表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/45

疑いと楽しみと

誤字脱字…諦めれ。

 朝食を食べ終わると、ヘスさんが何気無く私に聞いてくる。


「僕達はこれから故郷のフローズンバイパーに帰るけど、リエラはどこに向かっているの?」


 おお、昨日のアーウィンさんとミランダさんの会話から、多分そうだと思ってはいたのだが、ヘスさん達と私は向かう場所が一緒の様だ。


「えっ…ええっと。実は私もフローズンバイパーに行く途中だったんですけど………その…」


 気まずい。どうやら箒で飛んでいるのを、見られていたみたいですし。

 有事の際以外で飛ぶのは禁止されてますからね。ハッキリ言うと罪人ですよ。


「どうしたの?一人じゃ無理そう?一緒に行く?」


 ヘスさんが私が言いよどんだので、心配そうに聞いてくる。


「ん?一緒に行かない方が、早いんじゃねぇの?」


 アーウィンさんが口を挟んでくる。


「あ…ああ、そうですね。アーウィンの言う通りです。飛んだ方が早く着きますからね。………ですが歩いてもここからだと今日の昼過ぎにはフローズンバイパーに着きますが」


 いえ…その…そういう事では無くてですね……。


「そうですわね……。でも確実に母体に安全なのは、飛んで行った方が危険は少ないわよね?この辺りに魔獣は少ないですし、危険な野性動物は大体空は飛びませんもの」


 ひいっ…。ミランダさんまでもが飛んで行くのに賛成な感じですね。


「じゃあ…飛んで行きますか?」


 ヘスさんが首を傾けながら、私に聞いてくる。

 いや、だからね?


「あのっ!ご存じとは思いますが、空を飛ぶのは禁止されているので、無理ですっ!!」


「はあっ?お前……昨日は空から降りて来たじゃねぇか?今さら何を言っている?」


「うぐっ……」


 アーウィンさんに正論を言われると、失礼ながら心へのダメージが大きい。


「ウフフ……飛ぶのを禁止されて居るのならば、バレなきゃ良いのですわ……」


 ミランダさんの片目が妖しく光った様に見えた。


「それはどうやってだ?まさか考えなしに適当な事言ってんじゃねぇだろうな?」


 ミランダさんの提案に食いつくアーウィンさん。

 何故そんなにミランダさんに喧嘩腰しなのでしょうか?まさか…好きな子ほどいじめたくなるってやつでしょうかね?アーウィンさん……子供じゃ無いので、その愛情表現はいかがなものかと。


「あら、アーウィンは忘れたの?リエラは昨日、自分の姿を見えなくしてたじゃないの」


「あん?…………確かにな。おお、それか!それを使いながら飛べば……」


「あら、やっとお分かり?そうすれば誰に見られる心配も無く、フローズンバイパーまで安全かつ、素早く着くことができるじゃなくて?」


「でもミランダ……魔法を展開しつつ、飛ぶなんて…魔力の消費が凄いと僕は思うけど……」


 ヘスさんが疑問を口にすると、ミランダさんは馬鹿にしたように鼻で笑うとこう言った。


「フッ…。リエラはそこら辺の魔法使いじゃ無いのよ?魔術師よ?本人に聞いてみなさいな。大丈夫って言うわよ」


 私は一斉に向けられた三人の視線に、ビクッと震えてしまったが、ミランダさんの問い掛けに返事をした。


「………確かに私の魔力量では可能ですが……」


 ミランダさんの言うように全然平気だが、何故ミランダさんは断言出来たのだろうか?

 何か知っているのだろうか?

 どうやら彼女には何かある様だ。


「ウフフ…腑に落ちないって顔をしているわね、リエラ」


 しまった!また表情で読まれたかっ!?


「答えは簡単ですわ……私が“元”貴族だからですわ」


「…………“元”貴族ですか……?」


「ええそうよ?情けない話、没落したのよ。没落する前までは、一貴族としての教育を施されていたから、普通の民が知らない事も知っているだけですわウフフ……」


 さらりととんでもない過去が出てしまった様ですが、驚いているのは私だけで、アーウィンさんやヘスさんは勿論知っていたのだろう、別段驚いては居なかった。


「えっ…えと……その……あの………」


 私はミランダさんに、何て声を掛けたら良いのだろうか?

 言葉が見付からず、モゴモゴしている私を見てミランダさんはウフフとまた笑うと、サラッとこう言った。


「リエラ…貴女が私に気を使う必要なんてなくってよ?ただ私の父が悪いことに手を染めたというだけ」


 何て事無いように話していますが、目が笑ってません。怖いっ!


「全く不甲斐ない父でしたわ……。あの程度でバレるなど……」


 何か確実にあったみたいです。ミランダさんがブツブツ呟いています。


「ウフッ…まぁ私の事はこの辺で。要するにバレなければ問題は無いのですわ?そして私達も特に誰かに、貴女が空を飛んだなどと言いませんし、証拠もありませんからね」


 ミランダさんの話を聞いた後では、若干了承しづらいのですが。

 戸惑っている私に、ヘスさんが頭を撫でながらこう話してくれる。


「今の君の身体は君だけのものじゃ無いんだよ?安全に越したことは無いんだ…。昨日はじめて会った僕らを信じてとは言いづらいけれど、早く町でゆっくりしてほしいんだ」


 うっ…。18歳に諭される58歳ってどうよ?

 どうやらラズリエラと記憶や感情面で混ざってるので、気持ちが若さに引っ張られてるみたいだ。


「……うん…分かった………」


 結局了承してしまった。



「じゃあまた後でね。お昼過ぎには町に着くから、一緒にお昼を食べようね?待ち合わせはギルドでい良いかな?それと、受け付けに僕の双子の姉のリズが居るから、この手紙を渡して。色々面倒を見てくれると思うからね…」


 ヘスさんは私の為に手紙を書いてくれ、後で町で落ち合う約束を取り付けると、「僕達が居ると魔術を使いづらいよね?」と、気を使ってくれて先に出発して行った。


 あそこまで気遣いが凄いと、壺よりもまず、彼の頭皮が心配になって来た。将来ヘスさんが禿げないと良いなぁと、余計な事を考えてしまったのは、絶対に本人には内緒である。



 小さく「インビジブルウォール」と呟いた後、私は箒に横座りして、空へと飛んだのであった。



 空を数分飛ぶと、眼下にヘスさんとミランダさんとアーウィンさんが歩いているのが見えた。

 また何かミランダさんとアーウィンさんが口喧嘩している様に見える。そしてその間に止めに入るヘスさん………。変わらない三人に、私の心は軽くなる。



 変わってしまうものと、変わらないもの………。



 私は北の町、フローズンバイパーで三人に再会するのを心から楽しみにしたのであった。









変わってしまうもの→人の心。

変わらないもの→それもまた人の心。




矛盾してますが、表裏一体だとも思うのです。

勝手に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ