登校は優雅に
「なんでいるんですか」
大丈夫、前話と始まりが同じだけど次のお話です。
今度はつっけんどんどころか氷点下くらいの声音だけどね。
「やぁ、おはよう早坂さん。いい朝だね」
さっきまでは!いい朝だったんですけどね!!
キラキラ☆スマイルがいっそウザい。
「なんでウチ知ってるんですか…?」
にっこり
怖っ!!!
いや、もうなんで知ったのか知りたくないや!
「学校までお供するよ」
「いりません。」
「せっかく甘い物も用意したのに…」
そう言って車の扉を開けると、広い車内のテーブルには、スイーツの数々。
「あぁっ!10時間並んでも手に入らないという幻のプリン!」
「店長が知り合いなんだ」
「こ、これは!もう製造してないという伝説の和菓子!」
「ずっと贔屓にしていた和菓子屋さんに話してみたら喜んで作ってくれたんだ」
「く…っで、でも」
た、食べ物には釣られないわよ!
「君が食べないと、僕はあまりたくさん甘い物をとれないからこのスイーツが無駄になってしまうんだけど…」
「おぉいしぃぃぃ〜!この卵の素朴さ、まろやかな舌触り…たまらない!!」
幸せオーラ満開でスイーツを堪能する私をニコニコと笑顔で見つめる会長。
「…会長は食べないんですか?」
「ん?そうだね、君を見てたらお腹いっぱいになってしまったかも。僕の分もどうぞ、はい。」
差し出されたスプーンのプリンを迷わずそのままぱくり。
うーん美味しい!!
カラメルをかけるとまた一味違う。
幸せ〜
会長、口元を押さえて顔を逸らしてるけど、
あ、やっぱり食べたかった?
会長のために作られたスイーツなんだから、私が全部食べるのは良くないよね。
「すみません私ばっかり食べて。会長も、はい。」
スプーンにプリンをすくい、口へ持っていく。
会長は目を見開いてプリンを凝視した後、恐る恐る口に入れる。
「……美味しいね。ありがとう。もう、残りは食べていいよ。」
その後も会長から無言で差し出されるスイーツをもくもくと食べ、幸せで優雅な登校時間となった。