごめん」


ともう一度同じ言葉を繰り返す。


彼は少し照れくさそうな恥ずかしそうな、それともバツの悪そうな感じで、


「…これまであんな風になったことなかったし」


と自らの感想を漏らす。


「それに、あんな馬鹿にしたこと言って…。だから、ごめん」


続く殊勝な言葉にどういうリアクションとればいいのか分からない。


「え、いや、まぁ…」


とりあえず愛想笑いで胡麻化すが、


「あんなに馬鹿にした態度とったんだもん、許してもらえないって思ってる。けど、そういうのじゃなくて謝りたいって思って…」


少し照れくさそうに視線を逸らす彼にどうしたらいいのか分からない。顔がほんのり赤くなってるのは気のせいだな、うん。


「ま、まぁ、俺も言い過ぎたところがあるし…」


と適当に言うと、


「…本当?」


小首をかしげて聞いてくる。いや、どうしたんだほんとにこの人。


すると、彼は少しはにかみながら、


「ならさ、俺と友達になってくれない?」


「ま、まあ、それくらいなら…」


とあっさりと了承する俺。


「ホント!?」


と、子供みたいな無邪気な顔で喜ばれると、いよいよもってどうしたらいいかわからない。


は、はぁ、と気の抜けた返事を返す。


本当、変なことになってしまった…。



翌日、


「おーい、そうたーぁ」


昼休みに弁当を食っているとき、えへへと言いながら妙に俺に甘えてくる三山先輩の姿がそこにはあった。


…やめてくれ、本当。


女子達の突き刺さる視線がマジで痛い…。


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