眼前に迫る巨大な………
誤字脱字…以下略。
「ムニャムニャ……後、5分……」
フヨフヨ……。
「それは…私のラノベ……渡さないわ…よ…」
フニフニ……。
「返しなさ…い……。今なら…一升で手を打つ…じゅるり……」
フワフワ……フヨ~ン……。
私は大好きなラノベを貸してくれと頼まれている。
貸しても良いが条件があるぞ。
酒だ!酒を一升持って来い。
とっても良い気分じゃ!ここは暖かくて柔らかくて気持ちが良いからねっ……。
んん~?暖かくて柔らかい……何がですかね?
ラノベ…?は固いな。
酒が入った一升瓶…?は冷たいな。
じゃあこのフワフワと暖かくて柔らかいのは一体………?
「ムニャ…んっ?………っ…………っ!!!」
私が眠い目を擦りながら、うっすらと目蓋を上げると、眼前に迫りくる豊満なバストが飛び込んでくる。凄い迫力だ。
おまけにそのバストに私の手がジャストフィットしてますっ!?
暖かくて柔らかいって、バストの事か!?
私は驚きと納得に、思わずその場から勢い良く飛び退くと、自分の現在の状況を確認する為に周りを見回した。
周囲は明るく、耳を澄ませばチュンチュンピチチと、鳥のさえずりが聞こえてくる。
チラリとさっきまで私が居た場所を窺うと、ミランダさんが寝ていらっしゃいました。
どうやらミランダさんのバストだった様です。
思い出した。
昨日はテントに入って直ぐにグースカ寝てしまったのだ。
ミランダさんは革の胸当てを着用していたので、昨日はこのような迫力バストの持ち主だったとは気付かなんだ。
胸当てで押さえ付けられて痛くはないのだろうか?
まぁ私はチッパイなので、分かりませんがね。チェッ。
若干自分の胸の小ささに、落ち込みかけていたが、テントの外から漂ってくる良い匂いに誘われて、テントの外に這い出した。
外ではヘスさんが鍋をグルグルかき混ぜていた。
テントから這い出して来た私に気付くと、微笑みながら挨拶をしてくれる。
「やあ、リエラ!お早う~!」
「あっ…は…はい。お早うございます。朝食作りですか?手伝います」
ヤバい…一瞬リエラって、誰?って思ったよ。昨日考えた私の偽名だ。
「えっ?手伝ってくれるの?有り難う。じゃあパンにこれを挟んで焚き火で炙ってくれる?」
「はい。分かりました」
ヘスさんに手渡されたのは保存食の黒パンだ。
このパンは名前の通りどす黒い。そしてこのままじゃ固すぎて噛めない。なので食べるには火で炙った後に熱いスープにつけたり、浸したりしながら食べるのだ。
よし、やるぞ。
黒パンに挟んでと頼まれたのは、固形の脂であった。これを挟むと更に黒パンが柔らかくなるのだ。
脂でべちゃべちゃにならないかって?ならないのだよ。黒パンの固さは鈍器並みだよ?
これで思いきり殴られたら人間の頭なんて一撃で粉砕するよ。
確か昔そういう事件があったし。
用意されていた黒パンは全部で8個であった。ひとり2個と考えてアッと思った。
これ……私の分も入ってません?流石にたかりすぎじゃありませんかね?しかし勘違いかも。アーウィンさんが3個、ヘスさんが3個、ミランダさんが2個の、計8個かもしれませんし。
ヘスさんに聞いてみるか。
「あの、ヘスさん…パンは8個で良いんですか?」
「うん?ごめんごめん…勝手に2個は食べるだろうって考えてて……足りない?それとも多いい?」
うわぁ…。どうやら私の分も入っているそうです。優しすぎません?ヘスさんが悪い人に壺を買わされる未来が見える。
この世界にはクーリングオフなど無いからね。ヘスさんの今後が心配だ。
「いえ…昨日もご飯をもらってるので、悪いなあって思って」
「ふふっ…。君は本当に律儀ですね。今も朝食の準備を手伝ってもらってるし、皆で食べるのに君だけあげないというのは、流石に僕が美味しく食べられないからね。一緒に食べましょうね?」
ヘスさんにまたも頭を撫でられる。同い年なのに。
だけど、そうか…。確かに準備を手伝ってるが、でも私が気にしない様に言ってくれた気もする。やっぱり優しいな。ふぅ……。
その後は余計な話をせずに焦がさない様に、せっせとパンを焼き、朝食の準備ができるとまるで見計らった様にアーウィンさんとミランダさんが近寄ってくる。
その様子を見ながらヘスさんが、
「ほらね。あの二人はこんな感じだよ?手伝ってくれて本当に有り難うね、リエラ。嬉しかったよ」
ニコリと笑うヘスさん。慈母の微笑みや!!
私の心に残っていた罪悪感みたいなものも、ヘスさんの微笑みに溶けて消えていったのであった。
まだ1日しか経ってない…だと?
先は長いですな。